新潮文庫夏の100冊の思い出


えらく古いCMを持ち出してきてしまった。坂本龍一若いなぁ…、というわけで今年もパンダでおなじみ、想像力と数百円、新潮文庫の夏の100冊フェアの季節がやってきた。
ただ100冊を並べて置いているだけではダメで、その本のジャンルや厚み、表紙のデザインや売れ行きに応じて日々配置を変更し、売上をどこまで伸ばせるかってのが書店員の腕の見せ所。いろんな店の置き方を見比べていくだけで、その店の文庫担当者の実力がわかってしまうものなんでござんすよ。
さて、今日はそんな夏の100冊の思い出をひとつ。全国的に平台を占拠していた夏の100冊も、秋になるとほとんどの店舗の店頭から消えてなくなってしまう。しかし、僕が店舗に勤めていた15年前、読書の秋も深まった神無月のころに、そのお客さまはふらりとやって来られてこうおっしゃったのだった。
「新潮文庫の夏の100冊、全部いただけるかしら」
その一言に一瞬でテンパるスタッフ。ど、どうしましょう!ってあわてて僕のところに走ってきたのだが、いやどうしようも何もリスト見て手分けして探すしかねーだろ、ということで探すこと20分。
驚いたことに、揃えられたのは68冊だけだった。残りは在庫していなかったのだ。
本当に、あのときほどお客様にうちの店の品揃えが不甲斐なくて申し訳ないと思ったことはない。翌年以降、どんなにランクが低くても100冊に選ばれた文庫は夏が終わっても在庫するようにしたものである。
ちなみに100冊全部買ったらどれくらいのお値段になるかと言えば、今年は税込で65188円になるそう。
http://www.shincho-shop.jp/shincho/goods/index.html?ggcd=snc0046
100冊セットといいながら、ひそかに117冊もあるのは、よいこのみんなには内緒だ。