紺色のひと

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3歳からのおすすめ科学絵本セレクション

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娘マチ子、もうすぐ4歳になります。毎晩読み聞かせをしているせいか、今のところ本好きに育ってくれていて、文字への興味も強くあるようです。平仮名は読めるようになったけれど、まだ字を追っているだけで、読んでそのまま意味をとることはできていないみたい。

さて、マチ子が1歳半になったとき、絵本を読み始めた頃のお気に入りについてまとめてみました。

どんなものに興味を抱くかは子それぞれとは言え、どんな絵本を与えるかという親の意向もありますよね。マチ子は僕が好きないきもの・科学系の絵本も抵抗なく読んでくれるので、なるべく偏らないよう、科学への興味を失わないように気をつけて本を選ぶようにしています。本エントリでは、3歳頃から読み始めた科学に関わる絵本をピックアップして紹介してみたいと思います。

科学とひと口に言っても、生物・化学・天文・人体などなどとても広い分野なので、ここはNHKの名番組「夏休み子供科学電話相談」に倣って、ジャンルごとにまとめてみることにしました。子供が興味を抱きやすい、動物の絵本がどうしても多くなってしまいますが、ご容赦ください。
一応、僕が読んだものを中心にしていますが、一部未読のもの(レビューや内容紹介を参考にし、これから読ませたいもの)も含んでいます。その他、おすすめがあればコメント欄などで教えていただけると嬉しいです。


動物のこと

まずは一大ジャンル、動物編です。

どうぶつのおかあさん (福音館の幼児絵本)

どうぶつのおかあさん (福音館の幼児絵本)

福音館書店のロングセラーです。娘マチ子のはじめての絵本としても紹介しましたが、精緻な絵と動物ごとに見事に描き分けられた親子の姿は、動物への興味の入門にぴったりかと思います。一方、内容らしい内容もないので、1~2歳児向けでしょうか。

ぼく、だんごむし (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

ぼく、だんごむし (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

庭に出て、あれこれと生きものを触るようになった頃に子供が最初に出会うのが、アリやダンゴムシなどの小さな虫です*1。視線が地面に近いとなお気になるのでしょうね。本書はダンゴムシにスポットを当て、マイナーな生きものの生態に迫っています。
→福音館書店|くわしいないよう|ぼく、だんごむし

アリからみると (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)

アリからみると (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)

「ぼく、だんごむし」は貼り絵の描写でしたが、こちらは写真による絵本です。アリ視点で見上げる他の生き物や風景のスケール感を通じて、人間と別の生きものの生活に想像力を働かされるような、そんな内容です。

新版 かぶとむし―かぶとむしの一生 (こんちゅうの一生シリーズ) (福音館の科学シリーズ)

新版 かぶとむし―かぶとむしの一生 (こんちゅうの一生シリーズ) (福音館の科学シリーズ)

男子に絶対的な人気を誇る甲虫の王様、カブトムシ。カブトムシの生活に密着し、生きものとしての生活環を描いた絵本です。

このはなだれの? (おおきなかがく)

このはなだれの? (おおきなかがく)

この本は、いろいろな動物の鼻の写真を(種によっては実物大で)大写しにするというコンセプトのものです。それぞれの動物にとっての鼻の役割なども書かれていて、どアップ写真のダイナミックさと併せて印象深い本です。やっぱりトリは、男の子にも女の子にも人気者の動物、ゾウさん。

しまふくろうのみずうみ (北の森の動物たちシリーズ)

しまふくろうのみずうみ (北の森の動物たちシリーズ)

ちょっと変化球、北海道の木版画家・手島圭三郎さんの絵本です。タイトル通り、シマフクロウの親子の生活……お父さんが湖に餌を獲りに行き、雛がそれを待ち、夫婦が鳴き交わす……を描いた作品です。静かな夜の湖面の雰囲気がとてもよく伝わってきます。「きたきつねのゆめ (北の森の動物たちシリーズ)」「おおはくちょうのそら (北の森の動物たちシリーズ)」などのシリーズ他作品もおすすめです。

ぼくとサンショウウオのへや (福音館の科学シリーズ)

ぼくとサンショウウオのへや (福音館の科学シリーズ)

  • 作者: アン・メイザー,スティーブ・ジョンソン,ルー・ファンチャー,にしかわ かんと
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2011/03/15
  • メディア: 大型本
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偶然図書館で見つけた絵本。家に持ち帰ったサンショウウオを飼うことにした少年と母との会話を通じて、一匹の小さなサンショウウオが生きるためには、少年の家に留まらない広い環境が必要だ、というのを美しい絵とともに教えてくれます。面白いのは巻末の文章。訳者:にしかわかんと氏は京大大学院の準教授で、「この絵本はファンタジーなので現実にはあり得ないことも描かれています」と、作中サンショウウオの足の指や水の飲み方の誤りを指摘する一方、やさしい視点で「生物多様性の一つの側面をリアルに伝えています」と評しています。氏の作品には他にも「オオサンショウウオ みつけたよ (福音館の科学シリーズ)」があるようなので、読んでみようかな。



植物のこと

たねが とぶ (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

たねが とぶ (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

子供に馴染みの深い植物の種といえばタンポポです。本書では、タンポポやペンペン草、シロツメクサなど身近な植物の種子散布を取り上げ、いろいろな種の種類や散布形式があることを教えてくれます。

どんぐり かいぎ (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

どんぐり かいぎ (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)

ちょっと難しいテーマ、「植物による捕食者飽食仮説」を扱った絵本。とはいえ、そんなに難しく考えなくても大丈夫です。どんぐりの実成りと、それを食べる動物たちの数の増減がどのような仕組みになっているのかを、どんぐりの木たちの会議に見立てて教えてくれる本です。
大人が読んでも面白くて、僕は以前別の話題でこの本を取り上げています。
→絵本「どんぐりかいぎ」で学ぶ熊森ドングリ運びの問題点 - 紺色のひと

はちうえはぼくにまかせて (世界こども図書館A)

はちうえはぼくにまかせて (世界こども図書館A)

ちょっと変化球です。植物そのものではなく、植木鉢を預かり育てる男の子を主人公にした絵本。「どろんこハリー (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)」のジオン/グレアムのコンビによる作品で、原題はそのまま「THE PLANT SITTER」。鉢ごとに特徴があり、きちんと管理することで元気になるという当たり前のようで難しいことを、小さい男の子が頑張ってやっているのがいい。

くだものだいすき!

くだものだいすき!

変化球を、もう一球。植物の中でも子供に馴染みの深い「くだもの」について、季節ごとの種類を紹介するとともに、実り(木に実る、地面から生える)のこと、旬があることなどをやさしく語った絵本。「ラチとらいおん (世界傑作絵本シリーズ―ハンガリーの絵本)」のマレーク・ベロニカの作で、鮮やかな絵は見ているだけで楽しい気分になります。
ハンガリーの作家による作品なので、登場する果物に一部馴染みのないものもあります。ネクタリンやクロスグリなど、想像が膨らみますね。国内の果物を描いたものとしては、「くだもの (福音館の幼児絵本)」でしょうか。こちらはもっと易しい内容になっています。




からだのしくみ

植物などよりも、小さい子供がより自分のこととして考えやすいのは「からだ」の話題かもしれません。福音館書店のシリーズに良いものがたくさんあるので、選ぶのに苦労しました。



みんなうんち (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)

みんなうんち (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)

「いろんなどうぶつ いろんなうんち」「いきものはたべるから みんなうんちをするんだね」という名フレーズに代表されるように、生きものが違ったものを食べ、違ったかたちで排泄をするということが五味太郎さんの絵でやわらかく描かれています。

むしばミュータンスのぼうけん (かこさとし・からだの本 3)

むしばミュータンスのぼうけん (かこさとし・からだの本 3)

歯磨きをしないと虫歯になる、というのはなかなか子供にわかってもらえませんが、いわゆる「虫歯菌」の存在をごくごく簡略化して絵本にしているのがこちら。身近な話題でもあり、絵本の中の甘いものがおいしそうでもあり、僕も子供の頃によく読んでいた記憶があります。

おへそのひみつ (かがくのとも傑作集―わくわくにんげん)

おへそのひみつ (かがくのとも傑作集―わくわくにんげん)

「どうしておへそがあるの?」という疑問から、人間の誕生についてまで掘り下げる絵本です。やぎゅうげんいちろうさんの絵では、他にも「びょうきのほん〈1〉 (福音館のかがくのほん)」「おっぱいのひみつ (かがくのとも傑作集 わくわく・にんげん)」など医学系の話題を扱ったものが複数あります。

ほね (かがくのとも絵本)

ほね (かがくのとも絵本)

3歳にもなると、自分の体に固いところとやわらかいところがあることに気づいてきますよね。アニメなどでも頻出するガイコツという記号が、人間みなにあるものだというのはどのタイミングで学ぶものなんでしょうか? 作者・堀内さんの絵本には、この「ほね」の他にも「ちのはなし (かがくのとも傑作集―わくわくにんげん)」があります。




天文・宇宙のこと

このカテゴリ、とても悩んでいます。マチ子との話によく出てくる天文関連の話題は月や太陽のほか、雲など気象に関することなのですが、これらに関する絵本で良いものがぱっと思いつきません。どなたかオススメを教えてください。


しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ―ポーランドの絵本)

しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ―ポーランドの絵本)

気象の中でも雨、特に水に関わることに特化した絵本。「しずくのぼうけん」のタイトルに偽りなし、雨が落ちて地面に染みて川になって海に入って……と大地を循環していくさまが描かれています。

あのほしなんのほし

あのほしなんのほし

僕は星座が好きな子供でしたが、興味が出たのは小学生になってからだったように思います。3~4歳だとそんなに遅くまで起きていないですものね。星座について一から教えようとするとなかなかハードルが高いのですが、この本を踏み台に「星座を見つけよう (福音館の科学シリーズ)」などにステップアップしてもいいのかなと思います。



科学一般

せいめいのれきし 改訂版

せいめいのれきし 改訂版

科学という括りが狭くなるほど、地球と生命の歴史について壮大なスケールで描かれた絵本です。僕が子供の頃から大のお気に入りの一冊で、マチ子にも読んでいたのですが、訳が古いな……と感じていたところ、先日改訂版が出版されました。詳しい内容は別記事をご参照ください。
→絵本「せいめいのれきし」に改訂版が出ました - 紺色のひと

このよで いちばん はやいのは (かがくのとも絵本)

このよで いちばん はやいのは (かがくのとも絵本)

大人になってから知り、お気に入りになった絵本。ウサギとカメの表紙が物語っているように、速度――はやさとおそさは何か別のものを比べる必要がある、というところから話が始まります。人間と陸上動物、魚、鳥、人間が作った機械……とどんどん速いものを比べてゆき、最後には光にたどり着くわけですが、そこで終わらないのがこの本の素晴らしいところです。

このうちゅうのなかには ひかりより はやいものは ないと かんがえられている。
だが、そのひかりより もっと はやいものがある

それは にんげんが あたまのなかに なにかを おもいうかべたり
かんがえたりする ちから、そうぞうりょくだ。

本書では、この世で一番速いのは私たちの想像力であるとし、その想像力の海を干上がらせないように大切にしよう、と結んでいます。こういった流れでも説教臭くならず、シンプルにこの結びにもっていく内容はとても良いです。ぜひ皆さんにもおすすめしたい一冊です。



くさる (かがくのとも傑作集)

くさる (かがくのとも傑作集)

「食べ物が腐る」という現象は、身近にあるものの子供にはなかなか理解されづらいかもしれません。しかし、その現象の説明をきっかけに、動植物の食う・食われるの営み、植物が花を咲かせ落ちた実が土に帰り……という繰り返しを見事に説明しています。最後の「そして、これからもおなじことがつづいていくのよ」というお母さんの言葉が染みます。おすすめ。

はじめてであう すうがくの絵本 (1)

はじめてであう すうがくの絵本 (1)

全3巻のボリューム。「すうがくの絵本」と題されてはいますが、難しい話が書いてあるわけではなく、ものの数え方や共通性、仲間はずれや順番など、子供に無理のない取り上げられ方になっています。僕の子供の頃のお気に入りのひとつで、マチ子にもこれから勧めてみるつもりです。



おわりに

ここまで、さまざまなジャンルの科学絵本を並べてみました。
絵本の素晴らしいところは、とっつき易さとやさしい言葉で、それぞれのジャンルの入り口に子供たちを誘う役割を担っているところだと感じます。ここから興味を持ってもらって、それぞれの分野の楽しさ・素晴らしさに気づいてもらえるような子育てをしたいと強く思います。

ところで、いまさら本エントリをひっくり返すようなことを言うのもなんですが。
科学のジャンル――特に動物分野では、より興味を持った子供は図鑑方面に進みます。ビジュアルも正確だし、図鑑によってはDVDもついていて興味を惹くし、それは当然でしょう。僕もそうでした。本エントリでは、図鑑のあれこれについて触れませんでしたが、子供が大きくなるにつれて僕も学んでいくことになると思います。ここで挙げた本の多くは僕が子供の頃に読んだものですが、図鑑は日々写真や情報が新しくなり、僕が読んでいたものは既に時代遅れになりつつあります。その更新が科学の特徴でもあるからです。
それはそれとして。絵本が科学への入り口のひとつとして機能して欲しいという意味も込め、本エントリを書いた次第です。参考になれば幸いです。

*1:ダンゴムシは虫ではないのですが、便宜上。