「タッチで使うネット端末」と言うと、アップルのアレが思い浮かぶ時期だが、そこにあえて別のアプローチでトライしたのが、シャープの「NetWalker PC-T1」(以下PC-T1)だ。
そのたたずまいから「帰ってきたザウルス」の印象も強いが、PC-T1の試作機をお借りすることができたので、その能力をチェックしてみたい。
ハードは「PC-Z1」とほぼ同等、重さは大幅に軽減
まず、製品の位置付けを確認しておこう。シャープの「NetWalker」は、日本のパソコンメーカーがネットブックやCULVノートに舵を切る中で、あえて「非インテル・Windows」系で攻めた製品だった。
2009年9月に登場した前モデル「PC-Z1」は、CPUにFreescaleのi.MX515(コアはARM Cortex A8、クロック800MHz)を採用し、OSはUbuntu。「Atom+Windows」という組み合わせを「ARM+Linux」に置き換えてはいるが、ウェブやメールといった用途ならば問題はない。Freescaleの提唱する「スマートブック」の一種ではあるが、「家電的に作りあげた」というよりは、PC的なイメージでまとめ上げられたものといえる。
新しいPC-T1は、そのPC-Z1の姉妹機にあたる。PC-Z1は親指でタイプすることを重視した小型キーボードを備える「クラムシェル型」になっていたが、PC-T1はキーボードがなく、タッチパネルを搭載した形状だ。T1はZ1の「後継機」と書かれることも少なくないが、実際には違う。同社でPC-Z1/T1の商品企画を担当する、パーソナルソリューション事業部商品企画部参事の笛田進吾氏は、「フルタッチ型のモデルは当初から考えていたもので、商品企画はZ1の時からしていたもの。クラムシェル型とフルタッチ型は併売になる」と説明する。
実のところ、CPUや搭載メモリーなどは、PC-T1もZ1も同じである。そのため、単純に「Ubuntuが動くスマートブック」としての動作速度などは、手元にある試作機でも、Z1と大差ない印象を受ける。
ただし、本体を持ってみた時の重さやサイズは、PC-Z1よりもかなり軽く、小振りな印象を受ける。重量は約409gから約280gへと大幅に軽量化され、片手で持ってもストレスを感じないサイズになっている。
軽量化に寄与しているのは、キーボード部がなくなったことに加えて、バッテリー容量が減ったこともある。PC-Z1では「最大10時間」であったカタログ上のバッテリー動作時間が、PC-T1では「最大6時間」に減っている。試作機なのでバッテリー駆動時間のテストは割愛するが、PC-Z1での結果から考えると、通信しながら利用した場合はおそらくは3~4時間の動作、といったところだろう。ノートパソコン的に「使いっぱなし」にするには少々心許ない。
内蔵式だったPC-Z1と違い、バッテリーはユーザーが簡単に交換可能となっている。PC-T1で利用している「EA-BL14」というバッテリーは、同社がバッテリー内蔵型電子辞書の別売バッテリーとして採用しているものと同じだ。薄型軽量なので、予備を持ち歩くのは難しくない。
ただし、独立したバッテリー充電器が用意されていないので、充電はPC-T1本体で行なう必要がある。だから実際には「日常的にバッテリーを2本持ち」するのは難しく、出張などどうしても必要な時に、「あらかじめ充電しておいて使う」しかない。
バッテリー2本対応、という機種は意外と多いが、外部にバッテリー充電器がないと、実際には使いづらい。メーカーもその点をきちんと考えてほしい。
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