曇りなき眼で見定めブログ

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空気をうかがうな、高い倫理観を持て(大島育宙と吉田恵里香を救いたい)

 大島育宙さんという芸人かつYouTubeでエンタメ批評をしている人が、M-1グランプリ決勝進出者の男女比が偏っているので遅れているみたいなことをトゥイッターに書いて燃えていた。もと投稿は削除された模様。「遅れている」とそのまま書いていたかどうかはわからないが、そんな風に書いている。

 この大島さんという人はなかなか興味深い人で、今後も当ブログで論じていきたい。興味深いと思うのは

  • SNSに極端に入れ込んでいる。
  • インターネッツばかり見ていて本とか読んでなさそうで、現代のインテリという感じ。
  • 「人権」とか「ミソジニー」とかの言葉の使い方。
  • お笑いを鋭く論じているわりに当人の漫才はめちゃくちゃつまらない。

といったあたり。今回の記事で取り上げたいのは2番目の点に関連する。

 日本の(世界的にか?)お笑い界は男性支配的だと私も思うが、政界とか理系大学とか野球界とか将棋界とか建設の現場も同じである。政治家は女性が増えたほうが良さそうだが、制度として男女半々を強制すべきかは微妙なところ。理系大学に無理して女子学生を増やすべきかどうかは議論になっている。野球界なんて女性が少ないからミソジニーってわけでもないだろう。野球選手になりたがる女性が少なかろうというのと、運動能力で劣る女性に男性と平等に野球をやらせるべきかどうか。将棋界も同様だが、ちゃんと実力でプロになれそうな女性が出てきている。建設の現場なんて子どもの頃からの夢という人が少ないだろうが、男女半々にすべきなのだろうか。お笑い界はこのうちどの世界に近いだろう。

 というように男女比をどうするかというのは難しい問題で、芸人やお笑いファンが「遅れている」から男女比が極端なわけではないと思う。私自身はお笑いの魅力はホモソーシャルの魅力に拠っている部分もあるから仕方ないと思う。THE Wもあるわけだし、M-1とは別の軸の大会に頼ればよい。まあこのへんは議論がいろいろあるだろう。

 で、大島さんはこうしたM-1へのコメントは「批判」ではないとか弁明しているが、自身の言葉に含まれる、論敵に対する無意識の見下しみたいなものに気付いたほうがいいと思う。あんな書き方じゃあ議論は生まれまい。そのへんの感覚の鈍さゆえに、芸人としては売れなかったのだろう。

 前置きが長くなったけれど、今回の記事で言いたかったのは、これ系の人の言う「アップデートしろ*1」「人権を学べ」みたいなのって「どうしたらトゥイッター上のリベラルっぽい勢力にウケやすいか学べ」なのだろうなということ。私はテツガクの本とか読んで勉強しているつもりだが、大島さんの主張にまったく賛同できない。なのだがこの人は「人権を学んでアップデートした側」から「ミソジニーのバカ」に教えてやるみたいな二元論がすごい。で、そういう書き方がリベラルっぽい勢力の空気のなかではウケるし、ウケることをちゃんと学習しているのだろう。もとよりウケ狙いで、議論などするつもりがないのではないだろうか。

 空気を敏感に察知して望まれていることを言うという点で、新しいタイプのエンターテイナーなのかもしれない。芸のターゲットが観客やお茶の間ではなく狭い範囲のインターネッツだというだけで。だがそういう人が批評家として受け入れられると困る。

 界隈の空気から判断して主張をするな。自分のなかに芯を持て。高い倫理観を持て。

 このところ性犯罪かなんかの裁判の判決と裁判官を批判する署名がインターネッツを賑わせている。で、脚本家の吉田恵里香先生がトゥイッターで署名を呼びかけてしまって叩かれていた。

署名しました。
大阪高裁の“医大生による性的暴行”逆転無罪に対する反対意思を表示します。https://t.co/7HbRKHHiKK

— 吉田恵里香@朝ドラ虎に翼ありがとうございました。TB2のコミカライズもよろしく! (@yorikoko) 2024年12月21日

私は法律とか裁判の制度とかわからないので是非の判断がいまいちつかないのだが、どうもこれは勇み足っぽい。というのもリベラルっぽい勢力の空気が署名側に傾くのかと思いきや、そうでもない空気になってきているのだ。

 吉田先生は『虎に翼』という朝ドラ(私は見てない)の脚本を書いていて、これがリベラルっぽい勢力には大ウケしていた。もとから吉田先生はアップデートして(つまりウケることの書き方を学習して)いたのかどうか知らないが、この作品によって代表的アップデート脚本家になった*2。そのせいかどうかしらないが、最近の吉田先生のトゥイッターやインタビューはアップデート臭がすごくなっている、つまり、いかにもリベラルっぽい勢力にウケそうなことばかり言っている。もはやウケるかどうかで物事を判断しちゃってないかな〜という不安があるくらいなのである。今回のが勇み足に見えるのは、リベラルっぽい勢力の期待を読み間違えたか、読み込みすぎたか。

 これから吉田先生がどう出るかはわからないが、ぜひ空気をうかがわず自身の倫理観で判断してほしいと思う。

*1:最近レイザーラモンRGが大島さんのモノマネを始めて、「アップデート」という言葉を使って大島さんを戯画化していた。

*2:吉田先生はアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の脚本も書いている。これはべつにアップデート脚本ではなかった。私は作画は良かったが脚本は微妙だったと思っている。