Unity社が昨年開催した、ゲームエンジン『Unity』に関するカンファレンスイベント『Unite Tokyo 2018』での技術講演も記憶に新しい『崩壊3rd』の『miHoYo』が新作CG動画を公開した。
『八重櫻· 桃源恋歌』と題されたこのCG動画は、Unityのリアルタイムレンダリングを用いて開発されており、今年の2月に『bilibili』で公開したところ、260万回以上再生されるなど、好評を博している。
この数年の中国産2次元スマホゲームのクオリティの向上には目を見張るばかりだが、『崩壊3rd』のグラフィック表現は最高水準としてベンチマークして良いだろう。
以下に、同社のテクニカルディレクターを務めるJack He氏のインタビューを紹介したい。
そのクオリティの程は?
まずは同社が制作した『八重櫻· 桃源恋歌』を見ていただきたい。
【崩壊3rd】八重樱 · 桃源恋歌 先行予告編
【崩壊3rd】八重樱 · 桃源恋歌 Full(音声なし)
『miHoYo』のJack氏のインタビュー内容とは?
『miHoYo』のJack氏へのインタビュー内容は多岐に渡るため、以下に内容を要約してお伝えしたい。
『miHoYo』のテクニカルディレクターのJack氏
制作期間と人数。その目的は?
■制作期間と人数は?
合計20名、で内8名はプログラマ。残りの12名はグラフィッカーだが、6名は兼務。
2018年6月に制作開始し、2019年1月に完成。制作期間は半年。
■目的は?
最新技術を用いることで、新しいレンダリングスタイルと表現方法の可能性を探索するため。Unityエンジンのリアルタイムレンダリングを用いたCG動画制作の経験を積むため。
Unityを選んだ理由とその良さは?
■なぜUnityのリアルタイムレンダリングなのか?
高度なカスタマイズを行うにはUnityが最も適していたため。実際、今回のCG制作に際し、レンダリングフロー(レンダリングパイプライン、テクスチャシステム、エフェクト表現、ポストプロセッシングなど)を全面的にカスタマイズした。
■使用したUnityのバージョンは?
Unity2018を使用した。デフォルトのHDRPハイモデルをカスタマイズ化し開発を行い、シェーダーも専用のものを開発した。
■Unityリアルタイムレンダリングの良さは?
レンダリング効率。レンダリングオーバーヘッドやループコストがとても低くおさえられる。カメラ、ライティング、テクスチャなどの効果を直感的に調整することができる。
『布・髪の毛・瞳』具体的な手法とは?
■UnityのHDRP高画質レンダリングパイプラインは今回のどの部分で使用したのか?
今回のCGの前に、『miHoYo』ではUnityデフォルトのレンダリングパイプラインを用いて『キアナ・極楽浄土』『芽衣·染上你的颜色』の2つのCGの制作実績があった。
その際に、デフォルトのレンダリングパイプラインの限界を感じており、多くのレンダリング効果は自由に開発できないと考えていた。
具体的には『精確に光源をコントロールすることができない』点が挙げられる。陰影のクオリティを高めるには、キャラクタに光源を設定する必要がある。
レンダリング時には、光源がキャラクタをメインに設定されていて、高画質な陰影テクスチャを使用するのか、デフォルトの陰影テクスチャを使用するのかを判断する必要がある。
ただし、Unityデフォルトのレンダリングパイプラインでは光源リストの読み込みが不便で、シェーダーで光源と背景中の実際の光源の対応関係も検知することができない。
それが、新しいHDRP高画質レンダリングパイプラインでは、すべての光源リストが1つのPassで完結させることができる。
また、光源IDによってキャラクタメインの光源なのかどうかも判定でき、従来の問題を解決することができた。
■布の表現はどうやった?
布に関しては『Qcloth(Mayaプラグイン)』を用い『Alembic(略称abcファイル)』フォーマットでUnityをインポートした。
abcアニメーションファイルはモデルのポリゴン数と大きな関係がある。今回は布部分には大体2万前後のポリゴンを使用し、シワのシュミレーションに必要なグリッド精度を担保した。
布表面の滑らかさを出すには、レンダリング時に曲線を細かく設定する必要がある。4分間30FPSのアニメーションで1Gくらいのサイズが適切な大きさだと考えている。
■髪の毛表現は具体的にどうやった?
ベースにあるDiffuse shadingでMulti-layer toon rampを使用し、豊富な陰影、カラーグラデーション、ディティールを表現した。
ハイライトの演算は異方性テクスチャを使用し、2層の高低チャネルのハイライトを重ねることでレイヤー感と変化を表現した。
■瞳の表現はどうやった?
瞳の表現はトゥーンレンダリング表現の重要な表現だと考えている。瞳の表現は異なる角度での質感とセルタッチの雰囲気を表現したいと考えていた。
これを実現するため、『瞳』専用の特殊シェーダーを開発した。眼球の光の屈折などをシュミレーションし、手付けでテクスチャを描き込み、理想の効果に近づけた。
今回この記事をまとめるに当たり、同社のグラフィッククオリティの高さもさることながら、最新技術を意図的に使い、自社のノウハウ蓄積と共有に積極的である辺りに、『miHoYo』の自負と勢いを感じた。
日本でも多くの中国産スマホゲームがセールスランキング上位を賑わせているが、『崩壊3rd』は『オリジナリティ』においても、他の中国産ゲームと比べ頭一つ抜きん出た存在だ。
今回同社が公開した研究開発によって得られた経験が、次回作以降にどのようなかたちで反映されてくるのか、楽しみである。
(3/25 9 :27 『Qcloth(Mayaプラグイン)』に関し補足を追記。)
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引用:http://youxiputao.com/articles/17307
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