ライター渡部のほうです。
ずっと追いかけてリサーチしているのに、まとめていないテーマ(こういうものがいくつもある)の1つが「動物ビスケット」。
(昔撮った写真、ブレブレだ…)
忘れないうちに概要を書き留めておくことにする。
量産され、一般的に市販される動物ビスケットが登場したのは、1900年前後のヨーロッパとアメリカから。
現在、歴史を公表しているもので代表的なものは
アメリカ Stauffer’s 1871年〜
http://www.stauffers.com/our-snacks/animal-crackers.html
http://www.stauffers.com/about-us/our-history
アメリカ Nabisco (当時ナショナルビスケットカンパニー、現モンデリーズ・インターナショナル傘下) Barnum's Animals Crackers 1902年〜
http://www.snackworks.com/products/product-detail.aspx?product=4400001380
後者は、当時米国を巡業しで人気を博していた「バーナム&ベイリーサーカス」からアイデアを得た商品。
1897年頃のポスター。
サーカス(曲芸を見せる)、珍しい動物、畸形と、今からは考えられないような組み合わせだったりもするが、人々の好奇心をそそるものを次々とショウにして見せた。
19世紀半ばから1920年代まで流行した欧米の「エキゾチズム」がこのイベントにも反映されている。
ラクダ、ライオン、象、シマウマなど、アメリカ大陸およびヨーロッパにいない動物は、ほとんどは檻に入れられ「見世物」として人気を博した。
パッケージも「檻」に入っていることが特徴とされる。
現在出ているものは、動物側からの視線、つまり檻の柵は奥になっている。
動物ビスケットの普及の背景には
こうしたエキゾチシズムが1つ。
また、子供用商品の市場拡大も大きな理由である。
19世紀半ばより、「子供」を対象とした市場が発展する。
これに関してはまだリサーチ不足。
子供自身が消費者になる、子供という市場が生まれる、ことに関しては、
『子どもをめぐるデザインと近代』神野由紀著 世界思想社 2011年刊 が詳しいのだけれど、日本の話だけなので、欧米の事情について書かれた本がないのか、探し中。
『The Younger Generation』 Ellen Key著 1914年(『兒童の世紀』として1916年に邦訳が出ている)が参考になるのかも。未読。
どうも一冊でまとまっているようなものが見つけられない状況。
かなりざっくりしたまとめで言うと
工場による大量生産品が普及すると同時に、消費者である中間富裕層も増えている。
子供向けの本、子供向けの服など以外の商品にも波及。
動物の形をした食品は、子供も消費者になりうる、ことを証明した商品である。
と、言いたいものの、19世紀末から20世紀初頭のサーカスと動物のように、珍しい物を見たい大人向け、だとすれば、文脈が少し変わってきそうだ。
日本で動物ビスケットが始まったのはいつなのか、はっきりしない。
現在、様々な種類が出ているが、型のスタイルからして古そうなものは
カニヤ
http://www.yin.or.jp/user/kaniya/seihin.htm#doubutu ただし現在は1トンからの受注生産のみ。
おそらく同じ型を使っていると思われる、
梶谷食品
http://www.kajitani-shokuhin.co.jp/product/index.html
(こちらも昔撮った写真。ブレブレ…失敬)
別の会社なのに同じ形のビスケットなのはどうしてなのか?
以前問い合わせたところ、ビスケットメーカーは型屋から出来合いの型を買うことがあったから、同じ型のビスケットがあるのだろう、とのこと。今だとそれぞれのメーカーで固有の形になっているのが普通のような気がするのだけれど、ひょっとすると、今でも同じ型を購入した別会社のビスケットというのがあるのかも。
カニヤと梶谷食品の動物ビスケットは、こうもり、イノシシ、ハト、など童謡や童話から持ってきたモチーフがあることが特徴的。
ヨーロッパを中心に世界的に販売されているドイツのBahlsenバールセン社のZOOビスケット。 1966年に発売(来年で50周年)
http://www.leibniz.de/produkte/zoo-original.html#/slide_1
動物がたくさんいるところ=zoo 動物園 という考え方。
今、この商品はZOO オリジナル、という名前に。
(ちなみにLEIBNIZ ライプニッツというブランドネームは、1889年創業のバールセン社が1891年哲学者のライプニッツにちなみ付けたビスケットの名前が、その後ブランドネームとなったもの、だそう)
シリーズ物はそれぞれ正確に何年発売かまだ調べてないが、ここ数年の間だと思われる。
Zoo Bauernhof (ZOO 農場)
http://www.leibniz.de/produkte/zoo-bauernhof.html#/slide_1
オリジナルのウサギが鎮座しているのに対して、農場のウサギは飛び跳ねている、など、全体的に動きのある動物が描かれている。
Zoo Waldtiere (ZOO 森の動物)
http://www.leibniz.de/produkte/waldtiere.html#/slide_1
Zoo Waldtiere (ZOO 森の動物)は現物をまだ見たことがないのだが、鹿やリス、キツネなど、本当にドイツの森の中にいる動物を扱っている。
バールセンに限らず、世界中で動物ビスケットは多く出されており、近年(大体10年くらい)の傾向として、童話に現れたり、動物園にいる珍しい動物よりも、農場やジャングルといった動物が自然に近い環境の中で描かれているものが多くなっている。
特に「ジャングル」ものは多く見られるが、どこのジャングル(南米なのか、アジア圏なのか、アフリカ圏なのか)など曖昧なものが多い。今後もっと細分化されていくのではないだろうか。
こうした動物ビスケットモチーフの自然化の背景には、動物の権利を考える発想がある。
動物の権利に関しては、1970年代から始まった動きだが、年々その考え方が広まっている。
今、子供を持ち、育てる世代が1970年以降に生まれ育ったことを考えると、
動物といえば動物園にいる動物、という考え方に拒絶感を持ってもおかしくはない。
現状大体ここまで。
まだまだ調べることは多そうだ。