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Snowflake、トランザクションデータと分析データを組み合わせて利用する「Unistore」など、さまざまな新サービスや新機能を発表
Snowflake Summitでの発表内容を紹介
2022年6月15日 10:00
米Snowflakeは、Snowflakeプラットフォーム上でトランザクションデータと分析データを組み合わせて利用する新たなワークロード「Unistore」や、サイバーセキュリティワークロードの提供を発表した。また、開発者向けの機能強化なども発表している。
同社では6月13日~16日(現地時間)、米国ラスベガスにおいて、年次ユーザーカンファレンスのSnowflake Summitを開催しているが、これらは同イベントにあわせて発表された。
「データクラウド」を提唱するSnowflakeでは、クロスクラウドで利用できるデータウェアハウス(DWH)サービスをSnowflakeプラットフォームとして提供している。企業内に分散するデータを一元的に集約・管理するほか、異なる組織間でデータを瞬時に安全に共有でき、顧客やビジネスパートナーとの間でライブデータを共有。大規模なデータクラウドを構成する組織と接続することもできる。
データを処理するコンピューティングリソースと、データを蓄積するストレージを完全に分離した独自のアーキテクチャを採用しているのが特徴であり、利用規模や負荷に応じてCPU、メモリ、ディスクなどのリソースを柔軟に拡張する「オートスケール」機能によって、高速処理を実現可能だ。
またSnowflakeは、クロスクラウド機能を支える独自テクノロジーSnowgridを全世界に展開しており、日本では、Amazon Web Services(AWS)およびMicrosoft Azureの東京リージョンに展開。2022年夏にはAWSの大阪リージョンにも展開する。
Snowflake APJプレジデント兼会長執行役員のジョン・ロバートソン氏は、「全世界で6322社がSnowflakeを活用しており、前年度から40%も増加している。日本ではその倍ぐらいの勢いで拡大しており、250社を超えたところである。日産自動車、NTTドコモ、NEC、ファミリーマートなどが採用しており、今後もこの勢いで成長することになるだろう。また、マーケットプレイスによるデータエコシステムを活用している企業はグローバルで22%増加し、1358社に達している。顧客満足度は100%、NPSも68%に達している。従来は、クラウドネイティブな企業の利用が多かったが、金融や小売、製造など、あらゆる業界の企業が利用している。フォーブスグローバル2000のうち、506社が利用している」とした。
同社2023年度第1四半期(2022年2月~4月)の業績は、製品売り上げが前年同期比84%増の3億9440万ドル、NRR(Net Revenue Retention)は174%となっている。
ロバートソン プレジデント兼会長執行役員は、「一年半前にSnowflakeに入社したときには、日本法人はまだ少人数でスタートアップのような状況だった。この間に、人員を5倍に増やし、さらに拡大しようと考えている。顧客数も増加し、1億円以上の商談規模になっている企業も増えた。パブリッククラウドに対して保守的な企業からも、Snowflakeであれば安心だという声も出ている」との現状を紹介。
その上で、「日本のポテンシャルは大きい。日本のランレートは、米国よりも速い。米国市場の半分ぐらいの期間で成長できるだろう。本社も日本の成功が重要だと理解しており、日本に投資をしている。私は、VMwareの社長を務めていた際には、日本がAPJのなかで売上高が最も大きく、4~5割を占めていた。Snowflakeも同じような状態にしたい。私の希望は、売上高や社員数で、米国の次に日本が大きいという規模になること。そして、APJではナンバーワンの市場にならないといけない。日本は大変重要な市場であり、それに向けて動いている」などと述べた。
Snowflake Summitで発表された新製品や機能強化
今回のSnowflake Summitでは、数多くの新製品や機能強化を発表した。
Snowflake 製品担当シニアバイスプレジデントのクリスチャン・クレイナマン氏は、「アプリケーションの開発において大きな改革をもたらすものになり、データクラウドを高度化する」としたほか、「これらをひとつのプラットフォームのなかで、ひとつの体験として提供できる。クロスクラウド環境で利用でき、使いやすさを最大限にできる。早期導入企業からは、新たなビジネス価値を生み出すことができたという反応がある。今回の機能拡張や新製品が、どんなメリットをもたらすかを楽しみにしている」と述べた。
エンタープライズデータ基盤の強化では、継続的なパフォーマンス改善を行い、高速化、低遅延化を図るとともに、データガバナンスの強化、レプリケーション機能の強化などを発表した。ここでは、AWS向けには平均10%の高速化を可能にし、書き込みの多いワークロードでも10%の高速化を実現。地図上の検索では5倍の高速化を図るという。
また、Amazon S3互換ストレージであれば、データを移動させることなく、その場で処理ができるようにし、オンプレミスのデータにも簡単にアクセスできる環境を実現。Iceberg Tablesにより、Apache Icebergを選択でき、Snowflakeプラットフォーム上で組み合わせて利用できるようになると説明した。
さらに、開発者がデータクラウド上でアプリケーションを開発し、収益化、デプロイするためのネイティブアプリケーションフレームワークを提供開始することも発表した。
加えてSnowpipe Streamingを、特定ユーザーを対象にしたプライベートブレビューとして提供。ストリーミングデータとの連携を強化し、データアクセスを拡大するとともに、オープンフォーマットのデータやオンプレミスで保存されているデータを利用できるようデータクラウドを拡充する。これにより、データをSnowflakeに取り込む際の遅延を大幅に削減できるという。
Snowpark for Pythonも提供を開始し、オープンソースのパッケージとライブラリからなるPythonのエコシステムを、データサイエンティストやデータエンジニア、アプリケーション開発者が活用することが可能になる。
クレイナマン シニアバイスプレジデントは、「Pythonは、データに近いところに演算機能を持っていく上では重要なツールになる」などと説明。またSnowflake日本法人 執行役員 セールスエンジニアリング統括本部長の井口和弘氏は、「共有したデータやマーケットプレイスから得たデータは、加工したり、仮説を得たり、機械学習のモデルを作ったりといったことのために、どうしてもプログラミングが必要になる。これまでは、これをSnowflakeの外でやることが多かったが、Snowpark for Pythonによって、これらをSnowflakeプラットフォームで完結できる」とした。
さらに、2022年3月に買収したStreamlitとの連携を強化。次世代アプリケーションの開発、コラボレーションを推進できるプラットフォームを、開発者やデータサイエンティストに提供。開発者は、データアクセスとデータガバナンスを簡略化し、好みのツールを使用してアプリケーションを開発できるとした。
またマーケットプレイスでは、開発者が作成したアプリケーションを、約6300社にのぼるSnowflakeユーザー企業に配信して収益化できる仕組みが用意されている。販売されたアプリケーションは顧客のSnowflakeアカウント内で実行されるため、データの移動や共有が不要であり、開発者は機密顧客データの管理をする必要がなく、最適な機能を提供可能だ。
現在、Snowflakeマーケットプレイスの拡大によって、18カテゴリにおいて、260以上のプロバイダーが提供するデータ、サービス、アプリが利用でき、開発者はマネタイズしたり、導入状況の可視化ができたりする。
Native Applicationsの発表も目玉のひとつになる。
「これはデータ共有の進化系。Snowflake上でネイティブに展開し、組織でデータを共有するだけでなく、UDFやストアドプロシージャ、外部関数を利用でき、Snowflakeマーケットプレイスで配信、マネタイズも可能になる。アカウント内でアプリケーションをインストールし、データを管理することができるため、ガバナンスも維持できる」(クレイナマン シニアバイスプレジデント)とした。
アプリケーション開発企業を対象に、Native Applications Acceleratedプログラムを準備しており、すでに20社以上の企業が参加することが明らかになっている。
このほか、新たに提供を開始するサイバーセキュリティワークロードは、安全でスケーラブルな統合データプラットフォームを実現。クラウドレベルで死角の排除と脅威への対処を行い、セキュリティチームをサポートできるという。
HuntersやPanther Labs、Securonixなどのサイバーセキュリティパートナーが、コネクテッドSIEMアプリケーションによって、顧客のSnowflakeアカウント上でセキュリティ機能を提供することになるという。
Snowflakeのプラットフォームと、コネクテッドアプリケーションによって、セキュリティ機能を提供する広範なパートナーエコシステムを活用することで、サイバーセキュリティチームはクラウドレベルで迅速な可視化と自動化を実現できるとしている。
Snowflake日本法人 社長執行役員の東條英俊氏は、「日本の企業は、デジタルやデータの活用が進んでいるが、サイバーセキュリティへの対応が急務になっていると認識している。セキュリティデータレイクの構築を早急に進めるべきであり、そこに今回のサイバーセキュリティワークロードが役に立てる」と述べた。
また、「Unistore」の提供を開始することを新た発表した。
Unistoreは、Snowflakeの機能を拡張することで、単一のプラットフォーム上で、トランザクションデータと分析データを組み合わせて利用する新しいワークロード。このUnistoreによって、トランザクションアプリケーションの開発を効率化、簡略化するSnowflakeデータクラウドの能力が強化されると同時に、一貫したガバナンス、優れた性能、ほぼ無限となるスケール化などにおいてメリットを提供できるとしている。
「データクラウド上でのトランザクションデータと分析データの結合により、次世代のイノベーションを促進できる。Hybrid Tablesを作り、低遅延の書き込み、読み出しができたり、トランザクションデータに対しても、シームレスに解析ができるようになる。同じセキュリティモデル、同じガバナンスを適用して利用できる点も大きなメリットになる」(クレイナマン シニアバイスプレジデント)とした。
すでにAdobe、IQVIA、Novartis、UiPath、Woltなどの顧客がプライベートプレビュー版のUnistoreを利用しているという。
Snowflake日本法人の東條社長は、「Unistoreの発表は大きなマイルストーンになる。トランザクションデータに対して、Snowflakeのイノベーションを持ち込むことができ、シングルプラットフォームで扱うことができる。コスト、パフォーマンス、時間を削減でき、データガバナンスの観点でも有益である」とした。