偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

「豊かさの精神病理」


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「豊かさの精神病理」(大平健)再読。

大平さんは本書で、過去には精神病として通院してこなかった「新しい症例」に気づき、その時代背景を探ろうとする。「モノ」にあふれた時代、「モノ」語りの人が人と人との葛藤から逃れようとしているところから発生しているのではという仮説から出発し、診断するのではなく、患者がそのことに気づくよう仕向けて行く。ここには最新の精神科事情が語られている。

<燦然と輝くモノが溢れる現代。軽い精神的不調を訴えて精神科を訪れる患者のなかに、人間関係の葛藤を、モノとの関係に巧みに置き換えている人たちがいる。ブランド品にアイデンティティを求め、マネキンのような恋人に囲まれ、人の心を味わうために高価な料理を食べに行く。豊かな社会特有の病像を描き、それを生む日本の社会を考察する>

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