母の日に送ったことば

今日の書き手:古越 幸太(ぼくら社副社長)

 

今週のお題「お母さん2014」にあてて。 

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5月11日は「母の日」でした。

 

世のお母さま方におかれましては、お子さまからカーネーションや、ハンカチ、謎のロールケーキやカステラを受け取られましたでしょうか。

 

Facebookをつらつら眺めていますと、時流に乗る商品を扱うECショップオーナーの「いやー今年もいっちょ修羅場乗り越えたわー」感に満ちた投稿が散見されます。おつかれさまでした。

 

平成28年より8月11日を「山の日」という国民の祝日に制定する案が、衆院を通過し参院審議待ちだそうですね。母の日は毎年5月の第2日曜日。祝日のイメージがありますが、実のところ法律上の祝日ではありません。けれど、どことなく思い入れがある一日です。

 

 

僕も三十路を超える身ですから、さすがに母の日には贈りものをと考えました。

 

何かといえばネットで済ませてしまいますが、今年はたまたま百貨店に出かけた時に母の日に良さそうなセットを見かけました。

 

女性向けに品の良いハンドクリームや石鹸、アロマなどを売っているお店で、mother's dayと書かれたPOPがなければ通り過ぎていたでしょうが、箱・中身・リボンと一式揃った姿はプレゼントを決められない男には望ましく足を止めてまじまじ。

 

「いかがされますか?」

 

品の良い女性に中身を説明され、結局それがどれくらいに素敵なのかは分からないのですが、店員さんの「良いものですよ」という言葉に包装を頼みました。

 

レジの前で財布を出そうと鞄に手をかけると、一言。

 

「こちらにメッセージをお願いできますか?」

 

想像していなかった言葉に聞き返すと、曰く商品にはデフォルトでメッセージカードが備わっており、直筆で送り主がメッセージを書き込めるそうです。

 

ここ数年ネットでポチポチやって送っていたのでメッセージカードなんて洒落た小道具、とんと忘れていました。

 

はたと困っていると店員さんが助け舟。

 

「お体、お大事にしてください」みたいなメッセージはどうですか?

 

お体……ご自愛ください。ですかね。

 

「あ、いや、そこはお体、お大事にしてください」の方が。

 

お体……お大事にしてください。

 

サインペンで会話を辿り、店員さんに戻します。

 

「ありがとうございます。もう少しで包装終わりますのでお声掛けしますね。」

 

 

子どもの頃を思い返すと、母の日にはカーネーションの一輪挿しやどうにも生地の薄いハンカチをあげていました。

 

お小遣いの100円玉を貯めて、こんなので喜ぶのかなってスーパーの安い商品の中から1時間、2時間迷って。今思えば値段ばればれですね。折り紙やノートを一枚やぶいて普段はぜったいに言わないようなお礼の言葉を添えて。

 

受け取るやいなや花を大切そうに生けたり、手紙を読んでは普段は空けない戸棚にしまったり。目の前でそんなことをされると気恥ずかしいから、しばらく口を聞かずに自分の部屋にこもって。そんな日の夕ごはんは決まって特別においしくて。

 

あの頃は、足りない何かを手紙にかえて渡していたのかもしれません。

 

 

当日、母から電話がありました。

 

「めずらしいわね」

 

何が?

 

「母の日の午前中指定で、デパートで買うようなものを送ってくれるなんて。」

 

そうかね。

 

「毎年、慌ててネットで注文したであろう品物が、当日の夜とかに届くから。」

 

ごめん。

 

「配送日が4月27日の月曜日になっててびっくりして。」

 

え?

 

「両親へ1週間前から考えて贈りものができるくらいには、きっと生活が充実しているんでしょう。」

 

たまには遊びに来なさい、といういつもの声を聞いてiPhoneを枕へ放ります。

 

夏の休みには帰省します。そんな言葉を、綴ればよかったかもしれません。

 

慣れた一人の夕食も時に味気ないものです。

  

Written by :古越 幸太 (記事一覧)

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