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GTA代表の坂東正明氏、来年セパンのGT500ワイルドカードは「DTMクラス1車両」を示唆、鈴鹿1000kmのGT300参戦、WEC富士のGT500スプリントなど実現へ働きかけを強める
2025年8月3日 17:10
- 2025年8月3日 開催
SUPER GT第4戦「2025 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT SPRINT RACE」(以下、第4戦富士)が、8月2日~3日に静岡県駿東郡小山町の富士スピードウェイにて開催されている。
レース2の決勝が行なわれる8月3日の午後には、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下、GTA)代表取締役 坂東正明氏の定例会見が行なわれた。
坂東代表は、第3戦セパンのプロモーターが発言したGT500のワイルドカード車両は「臆測だが」と断わった上で「クラス1規定時代にDTMに参戦した車両」である可能性が高いことを示唆した。また、(短期的な話ではなく長期的な展望として)SROがインターコンチネンタルシリーズの1戦として開催している「鈴鹿1000km」にGT300の車両を参戦させるという計画を依然として温めているほか、ル・マン24時間レースのガレージ56としてGT500のチャンピオン車両が参戦できるようにし、WEC富士戦でGT500のスプリントレースができないか、両シリーズのプロモーターへの働きかけを続けていると説明した。
来年セパンのGT500ワイルドカード車両は、かつてのDTMクラス1車両の可能性
──それでは冒頭に坂東代表からあいさつを。
坂東代表:今回初めてスプリントを行なうことになったが、2日間のあり方に関してはもう少し考えてほしいというフィードバックをチーム側からいただいている。中身の濃さや詰め込み過ぎだということにはいろいろご意見もあるところなので、来季に向けていろいろ考えていく必要がある。スプリントをやってみての評価は、皆さまからいただく評価を得た上で、お客さまのことを第一に考えながら、さまざまな意見を集約していき、反省すべきことは反省しながら来季に向けてよりよいものにしていきたい。暑い中、チームもお客さまも大変な状況だとは思うが、その中でもお客さまに楽しんで帰っていただけるレースにしていきたい。
──本年の冒頭からインディスタート(筆者注:インディカーのような形の密集したスタート)をやると言ってきたのに、それをやらないということにご質問などをいただいているので、その件に関して坂東代表から説明を。
坂東代表:インディスタートに関しては、GTアジアではできているのでやってやれないことはない。しかし、競技運営側と協議した結果、練習を行なうなどの必要があるし、安全性の確保が今のままでは難しいということで今回は見送ることになった。しかし、来季に向けては再度検討していきたいと考えており、チームやドライバーなどとも連絡を密にして、安全性を確保した上でやる方向で考えている。別にインディスタートを諦めたわけではない。
──前回の第3戦セパン戦は、12年ぶりの開催だったが、2日間で7万人を超える観客を集めるなど成功した興行になった。久しぶりに海外大会を終えた感想を教えてほしい。特にチームなどからはロジなどにいろいろ課題があると聞こえてきているが…
坂東代表:セパン戦に関しては当初は20年に開催する計画だったが、コロナになってしまい開催できなかった。プロモーターはその時と同じ(筆者注:ハロスポーツ&エンターテインメント社)だが、マレーシア観光局からの支援があって開催できる予定だったが、それが持ち越されて今回の開催となった。GTAが直接マレーシア観光省と契約しており、その契約期間は3年で、今年がその初年度になる。特に来年がマレーシア政府の観光誘致キャンペーン(Visit Malaysia)の60周年にあたる年で、そこに向けてマレーシアを東南アジアのハブにしたいということでスタートした。
プロモーターに関しては実務として、千人弱の関係者の渡航、宿泊、レンタカーなどのロジを担当してもらうことになっていたが、いくつかの点で課題があり、向こうでは仕切りきれなくなってしまい、うちのスタッフやチーム側に負荷がかかってしまった側面があった。3年あるので、その間に現地プロモーターにも頑張ってもらい、こちらが手を出さなくても安全安心の仕事ができるようになってほしいと考えている。
来年に向けては6月末とうたっていたが、1週前倒しすることになると考えている。今年はスパ24時間と重なってしまい、4号車のドライバー2人がスパに行ってしまった。ただ、その4号車は2人がいない状況でよい結果を出していたが……。
SROに確認したところ、来年もスパ24時間は6月の末と変わらない。そこで1週間前にすることを決めた。そうすると、ワイルドカードのドライバーも欧州から呼んでこられる可能性もあると聞いているので。
──マレーシアで、現地プロモーターから、来年のワイルドカードはGT500で出したいという発言があった。GT500にはトヨタ、日産、ホンダが参戦しているか、どの車両になるのか、さまざま臆測も飛んでいるが…
坂東代表:臆測で申し上げる。トヨタ、日産、ホンダの車両ではない。クラス1のDTMが終わって残っていた車両になる。それを持ってくるのではないだろうか?
そこに可変ウイングを通常のウイングにするなどの調整を行なったりして、SUPER GTのレギュレーションに合わせこんでいく必要がある。DTMのメーカーはすでにワークス活動をしていないので、それをどこが触ってやれるのかなどの課題がある。また、その意味でも、スパ24時間とは重ならない方がいいと考えた。谷口選手や片岡選手のように、こちらからスパ24時間に行くというよりは、そうしたシリーズに出ている欧州のドライバーがワイルドカードで参戦できるようにということだ。
そうした課題をクリアしてどんなものができるか、政治的に解決しなければいけないことなどはあるだろうが、GTAとしてはウエルカムで、来るなら来いという姿勢は何も変わらない。その中でワイルドカードでも勝つぐらいの心意気で挑戦してほしい。
──夏の暑さ対策についてGTAの考え方を教えてほしい、夏は避けるなどの日程面やナイトレースにするなどの対策を検討しているか?
坂東代表:来年のカレンダーに関してはすでにJAFに提出している(GTA広報:近日にJAFから正式に発表される予定)。40℃を超えるような気温の中でやって、暑さの中の1日をどれだけ我慢できますかということにはなってはいけないので、さまざまなことを検討していかないといけない。
現状サーキットでも上のシェードがある席は満席だが、日が当たるところはなかなか買っていただけないなどの状況がある。その状況では朝早くからやるというスケジュールだとどうにもならないので、S耐のようにナイトレースなども検討していく必要があるのかもしれない。ただ、その場合も西日の影響はどうなのかということも考えないといけないので、簡単にこうだとは言えない状況だ。しかし、8月が暑いという状況が今後すぐに改善されるとは思えないので、主催者やレース運営などと話あっていく必要がある。いずれにせよ暑いの一言で終わっていたら先には進めないので、新しい考え方をしていく必要がある。
──それはGTだけでなく他のシリーズも含めて日程を調整する必要があるということか?
坂東代表:そうだ。GTAも自動車会議所の会員となり、モータースポーツ委員会に、スーパー耐久、JRP、JAF、MSJなどと一緒になって入っている。その中で8月をどうしていくか、4つのシリーズが入らないようになどを話し合っていくだろう。例えば、8月をやめても12月がそんなに寒くないなら12月に行ない、さらに海外戦をウインターシリーズにできるならそれを1~2戦開催するというのも1つの考え方だろう。チームなどと話してもシリーズ8戦が適切だという話になっているので、増やしたくもないし減らしたくもない。
鈴鹿1000kmへのGT300車両の参戦と、WEC富士でのGT500スプリントなどの計画を提案中
──今回のスプリント戦のお客さまからの反応はどうか?
坂東代表:まだイベントが進行している段階(会見は3日の昼間に行なわれた)なので、まだすべてを把握している訳ではない。お客さまが自宅に戻されてからどういうフィードバックがあるのかそれに注目したいと思っている。お客さまにとって何が大事なのか、よく調べてお客さまが満足できるようなイベントにしていきたいと思っている。それと同時に皆さん報道関係者の方やチームからのフィードバックもお待ちしている。
今回はかなり凝縮されたスケジュールでやっていることもあり,例えば金曜日に練習走行をやるというのも1つの案だと考えている。ただ、そもそも金曜日のスケジュールをなくしたのは、コストがかかるからという理由であり、それも(コストを上げないで)考慮にいれてもうまくいくのであれば金土日という3日間も考えられる。いずれにせよ、今の暑さの中での土日は厳しいというご意見があることは事実なので、そこは何らかの形で改善できればと考えている。
──現状7月の富士のスーパーフォーミュラでも観客動員数が増えるなど日本のモータースポーツ全般が盛り上がっているということがあると思いますが、そういうことを含めて坂東代表の見解を教えてほしい。
坂東代表:おっしゃる通り、日本のモータースポーツファンは以前に比べて多くなっていると思う。そうした中でわれわれプロモーターにとって大事なことは、観客の皆さまのことを常に第一に考えて、面白いと感じてもらえるイベント作りをしていくことだ。そうした中で切磋琢磨していき、お客さまがこのイベントに行きたいと感じていただき、選んでいただくのが今の時代だと考えている。その中で、SUPER GTの魅力を世の中に伝えていくことが大事だと考えており、報道関係の皆さまやチームの皆さまと一緒にやっていきたいと思っている。
──そうしてSUPER GTが発展していくために、今回のスプリント戦のような取り組みは重要だと坂東代表は考えているということか?
坂東代表:そうだ。そうして実績を残していき、SROがやっているインターコンチネンタルシリーズの鈴鹿1000kmレースにGT300のチームを出していきたいと思っている。向こうは、競争があるタイヤはやめてもらって、コマーシャル(販売されているタイヤ)なら勝負しようと言っている(SUPER GTのGT300はブリヂストン、ダンロップ、ミシュラン、横浜の4メーカーの競争、インターコンチネンタルはワンメイクタイヤ)。こちらも1000kmをやる上でいろいろ検討しないといけないことがあるので、そのあたりの差を埋めて勝負ができるようになれば、と考えている。
また、GT500の単体レースをまずWEC富士でやりたい。われわれのレースが日曜日の2時までに終わるようにして、フィヨンさんの耐久レースが15時~21時で……とかなればいいと思う。それは毎回フィヨンさんにはやりたいとお伝えしている状況だし、ガレージ56(ル・マン24時間のワイルドカード)で、すでにNASCARの車両が出ているのだから、そこにGT500の王者を出すのだってありだと思う。フィヨンさんによれば、じゃあ企画書ちょうだいという話だったけれど、まだ作っていない(笑)、企画書を作るのが苦手なもので(苦笑)。
──ぜひ企画書はスタッフの方に作っていただいて、両方とも実現してもらえると日本のファンは大喜びだと思う。
坂東代表:大事なことは常にやりたい、やりたいと言い続けることだと自分としては思っている。前にDTMとやるのだって、やりたいと言い続けたので、最終的にこぎ着けることができた。
そうした他のリージョンのプロモーターの方としっかりコミュニケーションを取った上で、国内の皆さまともしっかり調整した上でドメスティックなレースでも国際レースとして開催できる可能性を探っていきたい。
──以前予選を1台1台走るスーパーラップをやっていたが、今回のスプリントがドライバーにフォーカスしたレースであれば、そういう形にするのはどうか?
坂東代表:課題は時間の取り方だ。あのやり方をやめたのは、1台の時間の取り方と、コースをみんなが走っている中で1台を追いかけるのとそんなに変わらないのではないかという話になったからだと記憶している。また、チームの仕事であるクリアラップの取り方という考え方もあるし、費用対効果もあまり高くなかったと記憶している。その意味で、現在では検討していない。