金属活字、ていうかオリジナルのほう。いまも世界中で使われている書体 Caslon のもとです。
ウイリアム・カスロンが1720年に活字の製造を始めて、最初に出した書体見本が1734年で、そのときは所在地が Ironmonger-Row となっていたけど、これは Chiswell-Street になってからもので、1741年の見本シート (525x390mm)。
私がイギリスで勉強していたときに知り合った本屋がこれを最近入手して、私のところに連絡が来て即注文。先週届きました。
古いのになると、うわーきれいだなー、だけで済まないところも悩みというか楽しみというか。
「なんだこの A は?」とか考えちゃうわけです。
いちばん上、A SPECIMEN と組まれた部分の A と、その2行下の ABCD の A とが全然違う。どちらも Five Lines Pica(現在の72ポイントに相当)の活字なのに。SPECIMEN の C は ABCD の C と同じだけど、A は別の活字みたい。並び線も合ってないし。
前から持っている方の、1771年の本(画面右下)の綴じ込み付録として入っているカスロンの見本帳と比べる。1771年の方の ABC...では A が直してある。
じゃあ1741年の A はどこからきたのか? 文献を調べなきゃ、あの人に聞かなきゃとか考える。余計な仕事が増えるなー。けっきょく嬉しいんだけど。