晴読雨読の日々
「真夜中のマーチ」奥田英朗
<自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指す!が…!?直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。>
「噂の女」(奥田英朗)は著者出身地の岐阜弁が秀逸。タイトルの通り、噂が絶えない糸井美幸にまつわるオムニバス形式の物語。各章主人公は変わるものの噂にのぼる女は糸井美幸で、男に好かれそうな容姿から様々な噂が飛び交う。交際した男が次々と泥酔した後に溺死していることからも保険金目当てや、財産目当てなどの良くない噂ばかり。糸井美幸は交際を重ねるごとに金を手にし遂には蒸発してしまう。彼女は一体何者だったのか、噂は本当だったのか、謎のままに物語は終わってしまうものの、不完全燃焼感はない。
<「侮(あなど)ったら、それが恐ろしい女で」。高校までは、ごく地味。短大時代に潜在能力を開花させる。手練手管と肉体を使い、事務員を振り出しに玉の輿婚をなしとげ、高級クラブのママにまでのし上がった、糸井美幸。彼女の道行きにはいつも黒い噂がつきまとい――。その街では毎夜、男女の愛と欲望が渦巻いていた。ダークネスと悲哀、笑いが弾ける、ノンストップ・エンタテインメント!>
「密告」(真保裕一)は、過去に嫉妬から先輩を「密告」した過去を持つ主人公が、今度は「密告者」と疑われ、その嫌疑を晴らしていく過程を描いた作品。
<警察内部の闇を照らし出すサスペンス 川崎中央署生活安全総務係の萱野(かやの)は、ある日、上司の矢木沢に面罵された。競技射撃で五輪出場権を懸けて争った選手時代の確執から、矢木沢の接待疑惑を密告したと思われたのだ。自らの汚名を晴らすため、萱野は真の密告者を捜す!巨大な日本の警察組織内部に潜む闇を、深く綿密に描き切った迫真のサスペンス。>
犯人はすぐそばにいたというミステリの本道を行く作品だ。
「鬼灯」(鳴海章)は、誘拐殺人犯の内面を微細に描いていて読ませる。この人は、世間からはみでた人物の造形が巧みだ。
<四国松山で発生した連続幼女誘拐殺人。奔走する警察、報道陣をよそに、犯人は再び刃を振りかざす。顔のない殺人者の内に広がる無限の闇に挑む新聞記者・上沢。なぜ、彼は少女を殺すのか。正体をつかみかけたとき、その兇刃は上沢の身辺にもおよびはじめる――。逃れられない人間の業を浮き彫りにする、戦慄のサイコサスペンス。>
よくできた作品で、面白くて夢中で読んだ。