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クラリオン、フォルシア クラリオン エレクトロニクスの技術戦略を示した初の記者説明会

フォルシアとクラリオンの技術を融合して未来に向けたコクピット空間を提案

2019年7月8日 開催

クラリオン 取締役社長 川端敦氏

 クラリオンは7月8日、フォルシアグループとなってから初の記者説明会を開催した。説明会には、クラリオン 取締役社長 川端敦氏と同 執行役員 木村敏也氏が登壇して、フォルシア第4の事業部門フォルシア クラリオン エレクトロニクスとしての技術戦略を示した。

 クラリオンは3月28日にフォルシアの100%子会社となった。クラリオンは、フォルシア傘下のフランス「パロット・オートモティブ(Parrot Automotive)」と中国「コエージェント・エレクトロニクス(Coagent Electronics)」と統合して、フォルシア第4の事業部門 フォルシア クラリオン エレクトロニクス(FAURECIA CLARION ELECTRONICS)としてスタートすることになった。

 新事業部は1650名の技術者を含む9000名の体制で、現在の14億ユーロ(約1750億円)から、2022年までに20億ユーロ(約2500億円)の売り上げを見込む。

クラリオン 取締役社長の川端敦氏

 記者説明会で川端氏は、「コネクテッド」「自動運転」「ライドシェア」「電動化」といった自動車業界の4つのメガトレンドに対して、フォルシアグループでは、「コックピット・オブ・ザ・フューチャー」として常時ネット接続による新たなコクピット空間を創り出す技術で2030年に810億ユーロの市場規模、また「サステイナブル・モビリティ」として排ガスの浄化システムなど大気汚染の改善を実現する技術の領域で510億ユーロの市場規模を見込んでいることを紹介した。

「コネクテッド」「自動運転」「ライドシェア」「電動化」といった自動車業界の4つのメガトレンドを紹介するスライド
フォルシアグループでは、「コックピット・オブ・ザ・フューチャー」として常時ネット接続によるコクピット空間を創り出す技術で2030年に810億ユーロの市場規模、また「サステイナブル・モビリティ」として排ガスの浄化システムなど大気汚染の改善を実現する技術の領域で510億ユーロの市場規模を見込む

 川端氏は「フォルシアは、インテリア、シーティング、クリーンモビリティの3つビジネスを柱に2兆円前後のビジネスを行なっており、クラリオンは第4事業部として加わることになりました」と、現在フォルシアでは「インテリア」領域でグローバルトップシェア、「シーティング」領域としてとシートの骨組みを提供する事業としてトップシェア、完成品として第3位のシェア、「クリーンモビリティ」領域ではトップシェアを持っていることを紹介した。

 川端氏は「第4の事業部となるフォルシア クラリオン エレクトロニクスは、規模としてはまだまだ生まれたての小さなグループですが、私どもはこれを育てていき、他の事業部に匹敵する規模に持っていきたい」との意気込みを話した。

フォルシアの事業領域とフォルシア クラリオン エレクトロニクスの位置付け

 新たな事業部では、クルマとドライバーが接するユーザーインターフェースを持つコクピット空間を1つの事業領域として捉えて、フォルシアのインテリアやシートなどハードウェア技術とクラリオンのエレクトロニクス技術やソフトウェア技術を融合して、新たなユーザーエクスペリエンスの提供を目指していくという。

フォルシア クラリオン エレクトロニクスの概要

 フォルシア クラリオン エレクトロニクスで取り組むことについて、川端氏は「クラリオンはこれまでナビゲーションを中心としたディスプレイ系のユーザーインターフェースを提供してきました。一方、フォルシアはシートやエアコンの調節、窓の上げ下げといったインテリアのユーザーインターフェースを持っており、これらを統合するといったことを考えています」と、この融合によりエンドユーザーに独自のコクピット体験の提供を目指すという。

 さらに、川端氏は「インテリジェントなコクピット体験を提供していきたいということで、人工知能をはじめとするさまざまなソフトウェア技術が入ることにより、ドライバーの状況や路面の状況を推測しながらそれに合わせてクルマの環境を変えていく、そういったことを実現させていきたい」との考えを示した。

 将来に向けて、川端氏は「クラリオンはエレクトロニクス技術やソフトウェア技術を持っており、フォルシアは金物を始めとするハードウェアを持っております。ハードウェア技術とソフトウェア技術を統合して、大きなビジネスを刈り取っていきたい」との意気込みを話した。

コクピット空間を1つの事業領域と捉え、フォルシアによるインテリアやシートなどのハードウェア技術、フォルシア クラリオン エレクトロニクスによるエレクトロニクスとソフトウェア技術の融合を目指す

クラリオンとフォルシアの技術領域を組み合わせて新たなコクピット体験を提供する技術

 会場では、国内初公開となる「自動遠隔出庫(長距離呼び寄せ)システム」のデモンストレーションのほか、クラリオンが開発を進めているクラウド技術を活用した自動音場環境最適化システム「Connected Premium Sound Technologies」、インテリア部材を振動させて音を再生するエキサイターとFDS(Full Digital Sound)を融合させた「3D-Pure Sound Surface System」のほか、フォルシアの最先端技術などが披露された。

国内初公開となる「自動遠隔出庫(長距離呼び寄せ)システム」のデモンストレーション

 3D-Pure Sound Surface Systemは、内装部材を振動させて音を再生するエキサイターとFDS(Full Digital Sound)を融合させたオーディオシステム。サブウーファーといった重量物を採用することで実現するオーディオシステムを小型軽量なエキサイターに置換することで、クルマの軽量化などを目指した提案となる。

内装部材を振動させて音を再生するエキサイターと、8cmミッドスピーカー使用するFDS(Full Digital Sound)を組み合わせた「3D-Pure Sound Surface System」を説明するパネル
「3D-Pure Sound Surface System」のデモ車両
エキサイターの例
ウーファーなど重量物をエキサイターに置き換えることで、車両の軽量化につなげる

 Connected Premium Sound Technologiesは、カメラで撮影した車内の様子をクラウドで画像処理。乗員の人数を識別して乗員環境に応じた車室内の音場を自動的に最適化するとともに、運転手の好みのプレイリストを再生するなどの機能を持つ。将来的にはオーディオのみならず、乗員の状態に合わせたエアコンやシート調節などへの活用にも応用できるという。

乗員をカメラで撮影してその画像をクラウドで処理、ドライバーに好みの音楽を提供することや乗員の人数に合わせた音場設定を自動で行なう自動音場環境最適化システム「Connected Premium Sound Technologies」
ドライバーや乗員の好みに合わせたエアコン調節やシートポジション調整などにも応用できる技術となる

 公開された技術は、いずれもクラリオンとフォルシアそれぞれの技術領域を組み合わせることで新しい提案となる技術であると感じた。

ナビゲーション、音声認識、 コネクテッドサービスなどを統合したAndroidベースのシステム「Voice-Activated Cockpit」
量産向けネットワーク「Smart Access」とスマートリモコン「Nature Remo」を連携させたHOME IoT。夏の日の帰宅前など、クルマの中から音声でエアコン操作可能にする

フォルシアクラリオンで取り組む新たな技術の方向性

クラリオン 執行役員 木村敏也氏

 説明会に登壇した執行役員の木村氏からは、フォルシアクラリオンで取り組むものとして、より直感的で快適なサウンドを提供する技術「Immersive Sound Experience」、高度運転支援・自動運転技術「Advanced Driving Assistance Systems」、ドライバーの快適性を追求するパーソナライズ技術「Enhanced Comfort and Wellness」、自動運転時代に向けた車室内HMI技術「Intuitive User Experience」といった方向性が示された。

より直感的で快適なサウンドを提供する技術「Immersive Sound Experience」、高度運転支援・自動運転技術「Advanced Driving Assistance Systems」、ドライバーの快適性を追求するパーソナライズ技術「Enhanced Comfort and Wellness」、自動運転次代に向けた車室内HMI技術「Intuitive User Experience」といった、フォルシアクラリオンとして取り組む技術の方向性

 Immersive Sound Experienceについて、木村氏は「クラリオンは映像とサウンドを磨いてビジネスを展開してきました。最近ではアクティブノイズキャンセル技術を持つCREOをM&Aするなど、お客さまにはさらにピュアでノイズのないサウンドを提供していくところを進化させていきたい」と話した。

 また、Enhanced Comfort and Wellnessについて、木村氏は「乗るほどに健康になっていくそういうコクピットを提供していきたい、そのために人間の特性を検出するセンサーで、血流などを検出して、健康状態をチェックする、それによってシートのポジションを変えたり、音楽や雰囲気を変えたり自動的にコントロールするような技術開発に着手しております」と説明した。

 さらに、Intuitive User Experienceについて「ヒューマンマシンインターフェース(HMI)は、クルマの中のモニターが大型化しております。特に中国市場では12.3インチのディスプレイを2枚重ねにしたものが登場したり、インパネの左から右までディスプレイが埋め込まれる時代が来ております。そういったときに、どのようにいろいろな情報を提供していくのか、欲しいときに欲しい情報を提供するのが基本ですが、タイムリーにわかりやすく情報提供するHMIが求められております。そういった技術開発をフォルシアグループの一員としてやっていく所存です」との考えを示した。

 木村氏は「特にこの領域では、フォルシアのインテリア部門がスイッチデバイスに関する知見を持っております、われわれはスイッチ操作の信号を受けて画面制御していく、エレクトロニクス技術やソフトウェア技術に長けていますので、そういうところを組み合わせて、他社にできないようなHMIを提案していきたい」と、今後の方向性を語った。