誰かのために何かをする喜びとは。映画「僕たちは世界を変えることができない」を見た。

僕がいつも参考にしているカゲヒナタのレビューという映画レビューブログがあるんですが、そちらで10点満点中9点だったのが本作品。

 

行動こそが希望となる「僕たちは世界を変えることができない。」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー カゲヒナタのレビュー

 

ずっと前から映画の存在は知っていたものの、実話をベースにした作品ということもあって、邦画によくある偽善的なお涙頂戴映画だろうなーと全く見る気がしていませんでした。

しかし、たまたまこのブログの過去ログを見ていたらとてもおもしろそうだったので、あまり期待せずに見てみたら、とても良かった!

 

 

あらすじ

医大生のコータ(向井理)は友人たちと楽しい日常を過ごしていたが、何か物足りなく感じていた。ある日、海外支援のパンフレットに目が止まったコータは、すぐに知り合い全員に「カンボジアに学校を建てよう!」とメールを送る。実際に現地へリサーチに行くまでに活動を本格化させるが、そこには想像以上の現実が待ち構えていて……。

 

 

 

※今回、予告動画はネタバレありなので載せてません。

 

感想

だいたい書きたい内容はすでに上のブログで書かれているんですが、一番重要なところはここ。

この映画のストーリーに

「日本人がカンボジアに小学校を建てようって、ただの自己満足じゃないの?」

「海外に行かなくても、日本に困っている人がいっぱいいるじゃん。そっちに目を向けてよ」

といったネガティブな印象を印象を持つ人もいると思います(自分も少なからずその思いはありました)。

 

でもこの作品はそういう人たちこそに観てほしいです。

何故なら、この疑問は映画の中でしっかりと提示されるからです。

 まさに僕もこんな感じでした。どうせ大学生がチャラチャラしてちょっといいことやってみました的な映画で、それに適当に感動的エピソードを散りばめて向井理に萌える映画なんだろうなぁと。

しかし、その予想はいい意味で裏切られまくった、とても芯のある骨太な映画です。

 

 主人公のコータがカンボジアに学校を建てる、そのきっかけは郵便局のチラシで150万円で建てられると知ったから。なんとなくおもしろそうだからやってみようというだけで、誰もが「そんな軽いノリで建てるの?」「それって別にカンボジアのことを考えているわけじゃなくて、ただ他人と違うでかいことをやって自慢したいっていう大学生ベンチャーとかみたいなノリなんじゃね?」と誰もが思うと思うんですね。で、きちんとこの映画はそういう軽いノリ、若さゆえの無鉄砲な勢いが批判されるものであることを知った上で、前半は描いています。なんせ、コータはカンボジアに行ったこともなくて、カンボジアのことも一般常識レベルでしか知らない、「なんとなく貧しいかわいそうな国」ぐらいの理解しかないのですから。

それが、カンボジアに実際に行ってみて現状をきちんと理解して、そして自分のやろうとしていることが似非ボランティアじゃないかと周囲から叩かれて葛藤して、それでもなおやり遂げようと自分で意味を見出し、真剣に向き合っていくまでの過程が素晴らしいです。

この、「観客が感じるだろう批判」を全部物語中で描き出して、主人公の中で一つ一つ解答を出していく、これが実話ならではの凄みだと思うんですよね。全部本当に実物のコータが感じたことだから、付け焼き刃の回答ではないし偽善的なところがない。映画的な感動とかお涙頂戴にも逃げていない。きっとフィクションで一つの映画として描かれた脚本だったら、こんな風にならなかったと感じます。

 

日本って先進国の中でもボランティアが普及していない方らしいですが、「行政に任せとけばいいじゃん」とか「そもそも日本の人とか身近な人でも困っている人いるんじゃない?と」か思っている人は多いでしょう。(僕も含めて。)

そういう人たちへのボランティアをすることの意義、自分と全然関係ない国の人の力になろうとする意味を、この映画は一つ教えてくれると思います。

 

また、こういったシナリオの良さに頼るだけじゃなくて、映画的な出来の良さもきちんと両立しています。主人公の最初のチャラチャラした大学生ノリ。そこからカンボジアに行って、メチャクチャシビアな歴史と現状を知るんですが、その落差がハンパない。カンボジアの映像はドキュメンタリー風な演出なのですが、まさに向井理含め若い役者たちが役と一緒になってカンボジアのことを知り、真剣に向き合うような作りになっていて、ラストシーンでは映画なのかドキュメンタリーなのか分からないような感覚に陥ります。

 

惜しむらくは、最初に自分が感じたような「よくあるダメ邦画」的な印象を、きっといろんな人が感じてしまい、見るまでに至らないだろうなーという点。なんかパッケージの雰囲気とかから想像するに、とても薄っぺらい映画を想像してしまうと思うんですよね。。。でも実際は真逆で、ぜひいろんな人に見てもらいたいなーと思える映画でした。

 

この映画はボランティアというフィールドですが、見た後は自分の仕事とかでも、もっと頑張ってみよう、僕たちは世界を変えることはできないけど、何かできることはあるだろうと、ポジティブな気持ちになれると思います。

 

ちなみに

劇中の重要な歌として使われているブルーハーツの「青空」という曲は有名なので一度は聞いたことがあると思いますが、この映画を見たら絶対何度も聴き直したくなると思います。歌詞も映画のテーマにマッチしていて、どっからこのチョイスしてきたんだと感心するしかないです。


ザ・ブルーハーツ 青空 - YouTube

 

ちなみに2

ハチヨンイズムの記事で、同じサークルの石松宏章さんのインタビューが掲載されてますね!※こちらで載ってる映画はこの映画とは違いますが。

マジでガチなボランティア「知ってしまったら、それは誰かに伝えなきゃいけない / ハチヨンイズム

 

評価

75点(100点満点中)