希代のマーケター、森岡毅氏。30代後半で転じたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では、旧態依然だった組織で変革の必要性を説いた。沖縄に観光地としての大きな可能性があることを10年以上前に見出し、貫いてきた。そして2025年、沖縄パーク「ジャングリア」の開業が迫る。『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(中山玲子著、日経BP)から一部を抜粋してお届けする(本文敬称略)。

 嵐が来たようだった――。

 2001年の開業時からUSJにいたある社員は、森岡が転職してきたときのことをこう振り返る。森岡はこの頃、37歳。若さも相まって、今以上にエネルギーに満ちあふれていた。

 あまりに元気が良すぎた。これでは周りの社員との摩擦が大き過ぎて、森岡の良さを引き出せない。調整役の財務担当者を新たに採用しようと入社してきたのが、現刀CFO(最高財務責任者)の立見信之だ。

 「事前に聞いた森岡の評判はネガティブだったから、とんでもない人なんだろうと思っていた。しかし、彼と会ったとき、いきなり『僕はモンハン(モンスターハンター)のイベントがやりたい』と勢いよく話し出して。面白いなと思ったのが最初の出会い」

森岡氏と刀の強さに迫った新刊『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(日経BP)
森岡氏と刀の強さに迫った新刊『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(日経BP)

チャレンジする大切さ

 「ユニバーサル」という外資の看板を掲げたユー・エス・ジェイは、外からのイメージとは裏腹に、実態は旧態依然とした伝統的な日本企業のようだった。森岡は結果にこだわらず、チャレンジすることを推奨する表彰制度を設け、変化を望まない社員に、失敗を恐れずバットを振ることの大切さを伝えた。

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