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ル・マン24時間レースで4位に入ったフェラーリ50号車が失格 リアウィングが過度なたわみ
2025年6月19日 10:01
ル・マン24時間レースの決勝が6月14日16時~15日16時(現地時間、日本時間は6月14日23時~15日23時)にかけて行なわれた。結果は、83号車 Ferrari 499Pが優勝、2位は6号車 Porsche 963、3位は51号車 Ferrari 499Pが入り、フェラーリの1-3フィニッシュ。4位にも50号車 Ferrari 499Pが入るなどフェラーリの強さが際立ったル・マン24時間レースだった。
しかしながら、その後の車検でフェラーリ50号車に関しては、技術規定違反が発覚。4位の資格が剥奪された。
この50号車はレースを通じて優勝を争う位置にいたものの、レース後の技術検査において同車のリアウィングのステーが「2025年LMH技術規則第3.8.7条および50号車のホモロゲーション(型式認証)シートの曲げ試験基準に適合していない」と判断された。
審査委員は以下の不正を指摘した。
リアウィングステーの部品欠如:ホモロゲーションに記載されている構成に反し、ステーに取り付けられるべきボルト4本が欠落していた。チームマネージャーはこの不適合を認めた。
リアウイングの過度なたわみ:レース後の検査で52mmのたわみが測定されたが、技術規則では最大15mmと定められている。チームはこの測定結果とテスト手順の正当性を認め、異議は申し立てなかった。
チームは、過度なたわみの原因はボルトの欠落によるものであり、パフォーマンス上の利点はなかったと主張した。
また、最後のピットストップ(15時23分)時点で、メカニックがステーに1本のボルトがないことに気付いたが、テレメトリー上では速度変化が見られなかったため、レース終了まで修復を行わなかったと説明している。
しかしながら、審査委員は50号車が全387周中、380周目に最高速度を記録していた点を指摘している。
さらに、技術審査員(安全に関する権限を持つ)は、リアウィングの不完全な組み立てが高速度・疲労状態下での構造的破損の可能性をはらんでおり、安全上のリスクがあると判断した。
このため、50号車は正式結果から失格となり、代わってキャデラック 12号車が4位に、TOYOTA GAZOO Racing 7号車が5位へと繰り上がった。
この裁定は、レースで1位(83号車)と3位(51号車)を獲得したほかのフェラーリハイパーカーには影響しない。
リアウィングのたわみがもたらすメリット
技術規則で最大15mmと定められているリアウィングのたわみが52mmにも達したのが、クルマの規則違反であり、本来同じルールで戦うべきレースにおいてルールに違反していたためフェラーリ50号車は失格となった。
リアウィングのたわみがどんなメリットをもたらすかと言えば、近年のF1で問題となっているように最高速の向上が挙げられる。コーナリング時は低い速度のため、空気抵抗となってダウンフォースを生み出し、高速時はウィングがたわむことで空気抵抗を小さくして最高速度を向上させる。
一般に空気抵抗は、ものの形から得られるCd値と、全面投影面積に比例し、リアウィングのたわみはいずれにもメリットをもたらすものと考えられる。
空気抵抗は速度の2乗で増加する値だが、速度を得るために必要な馬力(エネルギー)は、力に速度を乗じたものなので、空気抵抗は速度の3乗で影響する要素になる。一般に80km/h以上で支配的な抗力となり、そのため技術規定でもたわみの値が制限されているわけだ。
実際、ル・マン24時間レースを映像などで見ていた人なら分かるが、フェラーリ 50号車の最高速度は高く、「380周目に最高速度を記録」と指摘されているように、レース後半に向けてたわみが大きくなっていったことが推測されている。
ル・マン24時間レースにはBoP(性能調整)によって、各車のバランスを採っているが、そもそもこのレベルで違反をするのであればレースとしての成立が疑われる事態になる。50号車は上位を走っており、この50号車によって24時間中に不利益を受けたクルマも多いはず。それが単に1台の失格で終わるのでは、チームプレイも成り立ってしまうのではないだろうか。
現在はレース中にリアルタイムで監視する技術もさまざまにあり、24時間レースではルール違反が他車に及ぼす影響も多いため、なんらかのシステムの導入を期待したい。