映画「人生、ブラボー!」は子供が欲しくなる映画

映画「人生、ブラボー!」を観ました。先日「26世紀青年」がクソ邦題だと書きましたが、このタイトルもなかなかのダメ邦題。

現代は「STARBUCK」です。「STARBUCK」とは何か?公式サイトによると、世界中で20万頭以上の子供たちがいる超優良な種牛のことです。どういう映画か?

 

 

 

あらすじ

過去に行った693回の精子提供を通じて、ある日突然533人の子どもの父親だと告げられ、さらにその中の142人の子どもたちから身元開示の裁判を求められた42歳、独身のダヴィッド。はじめは「そんなこと冗談じゃない!」と友人の弁護士と匿名を守るため裁判の準備を始めるのだが、ふと1枚だけ見たプロフィールに、なんと自分の応援するサッカーチームのスター選手が!「こいつが俺の息子だったのか!」。これがきっかけで興味を持ち、身元を隠して子どもたちを逆訪問することに。そこには、それぞのれ人生を生きる子どもたちの姿があった。そんな彼らに対してなにかしてあげたいという気持ちからダヴィッドは変わり始め、自身の正体を明かしたいと思い始めるのだが…。


映画『人生、ブラボー!』予告編 - YouTube

 

 

感想

「人生、ブラボー!」という、よくある量産型心温まる系クソ洋画みたいなタイトルなせいで、完全にスルーしていたこの映画なのですが、上記のようにあらすじを読んだだけで引き込まれる突飛な発想があります。なんでこれを活かしてもっとおもしろい邦題を付けなかったのかが悔やまれる。「スターバック」はわかりにくいにしても、もう少しこう、なんかね。。。

 

しかし、内容はとてもおもしろかったです!

僕は親と子を描いた映画で近年最もおもしろかったのが「そして父になる」だと思うのですが、この映画はその真逆のアプローチ。あっちが「親と子のつながりで重要なのは生物学上のものか、過ごした時間か」を問うたものなのに対して、こちらは「生物学上の父であること」のみにフォーカスしたもの。

 

だいたい話の展開はあらすじから予想できる範囲の感じで、

主人公に子供がたくさんいることが分かる⇒こっそり自分の子供達に会いに行ってちょこっとずつ仲良くなって、情が出てくる⇒名乗り出たいけど名乗り出れない、どうしよう…

みたいな流れ。子どもと出会って一緒に過ごすことでダメ人間がまともになろうとするってプロットはよくある話なんですが、子供が異常にたくさんいるってだけでこうも新鮮なワクワク映画になるとは。

 

主人公は、冒頭で自分の息子のサッカー選手の試合を見に行き、その選手がゴールを決めた後に興奮しながらこう言うんですね。

「分身が決勝ゴールを決めた気分だよ!」

 

これがまさにこの映画のおもしろさであり、自分の子に対して人間が期待するものの本質なのかなぁと思います。子供は、自分の分身なのだと。

 

この映画を見た後に一番に思ったのは2ちゃんねるのコピペで、「ご先祖様はみんな非童貞なのに、なんでおまえだけ童貞なんだ」っていうやつ。これってよく考えたらすごいことですよね。でも、同様に自分が子どもを生むってのは同じように、もしかしたらその先もずーっと自分というものが、自分の分身が残っていくのかもしれないというすごい現象なんです。ただし、普通の人はせいぜい自分のひ孫ぐらいまでしか顔を見れない、つまり見れて自分の分身は十数人ぐらい。

それが、この映画ではいきなり数百人の自分の子どもにあって、何もなかったダメ人間の主人公が圧倒されるんですね。これがすごい。これはつまり、人間が子どもを生むことでどれだけこの先の歴史に影響を起こすかっていう、比喩表現なんだと思うんですよ。

 

その他にも、この映画は子どもというものの尊さをすごく上手に表現しています。兄貴からは「子どもなんて生むもんじゃない」と言われ、友人の弁護士は「子どもなんてできたらエネルギーも金も時間も全部取られちまう」と、みんな口ではそんなことを言うのです。しかしそのくせ、子どもがこっそりカバンに忍ばせた手作りのプレゼントに頬を緩ませたり、寝起きの父親の顔をぷにぷにしてきたときの「やめろよー」という幸せそうなやりとりであったり。その他色々と親と子のやりとりが素敵すぎるので、ぜひぜひそこは観てみてほしいです。また、終わり方もベタベタなハッピーエンド展開なので、安心して楽しめる映画です。

 

惜しいのは、若干中盤の展開が意味不明なところ。なんで主人公が自分の正体をそんなにまでして明かせないのかがピンと来ないので、なんでそんなに困っているのかが理解できず、感情移入できない。また、主人公がクズなのにまっとうな人間になっていくってのはいいんですが、結構ガチでクズなところ。誇張表現的なダメ親父ではなくて、「えっそこまでなの!?」って思ってしまうレベル。そのせいでせっかくのストーリーもよくわからないところでもやもや感を残してしまいます。もともとの「たくさん子どもがいる」ってところで十分おもしろいんだから、そっちの着想を膨らまして起承転結を作って欲しかったなぁと思いましたね。

 

 

評価

70点(100展満点中)

 

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