これ、誰がデザインしたの? 2024-02-29T16:13:55+09:00 dezagen 身の回りの「デザイン」はどのように デザインされたのか、をまとめた書籍 『これ、誰がデザインしたの?』の著者と編集者によるブログ。 Excite Blog 祝 明和電機30周年ライブコンサート http://blog.excite.co.jp/dezagen/33698811/ 2024-02-28T18:09:00+09:00 2024-02-29T16:13:55+09:00 2024-02-28T18:09:04+09:00 dezagen イベント <![CDATA[ 2月24日(土)明和電機 https://www.maywadenki.com の30周年記念ライブコンサートが行われるというので、伺ってきました。



 演奏(製品実演)には経理のヲノさんことヲノサトルさん、スズキユウリさん、そして最後には歴代工員(スタッフ)さんも参加しての豪華な会。明和電機は基本的に土佐信道社長を中心とするアートユニットであって、音(楽)を伴う作品/製品を作って世にリリースしているわけですが、製品のデモンストレーションをするライブパフォーマンスはそれに加えてショウとしてのエンターテイメント性がある。
 ライブパフォーマンスでは電気製品+コンピュータの工学的な側面がありつつ、(私が見る限り毎回)(そして今回も)電気が落ちる、コンピュータがフリーズするなどのハプニングがあり、機器類が思うように動かないという事態を土佐社長がトークや即興芸(?)でひとつのショウとしてまとめあげてしまう。今回は動かなくなった楽器を工員の手で叩くというハプニングすらあり、人間がやることを機械がやる本来の明和電機の楽器の面白さから、それを人間が擬似的に行うという逆転の面白さもあった。
 こんなアクロバティック事ができるアーティストを明和電機の他に私は知らない。


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 それにしても30年とは……、息の長い活動だ。


 明和電機の形態デザイン的な側面を見ていけば、高度成長期の電気工具の無骨さと職人芸的な仕上げの美しさから、突如レース編みのような繊細さ、女性や胎児をテーマにした肉体的なフォルム、はたまた単純幾何学線からなるキャラクターなど様々にスタイルを変えている。
 初期からしてシャープな器具に中村至男さんの緻密なグラフィックデザインで統一されているのかと思いきや、しりあがり寿の描いたカッパの絵も欠かさずあった。ヤンキー時代もあれば、オタマトーンが他のキャラクターとコラボしたりと実に多様な要素を持っている。


 それでも見ればすぐに「明和電機」と分かるのは、ロゴとコーポレートカラーの力が強い。加えて土佐社長のユニフォーム姿、だろうか。あるいはどんなことがあっても許容する周囲の温かさなのだろうか。
 最近は三協アルミとコラボレーションをし、アルミサッシの端材で楽器を作成、企業CMにも出ていると聞き、見てみると三協アルミの広告というより明和電機の広告のよう。
https://alumi.st-grp.co.jp/sumai/tvcm/sankyo_maywa/

 台湾版では台湾華語(中国語普通語)で歌っているのでさらにびっくりしました。


 明和電機さん、これからも末永く活動をお続けください。


(執筆 渡部千春)


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Audo オープンに行ってきました http://blog.excite.co.jp/dezagen/33686726/ 2024-02-20T15:16:00+09:00 2024-02-20T15:16:34+09:00 2024-02-17T16:07:31+09:00 dezagen インテリア <![CDATA[ 六本木アクシスビルの3階に新しい北欧の家具、インテリアブランドのショールームがオープンしますよー、というので行ってきました。Audo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)
https://audocph.jp/




 
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 Audoは2023年に出来た新しいブランドだが、その元々は1979年創立のMenuと2008年創業のby Lassenが合併したもの。 地元デンマーク、コペンハーゲンにはショールーム、セレクトショップ、レストラン、ホテルが集まった「Audo House」もあるとのこと。家具、インテリアのブランドの総合的な施設は面白そう。北欧の本を書いておきながら、色々情報キャッチしきれてないので、コペンハーゲンに行ったら見に行きたい場所。
 面白いと思ったのは、マーケティング担当のMiaさんとインテリアデザインについて喋っていた時にふと彼女が言った言葉。「デンマーク人はいつもデザインしてます。生活の中で、毎日毎日、一生デザインしてるんですよね」
 Miaさんの言う「デザイン」は、例えば家具のデザインをするように「物」にすることではなく、空間の中に家具やインテリアアクセサリーがあったらどうアレンジするか、家をどうDIYするか、そしてどう暮らすか。 こういう考え方はいいなあ。 (執筆:渡部千春)

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藤森泰司 ELMAR その2 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33667464/ 2024-02-03T00:13:00+09:00 2024-02-03T00:22:55+09:00 2024-02-03T00:13:13+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[ その1からの続き。
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 全体を見てみるとやさしい印象でぱっと見ダイニングを思わせる。簡単に言えばオフィステーブル/オフィスチェアっぽくない。
 私の考えるオフィスチェアというと、ハーマンミラーのアーロンチェアに代表されるような人間工学に基づいた形の樹脂素材で、キャスターが付いているもの。
 プライウッド、特にナチュラルカラーの椅子になると、イームズプライウッドダイニングチェア、アルネ・ヤコブセンのセブンチェアのシリーズ、坂倉準三デザインの天童木工の椅子など、家庭やカフェといったイメージがある。


「ダイニングチェアやラウンジチェアには見た目の軽さがある。オフィスチェアは座りやすく、長時間座っていても疲れないメリットがある。ELMARはそういったチェアの中間にあるものですね」と、今回藤森泰司アトリエと共同で設計を手掛けた内田洋行のデザイナー山田聖士さんは言う。
 中間が求められるようになっている背景には、働き方、オフィスの在り方の変化がある。


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「コワーキングスペースもかなり昔から作られていましたが、ただオフィス空間を分割してシェアというより、カフェやバーを併設したり、コンシェルジュがいて事務的な面のサポートサービスがある場所が主流になっています。図書館などの公共の場所で仕事をする、勉強するという人も多い。こうした場所にはオフィスとは異なる要素、居心地の良さが求められるようになっています。
大手企業のワーキングスペースも、一般的にダイニングチェア、ラウンジチェアとして売られている椅子を取り入れたり、簡易的なカフェを併設したり変化してきたわけです」


 ダイニングのシーンを思わせる木素材の椅子とテーブルの写真を見て、藤森さんが内田洋行と新しいオフィスチェアを作りたいと言っていた事を思い出した。それもすごく前、2006年頃の話である。
 当時内田洋行のデザイナーでありスギのプロジェクトなども進めていた若杉浩一さん(現武蔵野美術大学教授)と共に、色んな試行錯誤をしていた。


 ELMARの前にもいくつかオフィス家具を藤森泰司アトリエと内田洋行で製作している。


2009年 RUTA 
https://office.uchida.co.jp/products/ruta/

https://taiji-fujimori.com/furniture/ruta/

2009年/2016年 LEMNA 
https://office.uchida.co.jp/products/lemna/

https://taiji-fujimori.com/furniture/lemna/

https://taiji-fujimori.com/furniture/lemna2016/

など。


 RUTAもLEMNAも完成度が高く、藤森さんも愛情を注いで作っていた。他のブランドから出している製品や、セルフプロダクションで作ったWORK FROM HOMEのシリーズも、いつも藤森さんは全身全霊でそれぞれの目的に合わせて妥協しないデザインを作って来た。
 一方で「まだ新しい形があると思う」ともよく言っていた。
 
 ELMARは、挑戦を止めなかった藤森さんが到達した完成形、木素材を好んで使った藤森家具の真骨頂とも言える。


 カタログとウェブサイトに寄せられた藤森さんの言葉を引用すると
「ELMARは、その家具としての表情によって多様な空間に入っていくことが可能です。 オフィスとダイニングの間をフレキシブルに行き来できること。 それは、働くという行為を、より自由にすることに繋がっていくと信じています」


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 野暮にも私感を加えれば、働くという行為を自由にすることで、生活も変わっていくだろう。
 椅子は生活の色んな場に登場する。職場でがっちり集中して働いている時、会議、授業、家で仕事や勉強する時、ご飯を食べる時、喫茶の時、何かを待っている時。
 大人の椅子が大きく見える子供の時、一人で自分の時間を堪能する時、親になって小さい子供を抱えながら一緒に座る時、身体が弱くなって椅子に捕まりながら立ったり座ったりする時、ベッドの脇で本を読んであげたり、その合間にPCで仕事したりする時。
 勉強して仕事して作業して休んで、こうした状況はぶつ切れではなく一続きだったりする。その都度全部の家具が変わるわけではない。ELMARがすべてを受け入れるわけではないにせよ、続いて行く生活の中に共にある椅子に、こんな選択肢もあるよ、と見せてくれている。


 ELMARのシリーズは春の発売を予定している。


 藤森さんにはこのブログにも度々登場してもらった。以下、ポストのリンクを。
https://dezagen.exblog.jp/10409173/

https://dezagen.exblog.jp/11719703/

https://dezagen.exblog.jp/12752674/

https://dezagen.exblog.jp/12949130/

https://dezagen.exblog.jp/12966944/

https://dezagen.exblog.jp/13784506/

https://dezagen.exblog.jp/14486841/

https://dezagen.exblog.jp/14574934/

(↑執筆は宮後優子さん)

https://dezagen.exblog.jp/17569240/

https://dezagen.exblog.jp/27999894/

https://dezagen.exblog.jp/28037560/

https://dezagen.exblog.jp/28040515/

https://dezagen.exblog.jp/30080893/

https://dezagen.exblog.jp/30439932/



 藤森泰司さん、ありがとう。




執筆:渡部千春
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藤森泰司 ELMAR その1 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33667462/ 2024-02-03T00:10:00+09:00 2024-02-03T00:10:52+09:00 2024-02-03T00:10:52+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[ 昨年12月8日、家具、インテリアデザイナーの藤森泰司さんが亡くなった。
 まだ56歳になったばかりだった。大きい才能があまりにも早く逝ってしまった。


 亡くなる直前の2023年11月に発表されたのが「ELMAR」。https://office.uchida.co.jp/elmar_lp/ 藤森泰司アトリエ(デザイン)、内田洋行(企画開発・販売)、カリモク家具(製造)の3社が共同で作り上げた、オフィス用チェアとテーブル/デスクのシリーズだ。
 今回、内田洋行で実際に座らせてもらい、話を伺った。


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 ELMARの椅子は座面パッド付き、アーム付き、色もナチュラルとブラックを揃えバリエーションがあるが、特に目を引くのが一番シンプルなタイプのメッシュシートが組み込まれたもの、その座面だろう。


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 木素材の椅子の座面にメッシュを用いる事は特に新しい事ではないらしい。とはいえ、ナチュラル木のカラーとメッシュの黒のコントラストは異素材の組み合わせが強調される。


 実際に座ってみるとメッシュタイプのオフィスチェアと変わらない感触で、座面の木の部分とメッシュの部分の境目をほとんど感じない。パッドタイプはさらに柔らかく、長時間でも疲れなさそうだ。


 ぱっと見固そうな印象があるにも関わらず、座った時に椅子全体がすっと身体を受け止めるのには驚く。


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 背もたれの部分と座面から伸びる部分を繋ぐのは1個の樹脂製ジョイントパーツ。横から見るとUの字型になったパーツで、樹脂自体が柔らかいのではなく、Uの字のバネの仕組みが背面の傾きを柔らかにする。加えてプライウッドそのもののしなやかさ。この構造だけで身体の重さや動きに合わせてくれるのだ。


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 アームの部分はなにげないところだが、天然木のさらっとした感触が手になじむ。太めのスチールパイプでがっちりアームを支えてくれているのは頼もしい。
 オフィスチェアとはあまり関係ないが、私自身老化しているので、座る時、立ち上がる時にしっかりしたアームがあると楽だ。形状は藤森さんデザインのKino Stoolのアームも思わせる。しっかり掴める感じは藤森さんのユーザーへの思いやりではなかろうか。


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 テーブルのデザインは、天板より脚が少しはみ出た形になっていて、テーブルを組み合わせると隙間ができる仕組み。その隙間にコンセントユニットやパーテションを差し込む事ができる。


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 天然木素材の点はカリモク家具の技術の高さが光るところだ。天板はよく見ると三層になっているが、これは主に国産のナラ材を活用する工夫から来ている。
 ナラ材は真っ直ぐ育ちにくいため、木材として加工する際に端材が多く出る。色ムラや節目などは利用価値が低いものとなる。ELMARのテーブルではこうした部分を細かくカットし集成材としたものを使用。中にはやや色目の悪いものや節目のあるものを用い、無駄をできるだけなくした。


その2に続く
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Nedre Foss その2 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33660841/ 2024-01-30T11:36:00+09:00 2024-01-30T11:42:39+09:00 2024-01-30T11:36:18+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[彫刻的、と言っても趣向は様々だ。

Anderssen & Vollがデザインした鉄製のキャンドルホルダーIldhane、木製のトレーMåneやPlatåなどは量産品のかちっとした表情の中に、複雑な曲線が見える。
イタリア人デザイナー、Paolo Lucidi と Luca Pevereの陶製トレイKorgはつるりとした平面と平面の組み合わせで60年代から70年代のプラスチック量産品も思わせる。
かと思えば、小さなとんがり帽子のようなStudio Tolvanenのデザインしたキャンドル消しSammu、水の流れを瞬間で止めたような倉本仁のジャグVannfallなど、手工芸的な趣きが見える物も。


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Nedre FossはデザインチームAnderssen & Vollの主催するブランドだが、自分達がデザインしたもの以外、Anderssen & Vollはプロデューサーに徹し、造形は依頼するデザイナーに任せている。


Vannfallの製作に関して、倉本仁はデザインに3カ月、製造に9カ月くらいで、ものすごく早かった、と振り返る。驚いたことには、この依頼が来るまで倉本とAnderssen & Vollは面識がなかったそうだ。それでもプロジェクトがうまくいったのは、彼らのディレクションが明確だったからだと言う。


「ブリーフィングで強調されたのは、単一素材であることと、彫刻的な美しさ、パワー、と、これだけだったんです。
図面を書いたりモデルを作っていて、もう図面を書くのをやめて手作業で作ったモデルの、この風合いや揺れを形にすることが、彼らの言う「彫刻的」の応えなのではないかと思いました」


素材の指定もなかった。倉本はそのアイデアから「ゴールはガラスしかないと思った」という。インジェクションガラスに決まると、すぐに製造場所を見付け、サンプル制作、調整、と進んでいった。


この作品は代表作の1つになってきていると言う。昨年9月から11月、松屋銀座のデザインギャラリー1953で行われた個展「倉本仁 素材と心中」にもVannfallを展示している。


キャンドル消しSammuをデザインしたStudio Tolvanenにもフィンランド・ヘルシンキで話をきいた。


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(日本には馴染みがあまりないキャンドル消し。キャンドルの上に被せて火を消す。Sammuはフィンランド語で「shut down 停止、休業」の意)


Studio TolvanenとAnderssen & Voll、別々に話を聞いたのだが、Sammuに対してどちらも
「小さいプロダクトだけれど、とても大切な物」
と言っていた。そっと手で包み眺めている様は小さな宝物といった風だ。


Nedre Fossの生産拠点はほとんどがノルウェー国外。
「ノルウェーで作るのは難しい。1970年代に産業が寂れてしまい、ガラスでも鉄の鋳造でも作れる場所がない。高い技術もあったのに残念だ。国内で作れたのは Tolvanenに作ってもらった真鍮製のSammuだけ」とAnderssen & Vollはいう。
この点でもSammuはNedre Fossの中でも特に重要なプロダクトなのだ。


Sammuに限らずStudio Tolvanenが、デザインや制作において大事にしていることを聞くと
「フィジカルであること。アーティスティックになりすぎないこと、でも何かしら新しい物、遊び心はいつも持っていたい。あとはフィーリングですね」
と、答えが帰って来た。


その場では「そうですね!」と思いっきりうなずいて帰って来たのだが、帰路「はてフィーリングとは文字にする時、どう書けばいいのやら」と、ああでもないこうでもないと考えてしまった。そして4カ月。。。


前のポストで、Nedre Fossから大きくショックを受けた、と書いたが、そのショックの理由はいくつかある。
物が溢れる世の中で、デザイナーはどんな物を作っていけばいいのか、そのひとつの答になっていること。単一素材で作ることでリサイクルしやすい環境配慮型であること。長持ちする物であること。彫刻的な強さ=造型的な美しさに改めて向かい会うこと。


この流れで「フィーリング」という言葉を当てはめてみると、なんとなくだが消費者やユーザーとNedre Fossの関係性が見えてくるような気がする。
出会った時に、ふっと心を掴む、それも人それぞれではあるがやはり「フィーリング」で表されることなのではないだろうか。


オンライン消費が増え、実物を見て決める機会も減った。デザイナーやメーカーの創意工夫点もウェブサイトのスペックで見ている。それはそれで便利なのだけれど、物を見た時の嬉しさや直感的に欲しいと思うような感覚がなく、購入した物と自分の関係性は至ってドライである。
Nedre Fossは気持ちに響くプロダクトブランドだ。現在、Nedre Fossをまとめて見れる日本のショップがないのは残念。どこかでまとめて見れると良いのに、と思う。


これからのものづくり、これからの消費、これからの人々の生活を考えるきっかけを作るためにも、Nedre Fossをより多くの人に、直に見て、知ってもらいたい。
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Nedre Foss その1 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33660840/ 2024-01-30T11:35:00+09:00 2024-01-30T11:42:55+09:00 2024-01-30T11:35:44+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[8月にノルウェー・オスロとフィンランド・ヘルシンキ、パリに行き、カルチャーショックを受けてきたことは、このブログでも何度か書いている。



帰って来てからすでに4カ月以上経っているのだが、まだこのカルチャーギャップ、ショックは癒えていない。


Torbjørn Anderssen(トルビョルン・アンデシェン)とEspen Voll(エスペン・ヴォル)によるオスロのデザインチーム、Anderssen & Voll(アンデシェン & ヴォル)が作ったインテリアアクセサリーのブランド「Nedre Foss」https://www.nedrefoss.com も大きなショックの1つだった。


そもそもNedre Fossが立ち上がったのは、2015年オスロにNedre Foss Gårdというレストランができたことに始まる。Anderssen & Vollはインテリアを手掛け、キャンドルホルダーなどインテリアアクセサリーも手掛けた。
鋳鉄でできたキャンドルホルダー「Ildhane」を、レストラン内だけでなく外にも販売したところ300個がすぐに売れたと言う。


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自分達のデザインも継続しながら他のデザイナーにも依頼し、製品を少しづつ増やして行った。
依頼の条件は3つ。


単一素材であること(ナチュラルな素材、少なくとも毒性のない物)
動くパーツを使わないこと
彫刻的な美しさ、強さ


Anderssen & Vollというと(私の世代だと昔Norway Saysにいた2人、と言う方が分かりやすいのかもしれない。四半世紀以上ノルウェーのデザインをリードするデザインチームだ)シーティングを中心とした家具デザインの印象が強い。
なぜこうした彫刻的なプロダクトを作ろうと思ったのだろう。Torbjørn Anderssenはこう説明する。


「ソファのような複合素材の場合、1つの製品を作るのに沢山解消しなくてはいけないことがある。素材同士の相性、新しい組み合わせへの挑戦、異なるサプライヤーからの取り寄せ、そして異なる場所での組み立て、など。そうした問題を避け、もっと単純にできる物を作りたいと思ったんだ。
動くパーツを使うと故障の原因になりやすい。でも固定したプロダクトなら壊れる可能性は低くなるし長持ちする。100年持つプロダクトにしたいから。
本当に単純に、単一素材でできる物を考えてデザインを作って行ったら、結果的にもっとシェイプに注力できるようになったんだ」


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Nedre Foss その2に続く


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カロリーメイトの広告 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33640214/ 2024-01-17T00:22:00+09:00 2024-01-17T00:22:06+09:00 2024-01-17T00:22:06+09:00 dezagen グラフィック <![CDATA[ライター渡部のほうです。

取っておこうと四つ折りにした新聞一面広告。折り目バッキバキでアレですが。


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大学入学共通テストのあった1月14日(日)のカロリーメイトの広告。
上の女の子は鉛筆何本も持って、美大受験。


青い鉛筆はステッドラー、茶色はユニ、ああ、私の時代は他に緑のファーバーカステルの3派があったような、とかいいながら、全種類使う人もいれば、なぜか子供用の鉛筆で芯が均質じゃないところがいいんだ、とか言う人もいたり、消しゴムも練り消しもいいけど、プラスチック消しゴムがいいんだとか、木炭デッサンもやってる子がいて、食パンで消せないと言い出したり、デッサンだけでも色々思い出すものです。


新聞を読んでいる方に「なんでこんなに鉛筆持ってるのかしら?」と思われないかな、と思いましたが、今期のカロリーメイト受験応援のシリーズ、テレビ、YouTubeや駅での広告は11月下旬から始まっていたのですね。


カロリーメイトの広告には毎回、ハッとさせられます。
辛い、苦しい、切ない受験期の受験生の目線をしっかりと掴んで、真っ正面から見て、そこからブレがない。


PR TIMESのリリースによれば
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000045062.html

クリエイティブディレクターはCatchの福部明浩さん、アートディレクターはENOADの榎本卓朗さん、とのこと。




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豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33634382/ 2024-01-12T21:21:00+09:00 2024-01-13T07:52:23+09:00 2024-01-12T21:21:05+09:00 dezagen 展覧会 <![CDATA[ アートのコンテキストというのを深く知らないのだけれど、プロダクト感あるものだったのでブログに少し。


 田中好子を思わせる美人で(という書き出しはルッキズムとして怒られるのであろうか)、いつも電車にぶつかる動物の事を気にされている、同じ大学の同僚先生であるところの豊嶋康子先生が東京都現代美術館で展示をやっているというので見て来た。
 
豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/


 ツボにハマって「ワハハ」とでかい声で笑いたかったのだが、天井の高い大きな会場では響くであろうし、1人で大声で笑っている人がいたらそれは変なのでさすがに声に出すのはやめて心の中で大きく笑ってきた。


作品集から作品説明を抜粋すると


《定規》 直線定規、三角定規、雲形定規、分度器をオーブントースターで加熱する。プラスチックの素材とともに目盛りも歪む。


《鉛筆》 鉛筆の中央付近に芯が出るように、両側から中心に向かって削っていく。1本の鉛筆は2本で向かい合う形となり、内向きの芯を折らない限り使用することができない。


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《口座開設》 銀行窓口での講座開設の手続きで1,000円を入金して、2週間後に届くキャッシュカードを待つ。カード到着後に口座開設時の1,000円を引き出し、別の銀行で口座を開設する。この手続きを繰り返す。
《振込み》 自分の銀行口座にATMから振り込み続ける。「振込みカード」を発行して、すべての振込記録を作品として展示する。


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《隠蔽工作》 キャンバスやパネルの裏側の骨組みをつなげて、何かを収納できる部分や解体しない限りあらわれない密封空間をつくる。裏面の構造強化で作品を保護するのと同事に、隠す仕様そのものが形態を決定する。


 定規、鉛筆、パネルのような「製品」のデザイン、あるいは銀行貯金のような「システム」のデザインは、本来こう使うべき、という予測のもとに設計されている。が、その予測を超えると機能しない、もしくは別の意味を持つものとなる。
(振込カードがこんなにデザインのバリエーションを持つものだとは知らなかった)(これ、誰がデザインしたんですか?と聞きに行きたい)


 作品全てにおいて本物、真剣、膨大であるがゆえに、本来そうではないでしょう、とのギャップがおかしい。


 年末から今に至るまで、私のトレンドは「滑稽」である。人の悩みも漫画に描くと面白い絵になってしまいそうだと考えてしまうとか、臭いをつい嗅いでしまった自分に笑ってしまうとか、滑稽さを探している。
 そして豊嶋先生の作品は非常に滑稽なものだった。
 滑稽をあなどるなかれ。真剣にやればやるほど、真面目であるほど、一歩引いたときの滑稽さが際立つのであって、浅いところには滑稽は生まれない。


 なんで年末からこんな滑稽探しになっているのか考えてみたら、そもそものきっかけが豊嶋先生の展覧会だった。
 12月28日、友人と東京都現代美術館に向かったところ、年末年始の休館がスタートしていた。


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 いい大人が2人して開館日も調べず行く無謀さ。途中で内容の確認でウェブサイトを見たりもしていたのに。行き方を間違えないよう、スマホでバスのトラッキングまでしたのに。休館日。(ついでに言うと1月9日も途中まで行きかけて、祝日代休だった)
 滑稽を笑っていられるのであれば、人生楽しく生きられるような気がする。


 
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サントリーホールの広告 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33620454/ 2024-01-03T20:00:00+09:00 2024-01-04T09:56:54+09:00 2024-01-03T20:00:26+09:00 dezagen グラフィック <![CDATA[もう1カ月ほど前の新聞広告。すごくほっとするものでした。

朝日新聞12月7日(木)の一面広告です。
「赤坂一丁目のぶどう畑」から始まる文章と、イラストレーションを組み合わせたシンプルな構成。
赤坂一丁目に畑なんてあったっけ?と思いながら、読んでいくと、なるほどー、そういう事かー、と。ちょっと心が弾む文章です。


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昨今、紙の新聞購読者も減って、一面広告も減りました。PCやスマホでネットを見たりする間に入ってくる広告は、目の衝撃を優先としているせいか、言葉がなんとなく貧しい。1980年代〜90年代の広告から色々と学ばせてもらった世代としては、寂しい感じもしています。そんな中で見た、読んだ、サントリーホールの広告はこのコピーにひっかけて言えばとてもジューシー。豊かです。
こんな広告をもっと見たいと思います。






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映画『アアルト』 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33520408/ 2023-11-04T00:19:00+09:00 2023-11-04T00:19:55+09:00 2023-11-04T00:19:55+09:00 dezagen イベント <![CDATA[ライター渡部の方です。



10月13日から公開されている映画『アアルト』 https://aaltofilm.com/ 。言わずと知れたフィンランド建築の巨匠。そのアルヴァ・アアルトを追ったドキュメンタリーフィルムを先日見て来ました。


映画館ではメモが取れないので、うろ覚えな所もありますが、
アルヴァ・アアルトとアイノの出会い、共同制作、家庭、CIAM始め海外の交流、家具作りと職人コルホネンへの尊敬、海外での評価、アイノとの別れ、エリッサとの出会いと共同制作、国内からの批判、時代の変化、巨匠化したアアルト、と、いうように細かな切り口から見たアアルトを、建築作品、家具やインテリアアクセサリーの作品と交えながら紹介していきます。


今は見る事が出来ない(はず)ロシア領にあるヴィープリの図書館を見て複雑な気持ちになったり、タイルを並べた後セメント流してよっこいしょと引っくり返してプレキャストコンクリート壁を作っている昔の映像にワクワクしたり、ドローン様様で普通だと見れない屋根が見れたり、見せられるものをありったけ見せますというサービス精神。監督のヴィルピ・スータリさん、ありがとうキートス。


映像と重ねて言葉を残していくのは、同時代を生きたフィンランドの米国の英国の建築家や歴史家や家族。
アルヴァ、アイノ、エリッサ、本人達の映像や音声記録もふんだんに盛り込まれています。こんなに動いているアルヴァ・アアルトを見たのは初めてで、「あ、アアルトって人間だったんだ」などと思ってしまいました。巨匠ってなんだか人間じゃないような来がしちゃうんですけども、しっかり人間でした。


加えて、昔の映像の中国民年金協会ビルができた時に、多分ビルに来たおじさん達の声「こんなに豪華な建築は必要ない。年金を取りに来てるのに」みたいな、ちょっと不満げな声もきちんと入ってるところが、私にはグッときました。


個人的な記憶なのですが、私がフィンランドに行き始めた90年代、若手のデザイナーや建築家は皮肉っぽく「ヘルシンキはどこを見てもアアルトの建築ばっかり(で、ジッブン達が作るスペースがない」とぼやいてました。(その後、ヘルシンキも激変しますが)
映画の中でもアアルトを「巨匠という恐竜」と言っていたと記憶しています。


アアルトの作品が良いよ、素敵だよ、だけではない、アアルトを真っ正面から見た映画でした。
まだまだ上映中なので、建築好きな方は是非に。
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次はいつだ? http://blog.excite.co.jp/dezagen/33508829/ 2023-10-27T01:21:00+09:00 2023-10-27T01:21:37+09:00 2023-10-27T01:21:37+09:00 dezagen その他 <![CDATA[ライター渡部の方です。

前々回のブログに「次に書くネタはもう決まっているのですが」などと書いたのに全然書いておりません。
ノルウェーとフィンランドで取材して、日本で追加取材して、写真も用意してあるのですが。
(取材を受けて下さった方には申し訳ありません…)


諸事あり(世の中の皆さん大抵そうですね)、なかなか集中してブログ文章を考える時間がないのが理由ですが、
最近書いたブログ記事を見ると、長い…。
こんなに力入れて書く必要もないだろうに、というほど長い。


もう少し短く、さっと読んでいただけるようなものを書かねばと思うこの頃でもあります。


ちなみにデザインイベントも足を運んだらクローズの時間、とか、なんだかなーです。


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北欧で思った事(のひとつ)その2 http://blog.excite.co.jp/dezagen/33470509/ 2023-10-01T16:52:00+09:00 2023-10-01T16:52:21+09:00 2023-10-01T16:52:21+09:00 dezagen その他 <![CDATA[ ライター渡部の方です。



 改めてこのブログを見ると、「だ・である」調と「です・ます」調が混在していて読みにくいですね。どうにかしたいものです。
という事をずっとこのブログでも書いているような気がし、15年も迷っている様子。
 おおよそですが、情報量が多く普通に雑誌に書いていた時の調子でまとめたい場合が「だ・である」調に、情報量が少なく、自分の思った事をつらつら書いている時は「です・ます」調になっているようです。あとは自分が50代になって、社会の大半が自分より年下になり、少しでも「感じのいいおばさん」のイメージを狙っているような気もします。
 というわけで、今回は「です・ます」なので、情報量少ないです。


 まだ北欧旅行(8月後半)の事か、と言われそうですが、前回書いた「次に書くネタ」を書く前に前提として知っておいて欲しい事+前提として自分で理解しとかないといけない事、をまとめているのでした。


 さるデザイン関係の方と、デザインの世界(教育、アーカイブ、職能機関、賞などなど)から形はなくなっていくのだろうかという話をひとしきりした後、「とはいえ」と。
 「今はデザインの話より、気候。環境の方が切迫してる」と言われたのが気になっています。


 特に今年の夏は日本が異常に暑かったのと、干ばつ、洪水、山火事と、自然災害ではあるけれど元々の原因に人間の環境破壊があると思われる事が立て続けで起こっています。つい先日もニューヨークで100年1度の大雨被害があったばかり。


 デザインの形を考えるにしても、プロダクトやインテリアであれば素材の問題は無視できず、また置かれる周囲環境も考慮に入れなければなりません。単純な解消方法はないのですが、脱プラ(でなくともプラスチックの量を減らす事)は避けては通れないでしょう。


 今回の旅行ではオスロ、ヘルシンキ、パリの順番で脱プラ度高かったように思います。


 オスロ。スーパーのサラダバーのサラダを持ち帰り。蓋はプラスチックだけれど、容器は紙カップ。スーパーの袋は無駄なので買わず。袋を買っても紙袋のみ。蓋を止めるテープはないので、ドレッシングがこぼれないようがっちり手でホールドし、ホテルまで急ぐ。
 という私と同じ動作でオフィスに戻る人を沢山見ました。
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 ちなみにエコバッグはもうほとんど全ての人が持っているので、店舗で売っているエコバッグや袋は観光客向け(?)なのか、ショップの昔の写真をプリントした袋だったり、フィンランドではムーミンのキャラが着いている袋だったり。
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(こちらはヘルシンキ)


 スーパーマーケットで使い捨てする食器を見ても、ほとんど紙もしくは木製カトラリー。ヘルシンキでは一部バイオプラがありました。店にもよるとは思いますが、オスロではバイオプラ製品も見た記憶がないです。
 
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 ヨーロッパのスーパーマーケットでは当たり前の光景ですが、野菜果物は計り売り。ヘルシンキでスナップを撮った理由は、薄いプラスチック袋があった事。私が行った限りではあるけれど、オスロのスーパーマーケットではこの薄いプラスチック袋を全然見なかったので、あったー!と。
 
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 こちらはパリで。包装ってこれで成り立つな、と感じたスポンジのスリーブ。これは商品自体もセルローススポンジとリサイクルプラスチックの固いスポンジ面を合わせたもの。他の食器用スポンジ製品は普通にプラスチックの袋に包まれてはいましたが
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 地味に追いかけている歯ブラシ。素材を再生プラスチックや竹にする、パーツを軽量化する、ヘッドの部分を取り替えられるようにする、など、環境負荷の少ない歯ブラシが増えて来ました。パリのスーパーマーケットで見たのはハンドルを竹にしたものが多いです。
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 パリからオスロに向かうフライト中の紙コップに「PLASTIC IN PRODUCT」とあったので、「紙」コップでもフィルムの(大概は)ポリエチレンを使っているのをもう見逃さないのだな、と感心。
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 こちらはヘルシンキ空港のコーヒーショップの紙コップ。色合い的に店のグラフィックより、このマークが目立ちます。
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 2021年7月からEUの規則として使い捨てパッケージに記載するものとなったそうです。パッケージ全てではなく以下のものが対象。
 女性用生理用品
 ウエットティシュー
 フィルター付きたばこ
 飲み物用カップ
 詳細はこちら Marking specifications for single-use plastic products
https://environment.ec.europa.eu/topics/plastics/single-use-plastics/sups-marking-specifications_en



 10日間くらいこういう状況で生活して、東京に戻って、プラスチック(ポリプロピレン)の袋に包まれたバナナとプラスチック(PET)ケースの中に入ったブドウを、さらにそれぞれ薄いプラスチック(ポリエチレン)の袋に入れ、透明テープ(ポリプロピレン)で止め、というのが頭を混乱させます。
 
 身近な問題として、このプラスチック天国と地獄状態をなんとかできないものかと思う次第です。
  


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北欧で思った事(のひとつ) http://blog.excite.co.jp/dezagen/33462388/ 2023-09-25T09:16:00+09:00 2023-09-25T10:51:03+09:00 2023-09-25T09:16:18+09:00 dezagen その他 <![CDATA[ ライター渡部の方です。


 次に書くネタはもう決まっているのですが、なかなか書き進めない感じがするので、こちらの話を先に。


 8月後半にノルウェーのオスロ、フィンランドのヘルシンキとパリに行き、久々にヨーロッパのデザインに触れ、改めて気付く事が多過ぎて、実はまだ消化しきれていません。


 まずはデザインの意味が変わってきているというのが一番大きな発見でした。プロダクトもグラフィックも、全般的に形を成さないデザインに移行している印象があります。


 日本だとUIとかUXとかの方が通りがいいように思いますが(一緒にするのもざっくりしてはいるのですけども)、いわゆるサービスデザインの領域で活動するデザイナーが増えていて、プロダクトの分野で家具を作っていくとか、グラフィックの分野で広告キャンペーンだけ作るというような専門職を追求する仕事に向かう人が減っているようです。


 統計を取ったわけでも、何十人と取材して得た情報でもないのですが、今回会った人達からは異口同音にそんな話を聞いてきました。


 例えば、ヘルシンキにあるデザインミュージアムのユッカ・サヴォライネン館長は、今後はデザインの流れがサービスデザインに向かっていくだろうし、割合として有形のものは減って行くだろう、と。ミュージアムとしてはそれを「見せる」事も必要ですが、その場合、文字を中心としてその記録を見せていくことになるでしょう、と言っていました。


 デザインミュージアムでは「Utopia Now – The Story of Finnish Design」 https://www.designmuseum.fi/en/exhibitions/utopia-now-the-story-of-finnish-design/ というフィンランドのデザインの歴史をざっと見れる(デザイン初心者にもデザイン復習者にもとてもいい)展覧会をやっていて、その中にサービスデザインの紹介もあります。
 こちらはその展示の写真ですが、確かに文字ばかり。


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 フィンランドの学校給食を良くしようというプロジェクトで、どうプランを練っていったか、プロセスが書いてあります。英語のキャプションもあるので、そちらを読んでくれば良かったわけですが、文字ばかりだとパッとは意味が分からず、私もさーっと記録写真だけ撮って帰って来てしまいました。


 ソフトウエアの広告など見ていると、グラフィックはツールさえあれば「誰でもできる」と謳っているし、その流れで言えばプロのデザイナーの職能は形を作るだけではない、他の何か、ということになります。
 
 実際「モノ」から「コト」へと変化は日本でもずっと前から起こっているのですが、北欧はインフラの分野、行政がクライアントになる所など、日本よりももっと大胆に舵切りしているように見えました。この辺はもう少しリサーチしていきたいと思っています。


 美しいフォルムを持ったプロダクト、グラフィック、インテリア、テキスタイルなどなどもなくなることはないはずですが、例えば日用品がいつの間に民具、工芸として鑑賞物になっていったように、そうした美しさの追求は「デザイン工芸」的な存在になるのかもしれないと思っています。 


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要らないものについて http://blog.excite.co.jp/dezagen/33421454/ 2023-09-03T00:43:00+09:00 2023-09-03T02:31:48+09:00 2023-09-03T00:43:15+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[ ライター渡部の方です。



 8月の後半にノルウェーのオスロ、フィンランドのヘルシンキと、久々に北欧に行ってきた。デザイナーや企業、デザイン機関を訪ねて話を聞いた事は、思った以上に得る物があった。この話はまた別の機会で書きたいと思う。


 その合間に行ってきたのがチャリティショップ。これは欠かせない。
 チャリティショップは簡単に言うと、慈善団体やNPOが運営するセカンドハンドショップ。利益を慈善事業に使う他、何らかの理由で雇用されにくい人々に雇用機会を与える事も目的としているところが多い。
 ほとんどの商品は一般の人々からの寄付で、家にある不要品、遺品整理したいもの等持ち込みもあれば、街中にある回収ボックスで集める場合もある。小物から家具から本から音楽映像ソフトから、装飾品から何から何まで玉石混淆。その他、様々な理由で販路から外れた新品が並ぶ事もある。


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 運営する団体も赤十字や救世軍、教会、子供や高齢者、癌患者の支援団体など様々、店の大きさも街角の小さなお店レベルから、郊外の倉庫まで様々。


 最近はeBay(日本ではヤフオクやメルカリなど)や、各国での似たような中古品取引オンラインサイトが充実化してきたためか、高い値がつきそうなものは減ってはいる様子だが、それでも思わぬものに出会えるのは楽しい。加えて、(特に価値が付くようなものはオンラインサイトに移行して、価値のなさそうなものが増えているだけに)人々が何を不要としているのか、を見るのも学びになる。


 今回は主にヘルシンキの郊外にあるチャリティショップへ数回。(オスロにもあるのだがきちんと見れなかったのが残念)


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 まずは、どこのチャリティショップでも服が大量に売られている、過去の記憶と比較しても、圧倒的に服の割合が増えている。どこも売り場の半分以上を占め、しかもレールにギュウギュウ。
 世界的に衣料の供給過剰が起こっている、と聞くがあまりリアリティがなかった。こうして不要品となった衣服の塊を見、それが一気に現実として理解できる。しかもこれはほんの一部でしかない。


 ヘルシンキで行ったチャリティショップのPääkaupunkiseudun Kierrätyskeskus Oy(首都圏リサイクルセンター株式会社、で慈善団体とちょっと違うが、資源への意識を高め、雇用機会を増やすという意味でチャリティショップであることは変わらない)。


 ここでは商品から再度商品を作り直すPlan Bというプロジェクトが行われている。私が見たのは布類からポーチやワンピース、パンツなどへ作り直されたものだったが、ウェブサイトを見ると https://www.kierratyskeskus.fi/in_english/plan_b_upcycled_products 家具なども作っているようだ。素材はいくらでもある。アイデア次第で魅力的に生まれ変わっていくのは面白い。


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 さらに面白いやり方だと思ったのは、素材コーナー。布が多くを占めるが、布も素材別に細かく分けられている。引き出しになっているところを見てみると、プラスチックパーツ、針金、使いかけの色鉛筆、半分使った色紙、古い地図、商品の包み紙、ジャムやピクルスの空き瓶など。引き出しのものはほとんどがタダだ。


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 普段の生活で「ゴミ」とされるような半端な物も、回収し、素材別に細かく分別すれば新しい使い方が見えてくる。(美大生の課題制作には夢のような場所である)


 こんなに整備されたリサイクルの環境を見ると、消費の在り方は変化していると感じる。これまで均質な品質を保つ新品が流通し、不要になれば捨てるという流れが普通だったし、その流れがすぐに壊れるとは思わない。だが一方で、不要物は不要ではなく、新しい商品、新しい素材となり得る。
 デザインという分野では、主に均質的な新しいものを作り続ける製造業がベースとしてあったが、不均質な新しくないものをいかに使うか、というのも1つのデザインの方法になってきている。
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OOO http://blog.excite.co.jp/dezagen/33371061/ 2023-07-30T19:41:00+09:00 2023-07-30T19:41:15+09:00 2023-07-30T19:41:15+09:00 dezagen プロダクト・パッケージ <![CDATA[ ライター、渡部の方です。 ビールのおいしい季節になりました(というか暑い)。 で、こんな写真から始まります、今回の「これ誰」。 台湾からの新しい風です。 
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 OOO(Outstanding Ordinary Objects) https://ooo.co.com は台湾人の陳靖雯 (Chen Chingwen チェン・チンウェン)とスコットランド人Nicol Boyd(ニコル・ボイド)の夫妻が2020年から始めたプロジェクト。
 陳は ブランディングを主に手掛けるデザイン事務所 Five Metal Shop https://fivemetalshop.com  の代表を務め、台湾のファミリーマートなどの案件を手掛けている。
 ニコル・ボイドは これまで香港をベースにし、現在台北に移動中のプロダクトデザイン事務所 Office for Product Design https://officeforproductdesign.com の代表。Office for Product Designとしては、これまでローゼンタールやモレスキン、Pupupulaなどヨーロッパや中国のブランドにデザインを提供し、iFアワード、レッドドット、グッドデザイン賞などの受賞歴を持つ。


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 OOOのプロジェクトは、ある日の朝の突然の思いつきから、と陳は言う。
「普通のものをすごくすごく精緻に作ったらどうだろう?」
 そこで選ばれたのが「ビールの栓抜き」だ。


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「ビールの栓抜きは、世界どこにでも安いものがあり、大体同じ形。スコットランドでも台湾でも日本でも。今ちょっとそこの酒屋さんで一番安い栓抜きを買って来たけど、やっぱり大体同じような形で、そしてすごく安い。これをもっと立派な仕上げにしてみたら、みんなが当たり前に安物で使い捨てだと思っていて気も使わない栓抜きにもっと意識が行くんじゃないか、と思ってデザインを始めたんだ」と、ボイドは説明する。


 陳はさらに加える。「バーの中でもっとコミュニケーションを促す事になるかもしれないと思ったんです。台湾人同士は意外にシャイで、バーで隣合ってもイギリスのパブのように他人同士が話を始めるという事はほとんどないですね。でもお店で出される共有の栓抜きがすごく特別なものだったら、話が始まるかも」
普段デザインストラテジーを手掛け、カスタマージャーニーも意識する陳らしい。


 OOOのビール栓抜きは手に持った時にその存在感をきちんと感じるほどの重さだ。また、幾度もポリッシュを重ね、持ち手から輪の部分まで非常に滑らかでずっと触っていたくなる。手の体温が少しふっくらしたステンレスの栓抜きに伝わっていく感じも、栓抜きが徐々に自分の物になっていく感覚のようで面白い。


 話が逸れるが、この感覚はレンゾ・ピアノが1996年にデザインしたイッタラ(旧ハックマン)のカトラリーに感じるものに近い。単に自分が持ってるお気に入りのカトラリーという話なのだが。さておき。


 驚くのは彼らの行動力で、栓抜き体験のために、OOO独自のクラフトビールも作ってしまった事。台湾のクラフトビールメーカー酉鬼啤酒 UGLY HALF BEER https://www.uglyhalfbeer.com と一緒にエールを共同開発。
 さらに、その瓶ビールの容量330mlがきっちりと収まるビールコップも作った。
「これも誰もが思い浮かべるコップの形だけれど、透明度が高く頑丈な無鉛クリスタル製。底も側面と同じ厚さで弧を描くように丸めて、330mlのビールを縁いっぱいまで注ぐとガラスの存在が見えなくなり、まるでビールの塊のように見えるんだ」と、ボイド。


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 台北ではこれらのプロダクトを使い、ポップアップバーのイベント「OOO NOT A BAR BAR」を2020年の8月から9月に掛けて開催。実際にコミュニケーションを促す場を作り上げた。
 さらにさらにプロジェクトは発展し、アイスクリームスプーンとアイスクリームカップにも。こちらもポップアップイベント「OOO NOT A (ICE CREAM) BAR」を2022年10月11月に開催し、来場者に体験してもらった。


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 OOOのプロジェクトはテーブルウエアだけではなく、台湾の工場でよく使われている椅子から発想した椅子へと拡大を続けている。


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 ありふれた、あるいは固有の形に付加的意味を加えるという意味では、例えばアートの分野でジェフ・クーンズがやっていた試み、フィリップ・スタルクの「ルイゴースト」と同様の試みとも受け取れる。
 クーンズやスタルクの例と異なるのは、ステータスでもなく大量生産品でもなく、物を通じて体験を豊かにするものであること。普通の栓抜きやアイスクリームスプーンからすれば高いかもしれないが、高級ブランドにはしたくないと言う。
 ファストファッションに代表されるように、今は世界中で安いものが溢れている状態だ。多くは使い捨ての運命を辿る。そんな中で長く使ってもらい物体験を重ねて行こう、そんな動きが台湾からも広がっている。


 OOOの製品は以下のウェブサイトから購入可能。
https://ooo.co.com/goods



 8月4日(金)までは神保町の
Pharos Coffee https://www.instagram.com/pharoscoffee/ 
東京都千代田区神田神保町1丁目25−4 
でポップアップショップを開催中。




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