原発問題

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『原発ゼロ』<日本政府の野望と米国の思惑> ※20回目の紹介

2015-12-29 22:00:00 | ã€åŽŸç™ºã‚¼ãƒ­ã€‘著者:小出裕章

 ï¼Šã€ŽåŽŸç™ºã‚¼ãƒ­ã€è‘—者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。20回目の紹介

『原発ゼロ』著者小出裕章

原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。

  原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。

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**『原発ゼロ』著書の紹介

 ã€Œç¬¬ï¼•ç« ã€€ã“れでも原発を続けるのですか」

 6 力の論理で平和は築けない P211~ より


 日本政府の野望と米国の思惑

 今、世界を支配しているのは国連です。国連というのは英語で言えば「ユナイテッド・ネイションズ(United Nations)」です。これを正しく和訳し直せば「連合国」となり、つまり、先の戦争で、ドイツ、イタリア、日本を相手に戦っていた国々の連合国が今の国連なのです。国連憲章の中には敵国条項というものが存在しています。これは、ドイツ、イタリア、日本という国は敵国なので、それぞれの連合国側の国がどう対応しても構わないという内容です。

そんなものがいまだに残ってるのです。連合国には約50ヶ国が参加していましたが、その中でなぜ米国、ロイア、英国、フランス、中国が常任理事国になれたかといえば、彼らが核兵器を持っていたからです。核兵器を持つことが現在の世界を支配するための決定的な条件になってしまっているということになります。核兵器を持つことが、世界で力を持つためにはどうしても必要だと考えるのは、あたりまえのことです。

 これらの常任理事国は、核兵器を自分たちは持っているけれども他の国には持たせないというので核不拡散条約をつくって、自分たちだけが独占できるようにしました。そしてIAEA(国際原子力機関)という国際的な”原子力マフィア”をつくって、他の国を監視する体制をずっとつくってきました。そうすると、他の国は面白くありません。

何としても核兵器を持って、自分も世界を支配する国々の仲間入りを果たしたいと思うのは当然の成り行きです。ゆえに、「世界を支配するためには核兵器が欠かせない」という考えにとらわれてしまっていて、世界の国々の指導者の多くが、核兵器を持ちたいと願っているのだと思います。

 この考えにはもちろん、日本の政府自民党もとらわれていて、実際、米国と日米原子力協定(原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」)を結び、平和利用の名目でウラン濃縮、原子炉、再処理という核兵器を製造するための3つの技術を手に入れてしまいました。日本という国は世界で唯一、核兵器保有国ではないのに実質的な核保有国になったという、非常に特殊な国なのです。

米国がなぜこんなことを認めたかといえば、この日米原子力協定は、そもそも日本が米国のいわば属国になっていくという、日米安全保障条約と日米地位協定の流れをひくものであり、米国にしてみれば、日本が属国である限り、ある程度の自由は認めておいてやろう、と、そういう枠組み内での協定だからです。

 ただ米国も、さすがに3つの技術のうちの再処理については、日本にやらせるのはまずいと反対していました。なぜなら再処理というのは核兵器の材料であるプルトニウムを取り出す技術ですので、この技術を持てば、いつでも核兵器をつくれるようになるからです。一方、日本は、だからこそなんとしても再処理をやりたかった。

それで、1977年当時は、米国が核兵器の拡散防止策として使用済み核燃料の再処理を行わないことを全世界に呼びかけようとしていたところで、かなりきわどい争いになりましたが、最終的に日本は、一度分離したプルトニウムをウランと混合させるという条件をつけて、米国の了承をとりつけたのです。つまるところ、「日本ならいいだろう」ということです。そうしてようやく、フランスの支援で東海再処理工場が動き出した、と、こういうことなのです。フランスの支援を受けたのは、米国が先の防止策を率先してすでに商業用の再処理から手を引いていたためです。

 そして現在に至っても再処理技術は確立しておらず、高速増殖炉も完成しておらずといった状況ですが、日本とすれば、たとえ上手くいっていなくても、やっと手に入れたものを、そう簡単に諦め、手放すことができないわけです。それで、ひとまず再処理だけは英国とフランスの工場に依頼してずるずるときた結果、長崎原爆を4000発も作れるほどのプルトニウムを貯めこむことになった。

これを世界が容認するはずもなく、なんとしてもプルトニウムを燃やすしかないということで、無理に無理を重ねてプルサーマルという何のメリットもないことをやらざるを得ないところまで追い詰められてしまったことは、すでに説明したとおりです。

 世界の国々、特に韓国やイランといった国々は、米国に対し、日本だけを特別扱いしていることをダブルスタンダードだと言って、非難しています。それでも米国が表立って日本に原子力から撤退させようとしないのは、属国である日本を利用したいと思っているからです。何に利用したいのかといえば、金儲けです。

 米国は、1974年に原子力から撤退を始めており、すでに原子炉を生産するラインを失っています。ですが、原子炉のパテント(特許、特許権)は持っているわけです。

 それから、ウラン濃縮工場をたくさんつくりすぎてしまったために、濃縮ウランも山ほど余っています。だから、とにかく原子炉を売りつけて、ついでに核燃料も売りつけて、と、売れば売るほど儲かる。日本を原子力という、そういう世界につなぎ止めておくことによって、日本の生産ラインを動かし、アジアの国々にも販売して、それでまた金儲けをしようと企んでいるのです。また、中国への牽制になるということも計算に入れているでしょう。

それで日本はどうかというと、日本も世界を牛耳る米国の属国という枠組みから出たくないわけです。原子力メーカーも、すでにつくってしまった生産ラインがあるので、もうこうれ以上は原子炉を日本でつくれないとなっても、もやは原子炉をつくることから脱けられない。だから海外へ売ろうとする。このように、国家としての思惑、企業としても思惑とが複雑に絡み合って、日米両国ともに原発から離れられずにきているのです。

 日米原子力協定は2018年に期限が切れますが、これは破棄するべきだと思います。また原子力協定だけでなく、地位協定だって破棄するべきですし、日米安保条約だって破棄するべきだと思います。こんなことを続けていては、かえって国力を衰退させてしまいます。日本は米国から、本当の意味で独立していかなければいけません。

※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、2016/1/4(月)22:00に投稿予定です。

原発ゼロ (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-3)

 


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