官能記
昨日読んだのは「官能記」(芦原すなお)
タイトルから想像するドロドロしたエロスからはほど遠く、淡々とした女の半生記もの。主人公が初めて書いた小説が賞を受賞するのだが、そのときの選評がぴたりと当てはまる。
<いろいろ破綻はあるよ。ちょっとご都合主義かな、と思われるところもあるけど、それが気にならないんだ。これは語り口のテンポのよさにのせられちゃう、ってところもあるんだろうね。(中略) 読後感がね、いいんだな。伝統的花柳小説のね、こうやるせないような切ないような気分もいいんだけど、この作品は、なんていうか、そうだよな、人間ってそういうもんだよな、ってしみじみ納得するような気分になってさ、そして、人間というものを、その狡さや欲望も含めた上で、捨てたもんじゃないなって気分にさせる。>
やはり、私はこの本のように最後はハッピーエンドで終わる小説が、好き、だ。
<1950年――昭和25年、11月。5歳の女の子が50歳くらいの男に手を引かれて、遠い親戚の家にいこうとしていた。その刹那、女の子の心の中に、その年齢にはいささか似つかわしくない、ある「思い」が地下水のように静かに湧きだしてきた。「わたしはこの世界に何の借りもない」と――。天涯孤独の身に生まれた“みーこ”が綴る、自由奔放に生きた波瀾万丈な女の一代記!>
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