2024/04/09

堂場瞬一のスポーツ小説は面白い。

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「チームⅡ」(堂場瞬一)は、「チーム」の続編。今回は七年後の天才ランナー山城悟が主人公。

<マラソン日本記録を持ち「陸上界の至宝」といわれる山城悟は、怪我と所属チームの解散危機で、引退の瀬戸際にいた。傲慢な山城に、かつて箱根駅伝を学連選抜チームとして共に走った仲間がサポートを申し出るが、彼は再起できるのか? 熱き男たちの友情、葛藤、そして手に汗握る駅伝レースの行方は?>

かつて学連選抜で走った浦が今度は監督として采配をふるう姿と、絶対走らないと言っていた実業団駅伝を走ることにした山城のレース模様が前後して描かれているが、いつもながら、臨場感があって読ませる。ただ、山城が今までの態度を軟化させていくプロセスは、ご都合主義的に感じられる。それでも、やはり楽しめる小説だ。

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「黄金の時」

<売れっ子作家の本谷要は、作家になることに反対し、音信不通となった商社マンの父、総一郎の訃報を聞き、心ならずも、遺品の整理をすることになった。要はその中に一枚の写真をみつける。そこには南海ホークスの村上雅則が日本初のメジャーリーガーとなる一年前、1963年にマイナーリーグ・サクラメント・ゴールドハンターで野球をする若き日の父があった――。

仕事一筋で厳格だった父は若き頃、自らと同じように祖父に反抗し、異国の地で新たな野球の魅力に取りつかれていたのだった>

現在(要)と、過去(総一郎)を行ったりきたりする構成で、父親がマイナーリーグの一員としてどう生きたかを描きながら、結局自分も父と同じ生き方をしてきたのだと悟る父と子の物語。ラスト、物語は要のこんな思いで閉じられる。

「もしかしたら、こうやってカリフォルニアを走り回ったのが、私にとっての黄金時代の始まりかもしれない。どんな形になるかは分からないが、父を追い越すという新しい目標を手に入れたのだから」

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「ルール」

クロスカントリーの金メダリストにドーピングの疑いが? アスリートの心の葛藤とその隙間に入り込んでくるドーピングへの誘惑の是非を問う作品。だが、「黄金の時」もそうだが、これだけの長さが必要かはなはだ疑問。堂場さんの冴えが見られない凡作。

<クロスカントリースキー選手・竜神真人が現役復帰した。二大会連続で五輪金メダルを獲得、国民的英雄と祟められ引退した竜神。彼の評伝執筆に取り組む新聞記者で旧友の杉本直樹は、復帰の真意を探って取材を重ねるうち、ある疑念を抱く。竜神は“致命的なルール違反”を犯したのではないか―。記者の使命と友情の狭間で、杉本は真実に迫るが…。>