カヌーに乗ってドメインゲット

.tkというドメインがある。Tokelauというニュージーランド統治下の島のものです。

で、このTokelauの政府とネゴって.tkの利用権をゲットしたオランダ人の起業家の人と会ったのですが、なかなか面白い話であった。

そもそもは、hotmailが1997年にマイクロソフトに$400 millionで売却された時に

「無料のメールがそんな価値を生むのか」

とびっくり。だったら、トップレベルのドメインを自分で取って無料のホームページを作れるようにしたら、それも大きな価値を生むに違いない、と思ったのがきっかけだそうです。

が、しかし、トップレベルのドメインがそんなに簡単に転がっているわけでもない。最初は人口48人(!)のPitcairnという英領の島に目をつけ契約にまでこぎつけたが、契約した人が正式なPitcairn政府の代理人でなかった・・ということで訴訟となりNG。

・・・しかし、人口48人の島国ってなんなんだ、と聞いたところ、18世紀末に、イギリス人の船乗りがタヒチ人の女性と流れ着いたのが出だしとのこと。200年たって人口48人って、どれだけ厳しい生活環境なのか?それとも著しく繁殖力が弱い人達なのか?と聞いたら「知らない」とのこと。

(家に帰ってWikipediaを読んだら、20世紀初頭には200人以上いたが、だんだん減って50人を切ってしまったらしいです。)

そして、ニュージーランドのオランダ大使などと話たりして、今度は人口1500人ほどのTokelauという島国を発見。まずはハワイでTokelauの王様(?)と会談し、.tkドメインの獲得に成功。

しかし、実際にドメインを使うには、その領土にインターネット接続がないといけない、というのがICANNのルールだそうで、なんとかしてこの離島にインターネットを持ち込まないといけない。

して、このTokelauにどうやって行くかというと、まずサモアに行き、そこからいつ出るかもわからない船に乗って48時間、ドンブラと揺られる。そして最後の1-2キロは、カヌーに乗換えてやっと到着、とのこと。

48時間乗る船には乗客用の船室はなく、炎天下の甲板上でじっと耐えなければならない。しかも大変船が遅いこともあって、うねりのままに船が揺れ

「想像したこともない船酔い」

を経験したそうです。で、島が見えてきて、「これでついた」と思ったら、今度はカヌーが待っていた、と。

しかし、こうした苦難にも負けず、オランダ人の彼は、機材を持ち込み、衛星インターネットに接続。Tokelauは3つの島からなるとのことで、それぞれの島に5台のPCからなるインターネットカフェ的なものを設置。

いや、機材の持ち込み大変そうですね。

ちなみに、.tk利用権収入は、今やTokelauのGDPの20%となっているそうです。おなじみCIAのFactbookによるとTokelauのGDPは$1.5 millionだそうなので、30万ドルか。「トップレベルドメインの卸売価格」なんていう市場相場があるはずもないので、これ、結構貴重な情報かも。

また、インターネット接続ができた副作用として、200人の島民が国を出てしまった、とのことです。「外の世界を知ったから」ってことですね。

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そしてオランダ人の彼は、オランダとイギリスにオフィスを持ち、ゲットした.tkドメインで、レジスタラのようなホスティング事業者のような広告事業者のようなことをしているそう。3千万ドメインが登録され、事業も黒字になったので、今度はこのユーザーベースを活用した次なるビジネス展開を目指して増資中。そのためのシリコンバレー訪問だったらしい。

ちなみに、

「オランダで登記してる会社に投資するシリコンバレーのベンチャーキャピタルってあるの?」

と聞いたところ、

「イギリスにオフィスがあったりして、ヨーロッパへの投資経験があるところだけだね」

とのことでした。前も書いた通り、日本で登記している会社がアメリカのベンチャーキャピタルから投資を受けるのは非常に難しいわけですが、ヨーロッパの会社でも同じように別け隔てなく難しいんですね、やっぱり。

このオランダの人、今38歳で、これまで100カ国ちょっとを訪問。死ぬまでに全230うんカ国すべてに行くことが目標だそうで、最近結婚してハネムーンは日本とパラオに行ったそう。

「次は、日本か中国で5年くらい住んでみたい」

とのことですので、こういう人と日本でビジネスしたい人は、ご紹介しますのでメールください。

カヌーに乗ってドメインゲット」への2件のフィードバック

  1. 朝(14日9時半)から面白話を読ませていただきました。世の中にはいろんなことを考え、実行する人がいるモノだと改めて感心。そういう面白い人たちの集積地がシリコンバレーなのでしょうね。かれこれ10年ほど前に「シリコンバレーの日本人起業家たち」という本を書いたことがあり、その折りには取材でシリコンバレーにも行きましたが、久しぶりにシリコンバレーを再訪してみたくなりました。

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  2. 「カヌーが待っていた」というあたりで、笑い出してしまいました。こういう人がいるんですねー。でもインターネットにつながったせいで、1500人のうちの200人が島の外に出てしまう、とは。。。きっと働き盛りの若い人ばかりだろうし。。。せめてその200人の人達が外で幸せな人生を送っているのならいいのですが。

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