偏読老人の読書ノート

すぐ忘れるので、忘れても良いようにメモ代わりのブログです。

「八月のマルクス」と「正義をふりかざす君へ」

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「八月のマルクス」(新野剛志)は江戸川乱歩賞受賞作。ハードボイルドタッチのミステリ小説でどうしてこのタイトルになったかは謎が解明される後半で明らかになる。この人の本は「罰」に次いで二作目だが、明らかにこちらの方がプロットも良く練られていて面白かった。「芸能界を罠によって去らざるをえなかった男の屈折が滲み、バー『ホメロス』」の描写など秀逸である」(大沢在昌)、「輻輳した人間関係の中での物語の展開は、読ませる」(北方謙三)という選評に納得。

<レイプ・スキャンダルで引退したお笑い芸人・笠原雄二。今は孤独に生きる彼を、元相方の立川誠が5年ぶりに訪ねてくる。だが直後、立川は失踪、かつてスキャンダルを書き立てた記者が殺された。いわれなき殺人容疑を晴らすため、笠原は自分の過去に立ち向かう。TV・芸能界を舞台に描く、第45回江戸川乱歩賞受賞作。>

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「正義をふりかざす君へ」(真保裕一)はひねりすぎの感がないでもないが、良く練られたプロットで読者の推理を見事に裏切ってくれる。すべてが明るみに出た後の後味悪さは残るが、正義の裏に潜む人の心の闇を見事に描いてみせたと思う。正義をふりかざす過熱気味のマスコミ報道へ警鐘を鳴らす物語でもある。

<元妻の依頼で、不破勝彦は故郷・棚尾市へ久々に戻った。不倫の証拠写真を撮った者を調べてほしいという。不破はかつて義父のホテル業を手伝うために地元紙・信央日報を退職した。しかし食中毒事件で義父は失脚、妻との不仲もあって、彼は故郷から逃げ出したのだ。七年ぶりに戻った不破は、ホテルが古巣の信央グループに買収されていたことを知る。そして、何者かが彼を襲撃する!>


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