今回の題材は、本連載としては久々のMacだ。「MacBook Air」の新型は10月21日に発表されるや(関連記事)、途端に大きな話題となったのは皆さんもご記憶のとおりだ。
今回は、発売後まもなく購入した11インチモデルを使っての感想をお伝えしたい。Macユーザーが称賛し、Windowsユーザーも気になる「新Air」の本当のところを語ってみよう。
ULV版Core 2 Duoにモデルチェンジ
スペックは低いが価格も安い
まず、新Airの概要をおさらいしておこう。新Airは、2008年に登場した前モデルの「薄い」というアイデンティティーを継承しつつ、デザインと作りを変更。13.3インチと11.6インチの2モデルラインナップになった。前モデルは「白い恋人」などのラングドシャ・クッキー的な「縁だけがゆるやかに薄くなる」形状であったが、新モデルはヒンジ部が若干厚い「角丸のくさび」型だ。
今回採り上げるのは11.6インチ(通称11インチ)モデルのうち、店頭販売でもっとも安価なモデル(8万8800円)である。メモリーは2GB、メインストレージとなる「フラッシュストレージ」は64GBである。CPUも「Core 2 Duo-1.4GHz」と、さほど高性能ではない。
アップルは公開していないが、CPUの正体はPenrynベースのULV版「Core 2 Duo SU9400」である。アップルストアでのBTOモデルの場合、クロックが1.6GHzに上がったCore 2 Duo SU9600も選べる。ちなみに13.3型の場合、CPUは1.86GHzの「Core 2 Duo SL9400」もしくは2.16GHzの「Core 2 Duo SL9600」になる。それにともない、2次キャッシュ容量も6MBに増えている。
チップセットは、NVIDIAのGPU内蔵型である「GeForce 320M」。最新のゲームを遊ぶには不満だが、ちょっとした3Dグラフィックスや動画再生支援には十分な性能を備えている。Mac miniやMacBookなどでも採用されていて、同社のエントリーモデルでは標準となっているチップセットである。
13インチモデルは、重さも旧モデルと同等の約1.32kgとなっているが、11インチモデルは、Macとしては最軽量となる1.06kg。「どの製品よりも軽い」というわけではないが、軽量モバイルノートとして胸を張れるレベルになったといえる。実際に筆者が購入を検討したのも、このサイズ感が実現されたからである。
せっかくなので、筆者の仕事用マシンについても解説しておこう。筆者は普段、MacとWindowsの両方を利用している。メインマシンは「MacBook Pro 15インチ・Core i7モデル」だが、取材などで日常的に持ち歩くサブマシンは「VAIO X」(2009年10月発売の初代モデル)だった。
2009年前半より前は、ほぼ10年ほど「メインマシンとサブマシンを同一にする」方針を貫き、「ThinkPad X41」や「VAIO type SZ」、初代MacBook Airなどを利用していた。リストアップしてみると、我ながらいろいろと使ってきたものだと思う。
1台主義をとっていた時代は、必要な性能とモバイル性を実現するのに、別々の製品を使う必然性を見いだせなかった。重さやバッテリー駆動時間では妥協することになるが、「その程度の差なら納得できる」と考えていた。逆に言えば、「モバイルに専用機を使ったところで、得られるものは投資金額ほどではない」と思っていたわけだ。
その意見を変えるきっかけになったのは「VAIO X」である。VAIO Xは最軽量状態であれば約655gしかなく、厚み的にも雑誌を鞄に入れたようなものだ。しかも、最もバッテリーが保つ「Xバッテリー」をつけた場合、バッテリー駆動時間はJEITA測定法1.0値で約20.5時間、筆者の経験上の実働時間でも、11時間程度は保つ。そうなると、常にパソコンを鞄に入れても負担はほとんど感じない。
新Airは薄く、重量も1kg程度なので、VAIO Xに近い使い方ができる。もちろんバッテリー駆動時間や重さだけを比較すれば、11インチモデルでもVAIO Xにはかなわない。しかし、だからといって「新Airには意味がない」というつもりはない。いや、使ってみるとむしろ、新Airは絶妙なバランスで作られた製品であることに気づかされるためだ。
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