大腸内視鏡検査を受けたところ、大腸に「憩室(けいしつ)」が見つかった酒ジャーナリストの葉石かおりさん。大腸の壁が外側に袋状にふくらんだ憩室はアルコールが主因と聞き、同様にアルコールと関係があるといわれている「大腸がん」が気になります。大腸疾患の診断・治療に詳しい、東京都立多摩北部医療センター副院長の小泉浩一氏に、飲酒で大腸がんのリスクがどれぐらい上がるのか、予防のためにできることはあるのかなど、話を伺いました。

>前回: 内視鏡検査で大腸憩室が見つかった酒好き 断酒は必須か
お酒と大腸がんは関係があるといわれている。それでは、どれぐらいの飲酒量だと大腸がんのリスクが上がるのだろうか(写真=Paylessimages/stock.adobe.com)
お酒と大腸がんは関係があるといわれている。それでは、どれぐらいの飲酒量だと大腸がんのリスクが上がるのだろうか(写真=Paylessimages/stock.adobe.com)

 大腸にできる「憩室(けいしつ)」の主因はアルコールである。

 前回、ポリープよりもメジャーではないが、大腸にできる袋状の憩室とアルコールの関係について、大腸疾患の診断・治療に詳しい、東京都立多摩北部医療センター副院長の小泉浩一氏に解説してもらった。

 憩室が炎症を起こし、悪化すると100mL単位での出血を起こすという。筆者が大腸内視鏡検査で見つかった憩室はたった1つだが、話を聞くほど、「憩室持ち」の身としては、酒の入ったグラスを持つ手が止まるほどの恐怖を覚えた。

 ところで、大腸といえば、酒飲みが気になるのは「大腸がん」ではないだろうか? 実はつい最近、知人が大腸がんで入院し、手術を受けたばかりだ。

 彼女は60歳を超えているが、30代の若者に負けない、いや、下手をしたら若者を上回るほどの飲みっぷり。店でさんざん飲んだ後、自宅で朝まで飲み直すのが日常という、まさに「酒豪」だった。

 しかし今夏、下血の症状が現れ病院を受診。大腸がんであることが判明し、即入院、手術となった。

 その話を人づてに聞いたとき、「やっぱり……」と思うほど、はた目から見ても危険な飲み方だった。そしてまた、大腸がんと酒の関係について改めて知りたいと思った。

 そこで前回に引き続き、東京都立多摩北部医療センター副院長の小泉浩一氏に、大腸がんについて話を伺っていこう。

飲酒により大腸がんのリスクは1.2倍程度に

 先生、大腸と大腸がんについて、まずは基本的なことから教えてください。

 「大腸は、小腸から続く消化管で、盲腸から肛門までの約1.5メートルの部分を指します。盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸で構成され、大腸がんはこれらの部位に発生するがんのことです。大腸がんの初期には自覚症状がなく、進行するにしたがって血便、残便感・便意頻回といった便通異常などの症状を伴い、最後には腸閉塞となって、腹痛、腹部膨満・嘔吐などが現れます。症状はゆっくり少しずつ出現するので、腸閉塞になって初めて受診される方も少なくありません」(小泉氏)

大腸の構造
大腸の構造
(図=matsukiyo/stock.adobe.com)

 結腸にできるのが結腸がん、直腸にできるのが直腸がん、それらを合わせて大腸がんと呼ぶという。

 それで、あの……、やはり大腸がんの原因はアルコールなのでしょうか……?

 「ヨーロッパで25歳から70歳までの34.7万人を対象とした研究では、男性は純アルコールに換算して1日当たり24g、女性は12g以上の多量飲酒群と、それ以下しか飲まない少量または無飲酒群を比べると、S状結腸がんのリスクは1.09倍、直腸がん1.23倍、双方合わせた大腸がんでは1.15倍高まると報告されています(*1)。また、欧米6カ国3万人を対象とした研究でも、無飲酒群と超多量飲酒群を比較した場合、大腸がんの罹患リスクは1.25倍という結果が出ています(*2)」(小泉氏)

*1 BMC Med. 2014 Oct 10;12:168.
*2 Int J Cancer. 2020 Feb 1;146(3):861-873.
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