日陰の小道

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2024年「もっと評価されるべきアニメ」投票文

nlab.itmedia.co.jp

こちらの企画に参加させていただきました。
ネットに公開している方の文を見たら面白かったので、せっかくだし自分も公開しちゃおうかなと思って記事にしています。

TVアニメ編

アクロトリップ

今年の小中学生向け少女漫画原作アニメは、なかよしからの刺客『ヴァンパイア男子寮』も傑作だったのですが、りぼん原作の『アクロトリップ』も実にいいアニメで嬉しいです。悪の組織VS魔法少女の話が小ぢんまりとした町内のドタバタに落とし込まれており、子供向け番組のこの両者の対決をプロレス的に解釈している作品です。これだけ見るとわりとパロディ作品でありがちな料理方法ですが、この作品はそれと同時に、その対決を無邪気に楽しんでいた子ども時代に心を置いてきてしまったかのような人々が、悪と正義のある種の相互扶助のような関係の上、絶妙なバランスで成立している暮らしを描いているような雰囲気があり、この関係が続いていくことにどこか不思議なあたたかさを感じるところが好きです。あとは純粋に萌え/コメディがかなりやれてるのも嬉しいですね。やっぱり萌え/コメディのアニメが一番好きなので……。
個人的には北陸の生まれのため、近くの新潟(N県)アニメということで贔屓の感情もあります。EDにメカを作ってるのも、同じ新潟アニメの『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』との絆を感じて嬉しいですね。

HIGHSPEED Étoile

2023年の『オーバーテイク!』と『MFゴースト』のカーレースアニメの一騎打ちはアニメファン全員が興奮したことと思いますが、24年にもこの『HIGHSPEED Étoile』が白熱したレースを見せてくれました! 欲を言えば秋の『MFゴースト2nd season』との真っ向勝負が見たかったですね。
このアニメ、序盤のレースはかなり静かに盛り上がらないよう作られていて、私みたいな車に造詣が深くないオタクは結構戸惑ったのではないかと思います。しかし、序盤の二連続もんじゃ焼き回でキャラクターを掘り下げたりと、後半にいくにつれてどんどん作品の輪郭がわかり、面白く感じられるようになったアニメでした。作品自体「お決まりのトップ陣が支配的な、どこか冷めた近未来カーレースシーンの状況を、破天荒な凛がレーサーたちに火を付けていく……」という流れだったので、これは意図的な構成だったのだと思っていますが、実に見事なことだと感じます。このような構成ができるのはTVアニメならではの要素なので、そこがやれてるアニメは評価したくなりますね。

ぽんのみち

私は巨乳アンチなのですが、なんらかの力が働いて全員巨乳にさせられているこのアニメが、最終的に冬クールで一番好きだったので、凄いアニメなのだと思います。
10年前はもうちょっとアニメ界隈でも「日常系」みたいなワードが持て囃されたものですが、昨今では意外と数を減らしがちです。この作品はそのような、友人間でだらりと過ごす日々そのものに焦点を当てる作品だったのが嬉しく、評価したくなります。
また、これはアニメを見るとたしかに納得なのですが、友人らが集まる場をを作る力というのは、麻雀のようなテーブルゲームの持つ極めて大きな魅力の一つなんですよね。ここに着目したゲームのアニメって案外珍しいのではないでしょうか。
終盤、仲が悪くなるようなイベントがあったわけでもないのに、雀卓が無くなってしまったことでなんとなく疎遠になってしまうグループ……みたいな描き方が特に良かったなと思います。

エグミレガシー

声優・江口拓也さんの味がありすぎるデザインのキャラクターがCGアニメになった……という、それだけでインパクト大の作品です。しかしながら、この『エグミレガシー』はそこから堅実に物語を楽しませる作品に仕立て上げているのが凄い! 江口さんはレジェンダリー・ファイナル・クライマックス・ボム役としても出演されているのですが、生みの親が出演しているというこのメタ構造を反映した展開があったりと、見た目に反してインパクト勝負ではなく極めてロジカルに作られた作品だなという印象を受けました。
アニメシーンにおいて、こういうメタなポジションが評価されまくるのもどうかなと個人的には思ってしまうのですが、しかし残念ながらそんなに知られていない印象なので、となるとこのランキングに素晴らしくマッチした作品なのではと考えています。

村井の恋

どちらかと言えばアニメの凄いアクションよりも省力でそれっぽく見せてしまう技法に関心がある方なので、イラストを揺らすことでありとあらゆる動きを仕立て上げている『村井の恋』はそこを徹底的に追求していて、凄まじいなと思いました。これが成立しているのはギャグ色強めのラブコメだからこそ、ではあるのですが、しかしきっちり成立させてしまっているのは快挙だと思います。
24年秋クールはJ.C.STAFFが9本(放送が不定期すぎる『デリコズ・ナーサリー』を数に入れていいものかは結構悩みますが……)放送しているのですが、この驚異的な本数も『村井の恋』のようなリソース配分の賜物とすると、アニメ本数が膨れ上がりがちな昨今で積極的に評価されるべき作品ではと思います。

劇場アニメ編

きみの色

評価されてるとは思うのですが、私は今まで見た山田尚子監督作品で一番好きな作品だったので、主題歌もミスチルのいい曲ですし、まだまだもっと評価されていいのではないかと思っている映画です。思春期と音楽のあたたかな関係を描いた傑作だなと思っています。
山田監督作品といえば音楽ネタを仕込まれるのがお約束ですが、映画『Trainspotting』で有名なUnderworldのBorn Slippy(Nuxx)がかかった時は曲知ってる人全員笑ったんじゃないでしょうか。個人的には、Blue Mondayのイントロオマージュの「反省文~善きもの美しきもの真実なるもの~」でNew Orderのスタジオライブを彷彿とさせる一本指キーボード奏法が披露されていて大盛りあがりでした。

BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇

かの『ONE PIECE FILM RED』を手掛けた谷口監督による、スピーティーかつ迫力のあるエンタメ映画として非常によくできた快作なのですが、そういう作品が全然話題になってないと悲しいので挙げさせていただきます。
どこか監督の手掛けた『GUN×SWORD』を思い出させる問答のバトル、臆病ながらも芯の強さを見せる上田麗奈さん演じるルゥルゥの強い女性像などなど、嬉しいポイントもたくさんありました。『エスタブライフ グレイトエスケープ』の面々の登場もテレビアニメファン的にはもちろん嬉しいポイントでしたね。

コードギアス 奪還のロゼ

アクションありエロありラブコメありで、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の一世を風靡したエンタメ力の高さを真面目にトレースしようとしたみたいな作品で、めちゃめちゃ楽しかったです。ロボットアニメ的にはナイトメアフレームのローラー移動やワイヤーアクションがかなり見られたのも嬉しいですね。
それこそ日5で放送されてたとしたら、よくも悪くもあまりアニメを見ないようなオタクの方々も奪還のロゼの話題でもちきりだったポテンシャルがあったかと思うのですが、劇場公開と配信限定なのが惜しいですね(形態上映画の枠に入れるのも少し迷いますが……)そのうちテレビ放送してほしいなと思っています。

ひとこと

自分はこの企画大好きで、参加させていただいて本当に光栄に思っています。「もっと評価されるべき」というルールが曖昧ながらシンプルなのもよくて、これって選出する時に一番燃えると思うんですよね。反骨精神が絡んでくるので。
「自分だけが好きであればいい」それももっともなんですけれど、単に人気投票でもない、単に良かった順でもない、「このアニメまだまだいけるだろ!」 というこの視聴者の熱意を掻き立てることで、面白いランキングになっているし、どうしても本数が多く/人気作が目立って、埋もれがちな面白いアニメにスポットを当てる企画になってるんじゃないでしょうか。(絶妙に権威的にならないのもいいなと思います)

今年の1位である『オーイ! とんぼ』は納得の出来で、私もオタクの評判があまりにも良くて年末前に慌てて一気に見たのですが、今年トップといっても過言ではないぐらいに面白い作品だったなと思います。アンケート回答時にちゃんと見ていたらこれを挙げたかな、とも思いつつ、とんぼは評価されてるから他に譲ろうかな、と思ったかもしれません。
とは行ったものの、ランクインしているアニメでもちゃんと見られていないものも多く、アニメ視聴者としてはまだまだ修行が足りないな、と思う次第です(毎年そう思ってしまいます)

来年も適度に楽しめる範囲で、できるだけアニメを見ていきたいですね。