断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

今更恥ずかしいが「連結」の素人講義

2016-09-25 22:21:37 | MMT & SFC

※図を挿入しようとしたんだけれど


うまくいかない。。。。。ので、


図付きはPDFにして


アップしました。。。。いや


ブログをPDFって、あほ丸出しって感じだが、


なんせ情弱なもんでうまくできない。(齢を取るというのは


こういうことです。)


で、図抜きのブログは以下です。


図のついたPDFは、、


 


https://drive.google.com/file/d/0Bz2V1zKzg0azdTlCclhacEE5RUE/view


 


です。。。。


 


以下ブログ


 


 


ツイッターやって他の人の意見を見ていると


なんか、やっぱり簿記というのか会計の知識について


もう少し前提を共有したほうがいいんじゃないかな、


という気がしたので、


MMTを離れて、簡単に企業会計における


「連結」consolidation(経済学では


「統合」と訳されることも多いようだが)の


説明をすることにしました。


今回の内容は、日商その他の簿記検定で扱われているテーマと一緒なので


知っている人は全く問題ないだろうし


別に新しい知見を得られるということはまったくありません。


ただ、どうもツイッターの人たちが必ずしも


みな知識を共有しているわけではないので、


僭越ながら、おいらはこういう意味で「連結」という言葉を


(とりわけ「(単純)合算」と違う意味で)


使っていますよ、ということの紹介である。


もちろん、おいらは簿記の先生ではない。


だからこんなやつの素人講義なんか読む必要はない、


そんなことやる暇があったら、自分で適当な教科書で


勉強するわい、とお考えのそこのアナタ!あなたの


考えていることは100%正しいので、そう思うんでしたら


まず実行しましょう!この素人講義は


そうは思っているけれど実行するとなるとなかなかな、、、


というおいら同様のぐうたら人向けのものなので


真面目な方はご自分できちんとした権威ある教科書を使うなりなんなり


勉強してください。


 


なお、「連結」という言葉自体は


何も簿記の専用用語ではない。日常生活のいろいろな場面で使うし


仮に簿記会計の話をしているときに


そのような「日常的な」言葉使いをする人がいたからと言って


それだけで、無意味だとか間違っているとか


そういうことをいっているわけではないです。専門家同士


(なにも会計士や税理士でなくても、


会社の担当者レベルでも)の話や学校の簿記のテストでは


0点にしかならない意味で言葉を使っていたとしても


だからと言って無意味とか無価値だといっているわけではないです。


ただ、話をするうえで、「私がこの言葉を使うときには


大概こういう意味で使っているんですよ」というレベルで


言葉の意味は共有していた方がいいだろう、というだけのこと。


でないと、全く無駄なやり取りをすることになりかねないからね。


 


 


とはいっても、専門的な話を網羅的に説明しようなんぞという


野心的な目的はない。


かいつまんで、一番簡単にイメージが出来るような説明に


限定するつもりである。というわけで、


今回の説明は、すべて「100%完全子会社」つまり、


B社がA社の子会社であるとして、B社の資本金(払込済み)はすべて


A社が出資している、というケースである。従って


マイノリティー・インタレスト(「少数株主」などと


訳されることが多いようだが)の話は無視するし、


在外子会社の話題も完全に外す(つまり


A社もB社も同じ国の中)。のれん代の計上や


税効果会計にまつわる一連の複雑な話題も


全部カットする。セグメント情報はもちろん


カット。


そうすると結局やることは


内部取引の相殺と繰延内部利益内部留保利益(以下も
この言葉は全部同じように訂正してくだださい。全くナニ書いてんだか。。。。。)
の控除だけ、


ということになる。実際、MMTの話を理解する上では


これだけで十分だと思われる。


 


さて、本題に入る前に、一つ重要な概念を


説明しておこう。「内部」と「外部」である。


これは簿記を学習する際には、通常は一番最初に


学ぶことじゃないか、と思う。アメリカやイギリスで執筆された


入門レベルのテキストの場合(と言うのは


おいら日本語で日商3級レベルの教科書は


読んだことないので)、


だいたい太郎さん(ジョーンズ氏でもミスタースミスでもなんでもいいが)が


出資して会社をつくる、という話から始まる。で、


この太郎さんは、出資して会社を設立してから


なんにも事業を始める前にいきなり


出資したお金の一部を下ろして、今日の晩御飯(だか


映画鑑賞だか)に使っちゃうんだよね。。。


まあ、そういう変な人が実際いるかどうかはともかくとして、


教科書はこうして


「内部」と「外部」の説明をし始める。


 


太郎さんは、1万ドルを出資してナショナル・太郎・インコーポレイティドを設立する。


ここで早速、次のような仕訳が行われる。


 


現預金 1万ドル / 資本金 1万ドル


 


現時点で、この会社には太郎さん一人しかいないし、


太郎さんは社長にしてオーナーだ。しかし、会社と太郎さんの家計とは


厳密に区別しなければならない。社長として、


唯一の社員として、太郎さんはこの会社の一員であり一部であり、


つまり「内部」の存在であるが、


しかしお金をこの会社に出資するとき、太郎さんは


このお金を外部から会社に注入したことになる。


この場面では


太郎さんは「外部」の存在であり、そして


この会社が太郎さんから資本金を受け取るとき、


会社は「外部」から資金を調達したことになる。


そして太郎さんが今夜の飯のため、100ドルを払い戻しするとき、


お金は会社の「外部」へと出てゆくことになる。


太郎さんの夕ご飯は会社の活動とは関係のない


太郎さんの私的支出と見なされるのだ。だから太郎さんが


お金を持ち出すとき、費目はともかく、


会社の資金が「外部」へと支払われたことになる。たとえ


太郎さんがオーナーであろうと社長であろうと。


 


と、ここまで読んで、「いったい何を当たり前のことを


しつこく書いているんだろう」と思う人も多いでしょう。


(もちろん会社の社長の飯代を会社が


経費として支払うケースは普通にあるけれど、ここではそういう話を


しているわけではない。)


ところが、この自明とも思われる原則が全く


守られていないのが「政府と中央銀行の統合」を主張する人たちの中には


散見される。というか、そもそもこの区別が


まったく分かっていない人による「連結」の図式が


先日もツイッターの中で出てきており、


これはちょっと困ったもんだなあ、、、、という思いがあったから


この一見自明とも思われる話を長々としているのである。


 


ちなみに、この説明は入門レベルの教科書では


定番ともいえるのだけれど、


おいらが日商簿記2級用の受験テキストというのを


最初に見たとき思わず笑ってしまったのは


「内部」と「外部」の説明が


マルクスの貨幣資本循環で説明されていたからである。


「なんとドゥルプラス的な!」というわけだが。。。


(と、まあ、あんまり趣味に走りすぎるのも


なんなので


話を元に戻すが。。。)


 


 


実は簿記会計の学習では


「内部」取引の記帳と「外部」取引の記帳は


厳密に[1]区別されなければならない。


ここで言っている「取引」というのは


実は一般に世間で使われている「取引」という言葉のニュアンスとは


若干違っている。日常言語で「取引」という言葉が使われる場合


多くはここでいる「外部取引」のことしか含んでいない。


簿記会計では、これとは別に「内部取引」と言われるものも


取引に含んでいる。これは


一つの経済主体(企業)の内部での経済的資源のやり取りである。


例えば同じ会社内の同じ敷地内で


倉庫にある材料を生産ラインに乗せると、それだけで


その材料は「材料」(資産)から「仕掛品」(資産)という具合に


科目が変化する。同じ工場の中で


材料の位置を変え、受ける側と渡す側とで


代金のやり取りも行われないことを一般には「取引」とは


言わないと思うが、簿記会計では


これも「取引」として扱い、記帳が必要になる。


だがそうすると、工場内の出来事を


全て仕訳帳に記帳していかなければならないのだろうか。


 


実はこの辺が「内部」会計と「外部」会計の違いである。


「外部会計」と違い、「内部会計」は、極端に言えば


それぞれの企業が好き勝手に行ってよい。


実は簿記検定で言うところの「工業簿記」というのは


多くの場合、「内部会計」の説明である。ただし


日本では特に戦時中に工業生産を合理的に行い


戦争に供されるべき軍事物資を安価に提供させるため


政府が原価計算に関する指針を作成し指導していた経緯があり


それが戦後に1964年(うろ覚えなので、違ったかも)に


大蔵省によっていろいろ検討修正を経て


「原価計算基準」として新たに公表された。


多くの「工業簿記」の教科書は


この指針を基準に書かれているのだが、


だがこれはあくまでも指標であって


この通りに記帳しなければならない、


というような性格のものではない。


 


逆に「外部会計」には、ある程度厳密な


枠がはめられている。ただし急いで付け加えると


「外部会計」だって、好き勝手にやってはいけない、


ということはない。自分たちの必要に応じて


自分たちの要求を満たす会計書類を作成するのは


実は本人たちは意識していなくても


大なり小なりどの企業でもやっていることである。


「外部会計」が問題になるのはそれが


「外部との取引」を記録したものであるから、というよりは、


「制度会計」の基準を満たすものを作成しなければならないからである。


「制度会計」というのはつまり


税法や諸会計基準に定められた会計ルールにのっとり作成される


会計のことである。これは内部会計や任意の外部会計と違って、


好き勝手にやるわけにはいかない。きちんと


税法や会計基準に従って帳票を作成し、


資料を整え、証憑類を保管し、財務諸表を作成しなければならない。


税法や会計基準は、


ルールにのっとっていさえすれば


同じ取引からは、基本的には同じものしか作成されない、という意味で


公平である。まあ実際には、


記帳や計算のルールにはいくつかの選択肢があるケースもあり


こうした選択肢までそろえなければ同じ結論には至らないし


年金債務や資本除却債務のような、将来の見通しについての


判断により、大きな違いが出てくることもある。


しかしそうした場合も、どのような選択肢を選び


どのような仮定を置いたからこうなったのだ、


ということが明確になる、という意味で


複数の企業を比較的「公平」な基準で比較できるし、


課税も「同一ルールに基づいている」という意味で


比較的公平に行うことが出来る。(当たり前だが


あらゆる意味で公平、というわけにはいかない。)


 


「工業簿記」あるいは「管理会計」(最近は


「原価計算基準」のくびきを避ける為か


「管理会計」を冠した書物の方が


多く出版されているような気がする)


といったものもあるものの、


そうしたことが特に書かれていなければ


「簿記会計」とは普通は


外部との取引をルールに従ってまとめる行為を指すのが


普通である。「税務会計」にせよ「財務会計」にせよ


基本的には「外部取引」をルールに従ってまとめた書類を


作成し、必要な関係者に提出し、あるいは公表する。


内部取引を残す必要はないし公表することには


(セグメント情報というようなものでもない限り)


意味がない。


 


 


 


さて、「内部」と「外部」の説明をしたところで、


改めて「連結」を定義しよう。ただし、


ここでの定義はマイノリティ・インタレスト(少数株主)も


含むような包括的な話ではなく、あくまでも


100%完全子会社と親会社との連結に限っている。


さて、連結というのは要するに


 


複数の経済主体を一つの経済主体と見立て、


その一つにまとめられた経済主体の


外部取引に関する


会計書類(財務諸表)を作成すること、


 


となる。つまり、複数の経済主体を


一つの経済主体と見立てれば、


当然、それぞれの経済主体相互の取引は


「内部取引」ということになる。


だから、この「内部取引」を如何にして


適切に処理するのか、がポイントになる。


だから、まあ、こういう言い方をしてはなんだが、


以前に、ツイッターで一生懸命


政府と日銀の取引を「両建て」で説明してくれた人がいたが


まあご本人の鼻息はずいぶん荒かったのだが、


あれはテスト的には0点である――あれではそもそも


「連結」になっていない。内部取引を


相殺消去することを「連結」というのだから。


 


さて、ではなぜそのような「連結」が


企業会計において必要とされるのだろうか。


単純合算して両建てのままでは


何が問題になるのだろうか。


 


というわけで、やっと連結の本題に入るのか、、、


と、思っているそこのアナタ。


そんな甘い話じゃないです。まだまだ本題には入れません。


 


本題に入る前に、


今回の連結の説明で扱うのは


「損益計算書(profit and loss account または


Income statement)」および「貸借対照表


(balance sheet またはposition statement)」


だけである。本当は


企業会計において公表しなければならない財務諸表には


これに加えて製造業であれば


「製造原価報告書」があるが、これは


損益計算書に含んで説明する。またほかにも


「株主資本等変動報告書」もあるが


これは貸借対照表の純資産の部が


前期末と比べどう変化したかを記したものなので


割愛する。さらに近年加わったものに


「キャッシュフロー報告書」があるが、


これは、実際には変動貸借対照表を並べ替えただけのものなので


今回は割愛する。この点を簡単に説明しとく。


知ってのとおり、貸借対照表を区分けすると


 


貨幣性資産 + 償却資産 - 償却累計 + その他資産


= 負債 + 払込資本金 + 繰越利益剰余金


 


となる。変動貸借対照表になると


 


⊿貨幣性資産 + 有形固定資産その他投資 - 当期償却費 + ⊿その他資産


= ⊿負債 + ⊿払込資本金 + 当期純利益


 


となる。ここで「有形固定資産その他投資」というのは固定資本設備などへの投資、


「当期償却費」とは原価償却費その他償却費のこと、


「当期純利益」は法人税・配当金・経営者報酬等差引後の金額である。これを並べ替えれば


 


⊿貨幣性資産 = 当期純利益 + 当期償却費 – 有形固定資産その他投資 - ⊿その他資産


+ ⊿負債 + ⊿払込資本金


 


となる。これがつまりキャッシュフロー報告書に示されている内容である。


(もちろん、現物はもっと事細かであるが。例えば、


通常はいきなり「当期純利益」が登場するのではなく、


営業利益(本業の利益)が示され、


資金調達に関わる費用(金利など)は別建てされる。)


要するに、キャッシュフロー報告書というのは、今一定の


利益が出ているとき、貨幣性資産残高がそれに見合って増加していなければ


それ以外の資産が増加しているか、負債が減少しているか、


投資が行われたか、貨幣支出を伴わない費用が発生したか、、、


なので、それを情報として整理したものである。[2]


キャッシュフロー報告書というものを


資金繰り表の様に実際の資金の受払データを中心に


作成しているものと思っている人もいるかもしれないが、


実際にはそのような「直接法」を採用している会社はほとんどなく


キャッシュフロー表というのは上記のような「間接法」で


作成するのが普通である。多くの投資家の立場からすれば


企業が「お金」をどのように使っているのかよりは


利益と貨幣性資産の増加の差額がなぜ生じたのかに関する


情報の方がはるかに重要だからである。


(「お金=貨幣性資産」をどのように使っているかは


財務諸表を分析的に使おうという投資家のような人にとっては


実はあんまり意味はない。というのは


企業は買い物をするときに手形等の負債を


発行できるし、ある貨幣支払があったとき、


それが当期の購買によって発生したものだ、というわけでは


ないから。)[3]


 


従って、キャッシュフロー報告書、株主資本等変動報告書の


説明はせず、製造原価報告書は損益計算書の中に


含んだ形にして話を進めることにする。。。


 


と、言うわけで、前置きだけで


こんな長くなってしまった!!!


やっと本題である。


 


ところで、A社とB社の連結がなぜ必要かを


簡単に説明しておこう。


 


[※ここに図が入っている。。。。。]


 


見てもらえばわかる通りで、


もしもA社とB社が親会社子会社の関係であるなら


親会社の振出した手形を子会社の資産として計上することで


両者の総資産は大きくなってしまう。


だが、実際にはA社は手形の決済をする必要性がない


(なぜなら、B社は手形を銀行に持ち込む必要はないから)。


他方で回収されることが不可能な(というのは、


回収したところでA社の現金資産が減るだけ)B社の資産が


資産に計上されたままとなっている。


従ってこの場合、両者を合算しただけでは


適切にA社B社の状況を表示したことにはならない。


従って、両者の取引を「内部取引」として扱い


相殺消去することが「連結」のキモとなる。


これは企業間の連結であれ家計と企業の連結であれ


同じことで、「政府部門(財務省)」と「中央銀行」とを


「連結」consolidationする、というのも同じである。


繰り返し言及してきたとおりで


政府預金をそのままにしたのでは政府部門と中央銀行の


「連結」にはならない。単純合算で済ますのであれば


わざわざやるほどのこともないし、


国債だけが消去される、というのもおかしなことである。


 


ところで先程の例では


A社の振出した手形がB社の受取手形に


計上されているケースを示したが


しかしB社がA社の完全子会社である場合、


定義上、B社の資本金はすべて


A社の投資有価証券・その他有価証券に


計上されているはずである。



[※ここに図が入っている]


 


見ての通り、単純合算ではA社の資本金20と


B社の資本金10を足し合わせれば


資本金の合計は30である。しかし実際には


B社の資本金10はA社の資産である。つまり


連結すれば、内部で調達した資金に過ぎない。


従って、これを資本金に計上し続けることはできない。


し続ければ、架空の資本金を計上していることになるだろう。


 


なお、この例では、繰延利益剰余金は


A社とB社の合計になっている。


連結前(単純合算)と連結後では、


互いに等しい額の資産と負債・資本金とを相殺しているのだから


繰越利益剰余金には変化がないはずである――


が、実はこれもそうはいかない。これはやや難しい問題


(内部留保利益の控除)である。


これを説明するためには、ストックだけでなく


フロー取引にも目を向けなければならない。


まず内部留保利益の控除を無視して、


簡単に合算と連結の違いを見よう。



[※ここに図が入っている] 


まあ、一目見ればわかると思うが、


合算ではB社からA社への売り上げも


売上高に計上されており、大きく伸びている。


しかし連結では、内部売り上げは相殺消去して


外部への売上だけに縮小されている。


これは、とりわけ日本のように永らく


売上高重視の風潮が強かった国では重要な視点である。。。。


と、いうのも、何を隠そうおいらが以前勤めていた会社では


「年商100億円突破!!」なんぞとやって


でかでかとポスターを作り


会社や支店(お客さんの目に付くところ)に張りまくっていたことがあったのだが、


なんとことない、一つの営業会社と二つの実行会社があり


営業会社が受けた受注をそのまま二つの会社に流していただけである。


そしてそれを合算して「年商100億円」とやっていたのだから


実際には半分の50億ほど(マージンが載っているので


それよりはやや多い)でしかなかった、というわけ。


まあ、この場合、合算により売上が増えればその分


仕入も増えているわけで、実体としては意味がないんだけれど


しかし外部への売上だって、伸びれば同時に仕入も伸びるのは


ある意味当たり前なのであって、だから


連結によって売上/仕入の相殺処理をしなければ


正確な売上高を知るためには投資家自身が


勘定内訳書なりセグメント情報なりをあさって


自分で判断しなければならない。これは大変時間と労力とを


消耗するプロセスなので、それで


あらかじめ連結決算を報告することでこうした


ステイクホルダーの手間を省こうというわけだ。


 


さて、それで内部留保利益控除の問題に戻るが、


 


例えば9月1日にはA社の棚卸(在庫)の中にB社から


仕入れたものは一つもなかったとしよう。


9月1日から同年9月30日までの間


B社からの仕入は40であった。


このうち30はその月のうちに販売され、


月末時点では10の在庫が、A社の棚卸に


残っていたとしよう。


ちなみに、わかりやすさを優先してちょっと極端な例で


B社はA社以外に対する売り上げがなかったとしよう。


つまりB社の同年9月期売上高は40である。


そしてB社の利益は8であったとしよう。


ちなみにA社の利益は20である。(A社の売上は


30より多ければ何でもいい。)


 


さて、両者の9月の利益の合計は


28である。B社のA社への売上は40であり


A社のB社からの仕入も40であるから


両者を差引すれば、連結売上(および仕入)は


簡単に求めることができる。そして


利益には変化はない。。。。。


 


というわけには、実はいかない。というのは


B社からA社に納品された製品のうち、


実際に外部に対して販売されたのは30だけであり


残りの10はいまだA社の倉庫におかれており


従って、A社の資産として計上されているからである。


つまり、A社からB社に渡された8の利益のうち、


実際に外部に販売されることによって


利益として実現しているのは6だけであって、


2は単にA社からB社へと資金が移された


(あるいは売掛金が発生した)だけのことに過ぎないのである。


従って、この利益の2は


「内部留保利益」つまり内部に留め置かれ、いまだ


実現していない利益、として消去しなければならない。


これが「内部留保利益の控除」といわれるプロセスである。


当期利益が変化すれば、当然


繰越利益剰余金も変化することになる。


 


実は、この内部留保利益の控除は


実務上、それほど重要な問題ではない―――ウソ。


税務署が入った時なんか、これをいい加減にやっていると


(というか、全くやっていなかったりすると)税務署に


ひどく絞らることになる(経験談)。


でも、これはやっぱり通常は、あまり重要な問題では


ない。というのは、


先の例では9月の1日にはA社の棚卸資産の中に


B社から仕入れたものはゼロだった。通常は


そういうことはなく、大体期首も期末も


まあ、月によってばらつきがあるとはいえ、大体


おんなじような水準になる。仮に9月1日の


在庫が期末と同じ10だとしたら、


内部留保利益の控除は0になる。


ましてや決算なんか年に1回しかないのだから


年初と年末の比較だけをすればいいわけで、


実務的に言えば、ほとんど問題にならない。。。はずなのである。


が、税務署はともかくとして、


実はそうでないケースもありうる。


 


今、A社の業績が不調で、売上が思うように伸びない。


利益を何とかしてかさ上げする方法はないだろうか。


 


もしも連結決算せずに、単純合算で財務報告書を作成したら


どうなるだろうか。


この場合、B社は大量に過剰に製品を生産し


A社に販売することで架空の利益を計上することが


可能になる。両社合計の売上は増加し


(それに伴い、仕入も増加するが)、内部留保利益が


利益として加算計上されることになる。


これは内訳表なりセグメント情報を確認しない限り


この会社の危機は隠蔽されることになる。


(しかし、滞留する棚卸品の仕入先までは


記されていないから、内訳表やセグメント情報だけからは


簡単に見抜くことはできないかもしれない。)


 


「連結」にはこうしたことを防ぐ意味がある。だから


「内部取引」を相殺消去することは


少なくとも企業会計においては極めて重要なことである。


 


以上のような次第で、


企業の連結会計に関するおいらの素人講義はおしまいである。


内容的には、日商の簿記2級を学習した人であれば、


何を当たり前のことをドヤ顔して書いているんだ、こいつは、


というレベルの話に過ぎなかった。いやお恥ずかしい。


まあ、実際に連結となると、


ここに書いた以上のいろいろウザったい手間がかかるし、


大手や上場企業ということになると


こんないい加減な話ではとてもすまされない。


特に海外子会社との連結がある場合には


固定資産の評価やら外国納税の処理やらとんでもなく


面倒なことを一つ一つ処理していかないとすまない話になり、


こんなところでおいらがいい加減に話せるようなことではなくなってしまう。


というか、それこそ会計学の先端の話であり、


まあ、おいらに言わせれば実務的には重要なんだけれど


マクロ経済について語る際にはあまりにも細かすぎる


技術的話題、ということになる。大づかみに


政府と中央銀行の連結を論じる際に、参照系として企業会計を


引き合いに出すのであれば、


日商2級から毛を剃った、


この程度の議論で十分であろう。


要は、「連結」というのは単純な「合計」「合算」ではなくて


複数の経済主体を一つの経済主体と見立て


その「内部取引」を相殺消去し「外部取引」だけを


表示することによって、意図的な、あるいは


意図せざるわかりにくさから、ステイクホルダーを


保護しようという目的を持って行われているのであって、


ただ目的もなく両者を一緒に表示すればいい、という話ではない。


そして内部取引を相殺消去する際には


売掛金と買掛金、受取手形と支払手形、未収金と未払金、投資と資本金、


貸付金と借入金、売上と仕入、受取利息と支払利息、、、、


こうしたものを相殺消去すればいいだけではなく


内部留保といわれるものも向上しなければならず、


そのため、純利益や繰越利益剰余金にまで


変化が生じることがあり得る、ということ。


簡単に都合に合わせて、あるいは好き勝手に


あるものは相殺消去し、あるものは両建て表示で残す、


というわけにはいかないのである。そんなことをすれば


簿記会計のテストでは0点だし、決算書でやれば


青色申告を取り消されるか、上場取り消し騒ぎである。


(と、書いてはみたものの、東芝とか見てると


なかなかそうでもないんだなあ。。。。。)


 


さて、最後に政府(財務省)と中央銀行の連結の話にも


触れておこう。


 


政府と中央銀行の間を連結するべきか、する必要がないのかについては


まだ論争の余地はあるだろう。中央銀行が


一般の企業とは違って株主総会も開かず


国会へ報告を義務付けられている、という現実はあるとしても


「中央銀行の独立」がある以上、


あるいは中央銀行の「通貨の番人」という性格上、


連結処理して認識することは適切ではない、


という意見には、それなりの意味はある。


ここではそうした議論に立ち入らないが、


しかし、中央銀行と財務省をconsolidation (連結・統合)するといい、


中央銀行保有の政府債務は政府債務から控除する、


という一方で、


政府預金はそのままにし、政府は国債償還のため、


政府預金を黒字に維持し、それによって償還するのだ、


という手続きをそのまま継続して認識し続ける、というのは


如何にも一貫性がない。実際の実務ではしばしば


論理一貫性を犠牲にして「実質」を重視しなければならないケースも


ままあるのだが、


しかし机上の理論だけで飯を食っている人たちが


この様な一貫性のない話では、何とも心もとない、


というわけである。


 


 






[1] 「厳密に」といっても戸惑う人もいるかもしれない。なんせこれまでの説明では


「内部」と「外部」は全然「厳密に」定義されていないから。


単に常識的にイメージしやすいたとえ話をしただけである。「内部」と「外部」を


厳密に定義していないのに、どうすれば両者の区別を厳密に建てられるのだろうか? 


これは実務理論の運命とも言えるものだが、形式的な意味で厳密に区別しようとしたら、


形式的に明確な定義をすることは避けられない。ところが、


そのような形式的定義をしてしまえば実務においては必ずそれを逆手にとって


物事を自分に有利なように運ぼうとするインセンティブが生じる。例えば、


法律的な登記を形式的な基準とすれば、会社を分割することで不都合な事実の公表を


回避しようとする経営者が出てこないとも限らない。だからあまり形式的定義に


しばられすぎると、実務としてはうまくないことがたびたび生じることになる。


したがって実務においては「実質」が重視され、形式的定義は


あまり重要視されないケースが出てくる。ではここで言っている「厳密に」とは何かというと、


一度独立した経済主体と定めたら、それを変更せず継続し一貫性を保つこと、


それを変更するときには改めて所定の手続きを踏み、いつ変更したのか曖昧さを


残さないこと、そして制度会計に関しては、所定の手続きに従うこと、となる。これは


机上の学問における「厳密」とは意味が違う。




[2] そのような次第であるから、銀行のキャッシュフロー報告書では


通常の企業の貨幣性資産にあたる部分はベースマネーになる。




[3] これは実際に貨幣がどのように使われているかに関する情報に重要性がないという


意味ではない。企業の内部では通常は年次の七欄式の資金繰り表が作成され、


さらには月次の預金口座ごとの入出金の日繰り表が作成され、


無駄な貨幣性資産を保有しないように、かつ貨幣がショートすることないように


コントロールされている。一般に日本では中小企業は1~2か月の売り上げに相当する


手許キャッシュを保有することが望ましいといわれている。





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連結 (経済素人)
2016-10-04 22:59:22
なるほど、日銀と政府の関係よく判りました。この日銀が購入した国債はどうなるのですか。先日元銀行員や大学のマクロ・ミクロの教官に聞いたら(かなりまともな日本を代表する大学ですが、銀行はもうつぶれてないけど。)国債は消化されてしまうのじゃないのかなあ。1年間だけ保管?その利子は国にとのことでしたが、本当なんですか。本来であれば資産として保有し続け国は利子を日銀に払い続けるのではないのでしょうか。どうなっているのですか。小生には全く判らないのですが、やはり連結はワンコさんが書くものではないものが適用されているのですか?それとも中銀は独立機関ではない?先ほどの彼らの説明もしろどもどろで何聞いてんの?俺に聞くなとのことでしたが。多分そんなことは判らないというの実態のようですが、--毎回聞いてすいません。よろしく願います。
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Unknown (wankonyankoricky)
2016-10-05 16:29:32
コメントありがとうございます。


日銀保有であろうと国債の償還は
行われないということは
ないですよ。

もともと日銀が国債を引き受けるのは
インターバンク市場での金利をコントロールするため
ですから、基本的には売りオペのために
保有しているわけで、満期保有というのは
前提ではないはずなんですけれど、
まあ、現実には満期保有ということが
かなりあるんでしょうね。

ただし、一部の国債に関しては
日銀自身による借換債の引き受けということが
行われています。H28年度中は
額面で8兆円分だそうです。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel151224b.htm/

利子に関して言うと
勿論、財務省は日銀に金利を支払っています。

ただ、日銀の場合
税引後利益から配当を払った後の
留保利益はすべて国庫納付金として
政府に収めることになっているんですよね。
昨年だったか一昨年だったか
内部留保を行ったことがありましたが
あの時は、そのために特別な法律を
作りました。だからそういう法律がない通常の場合は

収入(金利手数料収入他)から
費用(人件費、諸経費、支払利息等々)を
差引した金額から
法人税を支払い、
さらにその残りから
配当を支払い、
その残りを財務省に「国庫納付金」として
収めているわけで、

政府からの金利受取が増えれば
(他の条件が一定として)
政府への国庫納付金も増えるわけで
そういう意味では、政府の金利支払い増加も
(日銀に渡る限り)それほど
政府にとっては痛くないといえるわけです。
他方で、政府に代わって日銀が民間銀行に
金利を支払えば、その分
国庫納付金は減る。

また、
マイナス金利で国債を発行すれば
政府はもうかる、という人がいるけれど、
それを日銀がマイナス金利で購入すれば
国庫納付金がその分減るわけで
(日銀が政府以上のマイナス金利で
国債を購入しない限り
民間銀行がマイナス金利で国債を
購入するはずがない)、
あまり意味のない話です。


なお、中央政府と中央銀行の連結というのは
あくまでも理論的な話ですよ。
実際に、
中央銀行と政府の連結会計を採用している
国というのは無いと思いますよ。

これは公会計と言われる分野の話ですけど
連結どうのこうの以前の問題として
そもそも中央政府のポジションの作成というのを
厳密に行うことは不可能なんですよ。
実際の行政・会計手続きとして
中央政府と中央銀行を
連結をする、というのは、理論的には
ともかく、実務としては当分は
考えられないでしょうね。
逆に言えば、だからこそ
主流派経済学者のいい加減なconsolidation (国債だけ
消去して政府預金はそのままにする、とか)も
まかり通っているわけですが。。。。


また、連結する理由についても
おいらはオペレーション上、
実務的に財務省と中央銀行は
一体だ、という事実から
連結表示することによって
財務省・中央銀行が
何をやっているのかを
整合的に表示できる、という意味で
連結すべきだ、と言っているんです。
あくまで、オペレーションの意味を
論理的に説明するための
手段です。(もちろん、そこから
政治経済的な含意が引き出される。)

実際に、たとえば金利の決定や
その他の論題について
日銀が政府から一定の法的独立性を有しているのは
事実でしょう。だから、それを理由に
「連結の対象ではない」と主張するのは
それなりに意味があると思います。
ただ、要するに、中央銀行は
実際のところ、
オペレーションで何をやっているか、なんですよ。
日銀は実際に為替レートだか
インフレ率だか財政赤字額だか、
個別的な論題に関しては
政府と対立しうるし
政府に常に従っているわけですらないかもしれません。けれど、それもこれも
大前提としてインターバンク市場で
決済がきちんと行われていなければならず、
それが出来ていて初めて「中央銀行の独立」にも
意味があるんですよね。
そして、インターバンク市場で決済がきちんと
行われているためには
中央銀行と財務省が
連携して行動せざるを得ず、この点では
意見が対立しようとどうしようと
一体として行動せざるをえない。

だから、この点で「連結をして分析する」ことが
適切かどうかは
いろいろな考え方があると思うし、
問題設定によって、
ある時は連結表示を採用し、
別の問題については
あくまでも独立させるべきだ、という人がいたって、
不思議ではありません。
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確認 (経済素人)
2016-10-29 22:29:51
MMT理論読ましていただいたいるのですが、過去に外資規制が存在したのですが、このことはMMT理論ではどの様に考えるのでしょうか。また今は、その様なことはないのですが、これは単なる経済大国になったというのことなのでしょうか。非常に世俗的な話ですが、MMT理論のことを、何処かで話をされることはるのでしょうか。もしそのようなことがないのなら貴方以外にMMT理論で話を聞ける方か論文・本として読むのに値する進めることができる日本の方がおれば教えて頂きたい。
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コメントありがとうございます、 (wankonyankoricky)
2016-11-06 14:59:43
コメントありがとうございます。
MMTでは外資に対する規制に対する評価は
はっきり示されていません。対外関係について
MMTの理論から導かれるのは、
為替規制をしてはいけない、ということです。
為替規制をしないことによって生じる悪影響は
国内で主権貨幣を操作することで、極力
抑えることが可能だが、為替規制をすることで
通貨の主権性が失われれば、
国内で貨幣を操作することもできなくなってしまい、
そのほうが悪影響が大きくなるだろう、
という考えです。

他方で、貿易については
自由化論とも規制論とも、MMTは両立する、
としています。自由化に白規制強化にしろ、
MMTの議論を踏まえたうえで、
やってくれ、というような感じですかね。

資本取引については
どのような議論があったか、ちょっと
思い出せませんが、直接投資については
貿易と同じことになるはずです。
間接投資について言うと、
まあ為替規制をしてはいけない、と
主張しているのだから、
外国による証券投資一般を規制すべきと
言うことにはならないはずです。
MMTは現在のアルゼンチンなどでも
為替規制はすべきでない、という立場ですから
発展途上国でも
やはり為替規制(そして対外証券取引)も
規制すべきでない、という立場に
なると思います。

おいら自身は、MMTについて、というより
何の話であれ、人前で話をすることはないですよ。
普段は地方の小さな村工場で資金繰りの仕事を
していますので。

MMTの理論について日本人で
話を聴ける人、あるいは書物、論文、、、
あんまり心当たりないんですよね。。。
論文については、楊枝嗣郎先生や
内藤先生など心当たりが全くないわけでは
ないんですが、いずれもMMTの議論自体を
包括的に取り扱ったものではないです。
お力になれなくて、済みません。。。
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(・ω・)b (tamurin)
2016-11-06 23:09:33
とても面白く、参考になりました。
(特に内部留保利益控除については初めて知りました)
政府と日銀の連結について、国債を相殺して政府預金を相殺しないのは一貫性に欠けると指摘するにとどまったのはあっさりしてるなぁと思いましたが、「机上の理論だけで飯を食っている人たち」とは痛快ですね(笑)
 
PDF18ページ目、「内部留保といわれるものも向上しなければならず」は「控除」の誤りかと思います。
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