世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

米中の狭間に埋もれる安倍晋三 プーチンは怖いが毒を喰らわば皿までの外交戦略

2013å¹´02月25æ—¥ | æ—¥è¨˜
中ロ経済論―国境地域から見る北東アジアの新展開
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●米中の狭間に埋もれる安倍晋三 プーチンは怖いが毒を喰らわば皿までの外交戦略

 今夜の見出しのような外交を日本が行う事が不可能と知りつつ、見出しにせざるを得ないのは辛い心境である(笑)。しかし、安倍晋三が参議院選までの忍耐なのか、似非ナショナリストなのかは別にして、呆れるくらいアメリカに従順な姿勢を世界に示したものである。その所為かどうか判断はつかないが、安倍のオバマとの会談姿勢を通じ、世界の指導者は安倍晋三の名前は忘れても良さそうだ、とG8のカードから除外したに違いない。面従腹背の腹でも垣間見えれば、正体不明と云うサムシングが残されたが、仰向けになりオバマに見せてはいけない腹部を晒したのだから、もう国際的評価は得られない。麻生のマフィアスタイルの方が、印象的でさえあるのだから、安倍の国際的認知は挽回不可能だ。

 日本がオバマのアリ地獄に嵌った瞬間なのだが、国民の多くはアメリカの仕掛けた罠に掛かった認識すらなく、敗戦後の進駐軍を迎えるように、米国の旗を振って狂喜乱舞している。いまさらTPPが如何なるものかは、馬の耳に念仏で、語る必要もないだろう。知りたければ、賛否両論の本が書店に山積みだ。マスメディアの誘導記事を鵜呑みにし、「我々は知らされていなかった」等と言い訳は出来ない。筆者などは、どうしてもやりたいのなら日米FTAで充分だと思うが、実際問題は貿易で国家を支えると云う発想自体が時代遅れだと認識している。

 いずれにせよ、マスメディアが大政翼賛報道でTPPによる日本の貿易拡大を誇大広告するのだから、「貿易立国神話」を信じて疑わない欲深な愚民の群れが場に連れていかれるとも知らず、桃源郷が待ちうけると思い込んでいるのだから目出度い限りだ。ここまでアベノミクスの問題点が語られているにも拘らず、7割の愚民が支持していると云うのだから、作り話としても凄い数字だ。この数字をみて、付和雷同な愚民が増えることはあっても減ることはないのだろう。しかし、TPPでアメリカ型資本主義にどっぷりと浸かるのであれば、マスメディアもノホホンとしていられない筈なのだが、己の実力に酔っているのだろうか。

 このままだと、芯から米国の属国の道を歩むことになり、米国の凋落と共に沈んでゆく、日本と云う国が視野に入って来る。アメリカは中国やロシアの国営企業による“市場経済只乗り論”を厳しく糾弾しているが、金融資本の独占の資本主義にルールを変えたわけであり、目くそ鼻くそのような議論である。TPPが中国包囲網だと云う意見も多いが、筆者からみる限り、アメリカ生き残りのルール変更のようなものと考える。欧米の国々は、自分たちに都合が悪くなるとルールを変えると云う禁じ手を平気で繰り出すのである。

 おそらくアベノミクスを主導したのは、米国なのだろう。ゆえに、アメリカが主導権を握り、ドイツや後進国の日本の円安誘導批難発言を封じたのが、先のG8であり、G20の通貨安競争と一線を画す、デフレ脱却の為の日本固有の金融緩和と云う位置づけの評価を無理やり押しつけたのだと思う。世界の経済のルール作りは、その地位を確保しているアメリカの数少ない能力の一つだが、これとていつまで維持出来るか保証の限りではない。G8からG20に拡大した流れは、将来的にGゼロと云う未来を予言している。このような、歴史の大きな流れに目をつぶり、直近の事情に左右された選択ミスは、国家を重大な危機に導く可能性もある。

 現に、米国がアジアの成長を取り込もうと考えている事実をジックリ考えてみれば、自ずと判り切った答えが出る筈なのだが、日本政府も経済界も国民も、アジアを見ずに、アメリカを見ると云うのだから、摩訶不思議な心理状態だとしか言いようがない。それでいて、中国を目の敵にしておきながら、中国への輸出は大切だと、意味不明のことを主張している。米国の手の込んだ恐喝詐術行動には、それなりの国の事情があるのは理解できる。勿論、賛同する気はないが、戦略的に理解できる。しかし、アジアに属し、これからアジア市場しか伸びないと云う歴史上の事実において、いまだに「黄色い白人」扱いをして貰いたいと望む浅ましさにはあきれ果てる。

 SCO上海協力機構の力量はまだ弱いものだが、中国、ロシアの蜜月により、世界の潮流としては見逃すことの出来ないものになっている。正式加盟ではないが、中国、ロシアの結びつき自体NATOにとって脅威であるし、欧米主導の世界観に反発を持つ、インド、イラン、パキスタン、トルコ、ASEANなどが会議に出席するまでに至っている。このような動きが、オバマにTPPを横取りしてでも、SCO上海協力機構の枠組みの成立を阻止する狙いがある。この事は同時に、プーチン大統領の、欧米志向からのチェンジへの警戒感の現れでもある。ソ連邦時代を含め、ロシアは欧米との親密さの距離で、世界を見つめていた時代が長い。

 その流れが、プーチンの政策変更により、大きくアジアにシフトしている事実を、日本政府も知らない筈がない。ただ、戦後の歴史において、ロシア悪者説がアメリカの策謀があるにしても、色濃く日本人の心に棲みついている問題は残る。日本人の印象操作に、日露戦争を扱った司馬遼太郎の「坂の上の雲」があるが、あれも一種のプロパガンダの一種として機能したのだろう。アメリカと仲たがいしてまで、ロシアや中国に擦り寄る芸当は出来ないにしても、天秤にかける素振りくらいは、外交なのだからして貰いたいものである。

 にも拘らず、罠とも知らず餌に食いつく姿は、ダボハゼそのものだ。自民党も派閥領袖政治が跋扈していた時代には、民族主義と云う矜持が残されていたのだが、それも消えうせた。抵抗する改革官僚等云う豪傑もいなくなり、隷米で糊口を凌ぐ官僚群になり下がったようだ。今であれば、ロシアとの平和条約締結も夢ではないし、北方四島の帰属問題にも解決の道筋が出来るかもしれない。そのようなメッセージがプーチンから出されているにも関わらず、日本はひたすらオバマの顔色を窺うばかりだ。

 たしかに、プーチンが危険人物であるかもしれないが、米国一辺倒の外交なき日本の情けなさを打破する気概くらい見せて貰いたいものだ。手玉に取る等大袈裟なことは望んでいないが、米国やロシアを相手に、一定の天秤型の外交姿勢くらい見せて貰いたいものである。ASEANにせよ、ブリックスにせよ、欧米にひと泡吹かせたい感情はみなぎっているわけで、今がチャンスなのだ。プーチンは一定の範囲で秋波を送っているわけで、領土問題などは絶対的権力者が存在する間に解決の道を探るのが、外交と云うものだ。4月末に予定されている安倍首相の訪ロで、何某かの外交戦略が見えるかどうか愉しみだが、今回の訪米のだらしなさを見る限り、多くを期待する気分にはならない。ロシアの未開拓地域の資源産業への共同作業はTPP同様危険はつきまとうが、内政にまで食い込む危険ではなく、同じ危険でもその危険度は低い。前倒しで、格安LPGの輸出契約くらい土産に帰国して欲しいものだ(笑)。


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