柳美里の今日のできごと

16歳息子は、寝ても覚めても指揮者の真似をしてるんです。

原町の駅通りを車で走っているとき、自転車を漕ぎながら右手でタクトを振っている息子と擦れ違いましたが、「危ない！」と声を掛けて転倒でもされたら一大事なので（昨年５月に自転車の転倒で左肩を骨折）、帰宅してから叱りました。
とにかく、テレビを見ていても、ドラマやＣＭで音楽が流れようものなら、食事中であろうが何であろうが、両手で指揮をする。

今日、枕元にこんなものがありました。

手作りの指揮棒……

イヤホンで音楽聴きながら、眠るまで思う存分指揮をしているんでしょう、仰向けで――。

アホだ。

アホだけど、面白いから、今度、東京に出るときにヤマハに行って、指揮棒を買ってやろう。

わたしの散歩コースには、この階段があり、トレーニングにはちょうどいいんですよ。

御本陣山です。

わたしがよく散歩をする、南相馬市原町区にある御本陣山です。

原ノ町駅から歩いて10分ちょっとの場所にあります。
水芭蕉の時期が過ぎて、梅の時期が過ぎて、桜の時期が過ぎて、いまは、緑――、緑のトンネルを歩いています。

日向は暑いんですが、日陰は涼しいというか、一枚羽織らないと寒いくらいです。

夜は、ストーブをつける日もあります。

ここは、東北なんだなぁ。

わたしは、髪をまだ長くしているんです。

おへそのあたりまではありますね。

夏場は、汗で髪の毛が首に貼り付くと気持ち悪いので、バレッタかかんざしでアップにします。

しかし、昨年10月に左手首を骨折してからというもの、髪をうまくまとめられない……

今日も髪の毛が飛び出してしまった。

バッサリ切るのもアリかなぁ……

昨日は、日立木ナンバーの白い車が前を走っている夢をみて、一日中首を傾げていたんですが、今日は、夢のなかでバイカル湖をずっと眺めていました。

真っ青で、大きくて、海みたいな湖……

視界におさめきれないほど大きくて、真ん中がコンタクトレンズみたいに盛り上がって見える。

波は、全くない。

夕暮れが近づいているのか、空は明るくない。

目覚めて、「バイカル湖」と声に出し、電子辞書で調べました。

バイカル湖について、ロシアにあるということしか知らなかったから。

世界遺産なんですね。

「世界最深の湖として知られ、最大水深は1620m」

行ってみたい、バイカル湖！

しかし、毎日、不可思議な夢ばかりみて、わたしの海馬はどうなっちゃってるんだろう？

昨日は、「日立木」というナンバープレートの車がすぐ前を走っている夢をみた。
「日立木」という駅は常磐線にあるが、そんなプレートはない。

薄汚れた白い車だった。
曇り空だった。
他に車は走っていなかった。
そんなにスピードは出ていなかった。
何故、日立木だったんだろう、と釈然とせず、一日中、日立木、日立木、と呟いていた。

今日の夢は、ひどかった。
青いバケツのなかに取り出したばかりの臓器が入っている。
それをわたしは素手で掴み取り、エプロンをしめるみたいな手つきで自分の腹に装着していく――。

目覚めると、相馬農業高校野球部の部員が校庭を走る掛け声が聞こえた。

こんな悪夢を何日も続けてみたら、発狂するかもしれない、と思う土曜日の朝――。

高校２年生(16歳)の息子です。
洋服は、店頭には大きいサイズが置いていないので、インターネットで４ＸＬ～６ＸＬを取り寄せています。

高校の制服は、僅か１年で着られなくなり、いま、２つ上のサイズを取り寄せてもらっています。

これで持つかな？

卒業まであと１年と９ヵ月……

老眼がすすんで、爪切りが怖い。
だいたいこれくらいかな、という感覚で切っていると、深爪してしまう。

痛くて、しばらく右手の親指を使えない。

日々、老いを実感する。

我が家は、まぁ、ボロ家(築60年のトタン家)なんですが、気の持ちようで、気持ちはいくらでも変化する、とわたしは思うんですよ。

たとえば、流し。
流しの下の棚木は腐って剥がれています。

流しはいつもぴかぴかに磨いています。そして、いまの季節、鎌倉の庭から掘り返してきたモスローズが毎朝咲くので、一輪挿しに活けて、流しの周りを飾っています。

つまり、醜いものは見ない。
美しいものに顔を向けつづける。
それが、気持ちを沈ませない秘訣です。

窓の外の緑は、去年の夏、除染が終わった後に種を蒔いたクローバーとダイカンドラです。

なかなかきれいです。

ぶれてうまく撮れなかった。

昨夜は30分しか寝てない。

眠い。

今夜は早く寝よう。

明日は、臨時災害放送局「南相馬ひばりエフエム」「柳美里のふたりとひとり」の収録です。