ロシアによるウクライナ侵攻で注視されるNATOだけど、足並みが揃わない原因は何? 世界情勢をイラスト付きで分かりやすく解説!
PR公開日:2024/6/7
世界では有事が続く。ロシアによるウクライナへの侵攻、ハマスとイスラエルの戦争など、ニュースを見ると対岸の火事とは思えず「この日本でも同様の事態が起きたら……」と不安も募る。
国の安全、ひいては世界情勢を把握する糸口は「防衛」を知ることだ。『サクッとわかる ビジネス教養 防衛学』(小野圭司/新星出版社)は、タイトルどおりの1冊。本書では、コミカルなイラストと分かりやすいテキストによって、軍事・安全保障にまつわる世界各国の動向を学べる。
自衛隊は「自衛権行使」の組織
本書で「防衛の主役」とされるのは、各国が保有する「軍隊」だ。主な任務は「軍事戦略の抑止や阻止」「国内の治安維持」で、加えて、大災害発生時の救難活動など「それ以外の活動」がある。
軍隊が戦争へ参加するには「戦争法規」に従わねばならない。本書で扱う「ハーグ陸戦条約」によれば、戦場で交戦者となる条件は「部下の行動に責任を負う1人の責任者が指揮している」「遠方から確認できる特殊標章をつけている」「武器を隠さずに携帯している」「戦争の法規と慣例に従っている」の、4つのポイントが挙げられているという。
一方、日本には「自衛隊」がある。もちろん自衛隊は、軍隊ではない。第二次世界大戦後に旧日本軍を解体、組織された自衛隊は「日本を守るための防衛行為」を「最重要任務」とする。
憲法第九条「……陸海軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」の条文、その「任務や組織、行動、権限」を定義した「自衛隊法」にのっとり、自衛権行使のための「必要最小限の実力を持つ組織」としての役割が求められている。
ロシアによるウクライナ侵攻で注視されるNATOの目的
ニュースでもたびたび目にするキーワードが「抑止力」だ。本書では相手国に「もしかしたらあの国を侵略できるかも?」「武力で言うことを聞かせられるかも?」と期待を抱かせず、自国がいわば「強制的な“現状変更”へと持ち込まれないこと」と解説している。
自国のみで抑止力を得られない可能性をふまえて、各国が連携して抑止力を発動するのが「集団的自衛権」だ。
なおも続くロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、その動向が注視されるNATO(北大西洋条約機構)は、アメリカやヨーロッパ各国による同盟で、本書によれば目的は集団的自衛権の「行使」にある。
2024年3月現在、NATOの加盟国は32カ国に及ぶ。ただ、本書は「一枚岩とはいかない」と指摘する。先の侵攻では、ロシアへの「エネルギー依存度」が高いために「強い制裁」を支持できない国もあるため「足並み」が乱れたという。
AIによる無人戦闘機や無人戦車が戦力となる時代に
昨今、防衛技術の変化が著しい。本書によると近年、各国が力を入れているのは「宇宙、サイバー、電磁波、AI」の領域で、従来のスタンダードであった「陸海空3領域」にこれらを加えた「ハイブリッド戦を制するものがこれからの防衛を制していく」と見通す。
事実、世界一の軍事力を持つアメリカは、クラスト社製のAIステルス戦闘機「XQ-58A」の飛行を成功させ、ウクライナへの侵攻が続くロシアは、AIによる無人戦車「Uran-9」をすでに実戦投入している。
ドローン攻撃など、無人機が重用される時代では「情報収集」や「遠隔操作」を担う「サイバー部隊」が戦線の主役になるとも本書は指摘する。さらに、日本でも航空自衛隊から「航空宇宙自衛隊」への改称を予定するなど、今後は「宇宙での覇権争い」も激化する見通しだ。
日本では、防衛について「何となく避けていた」「考えないようにしていた」という空気も流れる。しかし、私たちの「生命・財産や基本的価値」を守るために欠かせない問題であり、実際に知れば国際情勢を深く知る手がかりにもなる。本書はそのきっかけを与えてくれる、誰しも必携の教養本だ。
文=カネコシュウヘイ
新星出版社のライフマガジン『Fun-life!』
https://fun-life-shinsei.com/