Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

韓国から逃げ出すハリウッド?

映像作品の違法ダウンロードや海賊版が深刻さを増している韓国で、ついにハリウッドの全映画会社が自社でDVDを販売することを諦めて撤退することが明らかになりました。


違法ダウンロードや海賊版の横行により、売り上げが半分になってしまったとのこと。


詳細は以下の通り。


innolifeニュース>>>ムービー>>>ワーナーブラザーズ韓国で一部事業撤収


この記事によると、ハリウッドのメジャー映画会社ワーナーブラザーズの傘下で、韓国でのビデオやDVDの販売を手がける「ワーナーホームビデオコリア」が12月31日付けで、韓国内でのビデオおよびDVDの販売から撤収すると発表したそうです。


ワーナーホームビデオコリアは割引店と直接取引を開始して流通構造を新しく開拓したほか、DVDの大衆化のために低価格政策を展開するなどして、過去10 年間韓国のビデオ・DVD市場で1位を独占し続けてきたものの、深刻な不法ダウンロードによる収益減少で、事業を撤収することにしたとのこと。


なお、以下の記事によると2006年にはユニバーサル、パラマウント、ブエナ・ビスタ、20世紀フォックスのホームエンタテインメント部門が軒並み韓国の DVD業界から撤退しており、9月末でソニー・ピクチャーズも撤退したため、ワーナーホームビデオコリアのみが韓国に残っていたそうです。


ちなみに各社の撤退の背景として、海賊版の影響で2008年のDVD市場の売り上げ予想が2002年のわずか半分となったことが挙げられています。


Variety Japan

違法ダウンロード爆増でDVD売れず、ついに韓国からハリウッドの全映画会社が撤退 - GIGAZINE



韓国で違法ダウンロードや海賊版が蔓延しているせいで、ハリウッドの全映画会社が自社によるDVD販売事業から撤退してしまったそうです。実際には、現地の代理店を通して販売は継続するそうなので、韓国でハリウッドのDVDが買えなくなるわけではないようですが。


韓国の著作権意識が低く海賊版が蔓延していることは以前から韓国批判の定番となってますが、最近は日本でも著作権を巡る権利者側と利用者側の対立が激しくなっているため、韓国の状況も人ごとではなくなってきたと思います。
ただ、日本で権利者側と利用者側の対立がいかに激しくても、著作権の利用について何らかのルールを政治的に定め、双方がそれに従うべきだという点では一致しているでしょう。そのような議論に加わったり関心を持っている人も、どのような立場であれ、ルールを定めて守るべきだとは考えているわけです。
しかし日本でも、着メロサイトやP2Pソフトなどで違法ダウンロードをしている人は多く、そのような人たちはルールを定めて守るべきだとはあまり考えていないでしょう。ルールを破っても自分が得するなら良いと考えているのでしょうね。


ただ韓国のように、権利者側が事業撤退を余儀なくされるほど違法ダウンロードや海賊版が蔓延している国では、ルールを破っても自分が得するなら良いと考えている人が多いのでしょう。もちろんルールの必要性について理解している人もいるのでしょうが、社会の主流にはなっていないのでしょうね。
韓国のこのような混乱は、著作権に関する社会的ルールを守るという意識が低い人が多い社会で、ネットが急速に普及するとどうなるかという、一種の社会的実験になっていると思います。
今年前半には、BSE問題に関するデマがきっかけで大規模デモが起こり、社会が大混乱に陥るという事件もありましたが、これも情報リテラシーが低い社会で、ネットが急速に普及するとどうなるかという、一種の社会的実験になったのでしょう。
韓国は「IT先進国」を自称していますが、実際にはITがもたらした様々な問題に関する社会的実験場になってしまってますね。


ただ、韓国にこのような混乱をもたらした著作権への意識や情報リテラシーの低さという問題は、日本にもありますので、日本も同様の混乱を経験する可能性はあると思います。
そう言う意味では、日本にとって韓国の状況というのは、多くの教訓を含んだ他山の石なのでしょう。
著作権問題について言えば、権利者側が著作物の利用をがんじがらめにするルールを押しつけるのに反発するのは良いとしても、完全に著作者の意志を無視してコピーし放題というのはやはりまずいのでしょう。


今後も韓国は著作権を無視したコピーし放題の国になってしまうのでしょうが、そのような国の未来がどうなるのか、社会的実験としては興味深いですね。