数日前も書いたサブプライム問題ですが、ついに銀行の取り付け問題が発生。全米最大の住宅ローン会社、Countrywideには普通銀行部門もあるのだが、銀行の先行きに不安を感じた人たちが預金引き出しのために支店に並び始めている・・・・と。で、今朝の朝刊を開けたら、こんな全面広告が。
「うちの銀行は1000億ドル(10兆円強)の資産があり、かつ国の預金保険もついてるから大丈夫、心配しないでね」
という広告なんですが、いや、銀行がこんな広告出すようでは相当ヤバイ。
こちらの記事によれば、Countrywide銀行の預金者のうち、預金保険の限度額であるところの10万ドルを超す預金をしている人の比率は64%以上。その人たちにとっては、
「銀行がつぶれたら預金が全額返ってこない」
という不安はリアルなわけです。
というわけで、あっという間にここまできた米国サブライムバブル崩壊。
しかしですな、サブプライムバブル崩壊で、住宅が適正価格に戻る、というメリットは大いにある。これまで、
「今までだったら借りられないような信用の低い人も借りられるようになった」
↓
「みんながんがん家を買う」
↓
「住宅の値段があがる」
↓
「ローン総額が増える一方、自分の収入では家を買えない人が増える」
↓
「今までだったら借りられないような人にもどんどん貸すことでローン事業拡大」
という「安く住宅を手に入れたい」という人にとって見れば負の循環の歯車が回ってたわけです。(この歯車の間には、「ローンは貸したらすぐ債券化してヘッジファンドに売る」というテコもかんでます。はい。)
おかげ住宅価格は上昇。「自分の資産の価値が増した」という幻想に浸るのは楽しいですが、住宅の値段が上がって苦労するのはフツーの人。ローン引き締めで住宅の値段が下がれば、結果的にはよいことかと。(短期的には貸し渋りなども起こっており厳しいですが。)
ま、1年くらいは世界を巻き込んだ苦しい時期が続くと思います。(ヨーロッパの中央銀行までツケを払ってくれるって、アメリカはラッキー、とも言えますが。)
しかし、
「信用水増し→バブル崩壊」
というのは、避けがたい経済サイクルの一つ、という説もあり、私も3つのバブル崩壊を見てきて、結局はそういうことかな、と思います。
資本主義・貨幣経済というのは、結局
「将来は今よりいいだろう」
という期待と、
「社会はうまく回っていくだろう」
という信用に基づいて回っているフニャフニャしたもの。これをもって、「確実な真理(または絶対的価値)に基づかない嘘のシステム」と毛嫌いする人もいますが、これはこれで、大勢を見れば結構うまく回ってるわけで、いいんじゃないでしょうか。前も言いましたが、わたしは好きです。というわけで、インターネットバブル崩壊からたった7年で、またもや巨大バブルを崩壊させる懲りないアメリカ人も結構好きだったりします。
***
さて、余談ながら。
家を住宅ローン貸し出し元の銀行に明け渡して、家は失ったものも借金もチャラにしてもらって一安心、と思った人が、IRS(国税庁)から通知が来て
「返さずに済んだ分のローン額は収入とみなす。所得税払え。」
・・・という恐ろしい話もあり。ま、ローン全額背負って生きるよりマシですが、ホント税金と死神だけは逃れられません。
庶民の買い易い値段にって、日本のバブル潰しと同じ論理ではないですか。
今度は、逆の負の連鎖が始まります。騙された外国人は、今度は簡単に貸してくれませんよ。
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フニュフニャした分かりにくくて捉えにくいものではなく、ただ単純に分かりやすい思い込みだと思います。
失礼かもしれませんが、”資本主義・貨幣経済”は、人類史上最も成功を修めたような気がする”宗教”って理解で十分だと個人的には思います。
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ノンリコースローンで住宅を購入し、返済不能で家と借金の両方をあきらめてチャラかと思ったら、債務免除益に課税とはね。
日本でなら、裁判所で決定した民事上の弁済って、未払いに対して罰則はないそうですよ。
税金の滞納は、相手が国ということもあり、弁済順位は最上位に位置づけられていますし、なんといっても税務”署”ですから、未払いを続けていれば当然(逮捕を含む)罰則が待っているわけで。
こんなことなら、いっそノンリコで借りているよりも、通常の日本式の、担保がなくなっても債務は残る、方がむしろよかったりして。
ま、あくまでも日本での話しなのですが。
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クレジットシステムは経済が常に拡大していくという前提の元に成り立っているわけですよね。そして経済はアップダウンはあるけど拡大を続けて行くという予想には、その拡大を支える地球資源が有限であるという認識が欠落しているように思います。エネルギー資源の減耗によって経済がどんどん縮小していく時代が来ると思うのですが、Chikaさんはそう思いませんか?
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Chikaです
>エネルギー資源の減耗によって経済がどんどん縮小していく時代が来ると思うのですが、Chikaさんはそう思いませんか?
思いません(といきなり言い切る。笑)。「今の」技術の範囲内での化石燃料依存には限界があると思いますが、太陽を含め、活用し切れていないエネルギー源がたくさんあります。原子力だってもっとちゃんと安全に活用する道があるのかも。
以前も、「日本は半鎖国型でなんとかするモデルってないのかな」と書いたら「そんなのできるわけない」というモノシリサンのコメントが多々ありましたが、「今の技術で」できるわけないのは私もヨークわかってます。でも数十年単位で技術開発を進めればもしかしたらそういうのも可能なんじゃない?と思うわけで。
ということで、長期的に見ればエネルギーの枯渇が原因で地球全体の経済が縮小することはないと思います。なぜなら技術が進歩するからです・・・・と鉄腕アトムを見て育った世代のような楽観的なワタシ。短期的には悲観ですが。
ちょっと話は違いますが、昭和40年代の東京周辺の環境破壊はひどかった。葉山あたりの海で、波打ち際までヘドロが堆積してて、入ると足にタール状のものがべっとりついたり。都内の河川もドロドロだった。「このまま悪い方へ、悪いほうへ行くのかな」という恐怖が、ゴジラとかの背景にあったと思います。ウルトラマンでも「環境汚染から生まれた怪獣」みたいなのがたくさん出てきますが、そういう。でも、その後かなりきれいになって、
「おお、改善するってあるのねー」
と、私は、かなり、人間とその文明の「善の力」に感動しました。
「エネルギーの枯渇」にくわえ「環境破壊」により経済が衰退するというシナリオもありかと思いますが、それも含めて、長期的には楽観的です。
(繰り返しますが、短期的には問題意識・怒りがたくさんありますし、個々人が努力するというのも長期的によい結果を生み出すために必要だと思っています。)
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さて、お返事ついでにその前のコメントにもお返事します。
>騙された外国人は、今度は簡単に貸してくれませんよ。
そうですね。そういうsentimentが1年くらいしこるかな、と思います。金融業界の人の時間軸はめちゃくちゃ短い。短期=30秒、中期=3分、長期=三日、なんていう人もいるくらい(これはトレーダーですが)。そういう人たちにとって見ると1年はめちゃくちゃ長いわけで。
また、毎回バブルが崩壊すると、そのバブルの元となった金融商品は総スカンとなるわけですが、またちがう商品が出てきてそこにバブル的金が集まる、という、懲りない循環が。お金はたんすに入れておくわけに行かないので、またしばらくしたら世界をまわると思います。
>人類史上最も成功を修めたような気がする”宗教”って理解で十分だと個人的には思います。
私は思いません(これまた言い切る。笑)。日本だって貨幣経済、株式市場、金融市場を運用してるわけで、その恩恵を享受せずに生きている人はいない。そのシステムを使いながら
「こんなの単なる宗教」
というのは危険なことだと思います。使わざるを得ない以上、真剣に運用すべきであり、「科学」として考えるべきだと思います。(社会科学、心理学だって「科学」ですので・・・)。
>未払いを続けていれば当然(逮捕を含む)罰則が待っている
アメリカもそうです。っていうか、
「尻尾を出さない犯罪者を税金逃れで逮捕して刑務所に叩き込む」
っていうのは、アルカポーネの時代からのアメリカのお家芸です。ほんとかどうか知りませんが、殉職する国税職員が結構いるという話を聞いたことも。(手を上げろ!と乗り込んで税金逃れしている人を逮捕する危険な仕事だから。)昔、私の隣に住んでいたコールガールさんも、売春の証拠は出なくて税務署に訴えられたし・・・。
http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/10/post.html
また、カリフォルニアだとさらに怖いのは、国税より州税の方が取立てが厳しいということ。夜逃げ同然で他の州に引っ越した知人がいます。
でも、今回みたいなのは、多分国税と戦えば勝てるような気がする。なんていっても被害者が大勢いるので、集団で戦えばやがては免除になるように思うのですが。
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お返事ありがとうございます。
技術の進歩の現場に近いところにいらっしゃるChikaさんならではの回答かな。お立場上、Yesということはあなたのinterestに反すると思いますし。
10年ちょっと前までは、私も「人間とその文明による善の力」を信じてました。(私は地方出身なので、子供の頃遊んだ砂浜は韓国や中国から漂着するゴミですっかり汚くなってしまいましたけど。) ベルリンの壁が崩され、マンデラが釈放されて南ア大統領になり、オスロ合意が締結されて間もない頃でしょうか。
でもね、ブッシュ政権下のアメリカ、アフリカでの大量虐殺、温暖化、生物の大量絶滅やなんか見ると、「うーん人間ってやっぱりバカで悪か?」と思っちゃうのですね。
さらに、エネルギーに関しては、Chikaさんの母校の石井吉徳先生らや、Mathew Simmons、Collin Campbellをはじめとする長らくエネルギー業界にいた世界の研究者たちがASPO(http://www.peakoil.net/)で話していることを見聞きすると、どうも悲観的にならざるを得ないのですよ。
確かに100年先には人類は何らかの形で危機を乗り越えているかもしれません。ただし、その頃にはかなり人口も減っていると思うし、経済も今の資本主義とはかなり違う形にならざるを得ないんじゃないでしょうか。短期的には、安く採掘できる石油がなくなることで生活物資が乏しくなり物価が極度に上昇し、よっぽどの金持ちでない限り貧困層に転落する人々が自分も含めて大勢出てくると思います。社会システムも機能しなくなります。石油取引はドル建てだから、石油が少なくなってくればドルだって価値を失うでしょう。(だからユーロ建てへのシフトを考えているイランをアメリカは攻撃したいのではないですか?) 温暖化や資源紛争のことを考えると石油はなくなった方がいいのだと思いますが、その過程で起こる社会不安を自分と自分の子供の世代が経験することがまず怖いのです。
生活者としてできることをしながら、代替エネルギーのベンチャーがたくさん誕生してその中から有効な技術が生まれること、そして資源を巡って殺し合う必要がなくなることを私も願わずにいられません。人間希望がないと生きていけませんしね。
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chikaです。
>お立場上、Yesということはあなたのinterestに反すると思います
これはひどいデスヨ。。。わたしはGonzalezか?
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違う違う! ごめんなさい。Chikaさんを非難する気持ちなんて全然なかったんですけど、書き方がまずかったです。すみません!
主人に12月に100歳を迎える大叔母がいます。フォードの1号車誕生の翌年に生まれた彼女にとって、これまでの一生で目撃した発明はまさに奇跡の連続なわけで、そう考えると、今私たちが予想もしないような技術が生まれる、ってことも本当にあるかもしれないですよね。
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chikaです。
あー、いえいえ、さぼてんさんが違う説をお持ちなのは全然問題ないのですが、ワタシには、interestを守るほどの立場があるわけではないので・・・。
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すみません、私馬鹿なもので、宗教と科学の違いが全く分かりません。実運用したら科学なんでしょうか。でもその定義だと宗教だって実運用されているし・・・。もしよろしければ教えて頂けないでしょうか。
>その恩恵を享受せずに生きている人はいない。
例えば、経済的事情で日本では年間数千人の人が自殺していますが、彼らも貨幣経済の恩恵を受けていたのでしょうか。私は貨幣経済システムの犠牲になった人々と捉えていたのですが、どうも考えを改める必要があるようです。
>真剣に運用すべきであり、「科学」として考えるべきだと思います。
たんなる宗教であれば、必ずしも真剣に運用する必要がないという主張があるように見受けましたが、これには反対です。オウムがその好例でしょう。より大きな規模では、宗教戦争にしても同様です。実社会に存在する以上、「科学(定義は知りませんが)」だろうが、「宗教」だろうが、真剣に運用すべきではないでしょうか。
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chikaです。
>宗教と科学の違い
そうですね。そもそも宗教と科学とか言い始めると水掛け論になりますので、それは忘れて、
「過去の出来事に基づき法則性を発見し、それに基づき将来を予測したり、現状のルール等を変更することで望ましい将来の出来事を引き起こしたり、望ましくない将来の出来事を避けることができる。完璧ではないが、常にフィードバックを元に改善を続けることで、全体としてはよくなっていく」
というのでどうでしょうね。
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大人気ないコメントを書いたと思って謝りに来たのですが、きちんと返答して頂けてるとは良い意味で予想外でした。
再帰的定義で面白いですね。私が今までみた中では、最も正解に近いと感じました。
再帰的定義は理論的に美しいのですが、自己完結型のナルシズムと表裏一体なので、油断すると一瞬で実体とかけ離れた手の付けられない代物になります。
蛇足かもしれませんが、触発されてとりとめもなく考えました。
よくなる保証ってどこにあるんでしょう。誰が判断するのでしょう。例えば、貨幣経済は日々膨張していますが、その経済システムは誰によってどのように担保されたものなのなのでしょうか。資本主義と共産主義が対立していた頃はこの厄介な問題に正面から立ち向かう優秀な人がたくさん居たと思いますが、今は誰かやってるんでしょうか。私の感覚だと、人類の生産量に依存して最大貨幣流通量を決める所が出発点だと思うのですが、不勉強の為かそんな話は聞いたことがありません。
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>人類の生産量に依存して最大貨幣流通量を決める所
基本的には中央銀行+財務省の仕事では?生産量(というか生産性)のみならず、money velocity(循環速度)も大事ですが。でも、生産性とかvelocityってリアルタイムではわからないので、物価など副産物的指標で金利政策を決定してる・・と私は理解してるんですが、違います?
一方で、中央銀行が仕切れるは基本的に国内経済だけで、お金が自由に国際的に流通する昨今、各国が自国の経済だけを見ているのではまずい、国際的にmoney supplyをモニターする機関が必要なのでは?・・・というようなことを、たしかSorosが10年位前に言っていたような記憶はあります。おぼろげですが。でも、理論的にはそうだよなーと思います。
>よくなる保証ってどこにあるんでしょう
それはないと思いますよ。スタティックな特定手段をとることで、必ずよい結果が得られるという保証も実績もないからこそ「何とかもう少しでもよくしていこう」とダイナミックに努力し続けなければならないという。そういう「ダイナミックに変化できる仕組み」であるところが資本主義の美しいところだと私は思うんですが。この辺になると、昔書いたエントリーが:
http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/03/post_8.html
http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/03/post_11.html
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