2010年 05月 22日
意外と大きなナノの世界? |
昨日はぶつぶつとつまらないことを書いてしまいました。ちょっと反省。あんなこと書いてても、実際のところかなり満足しているんです。いずれにせよ、やっぱりブログには楽しいことを書きましょう。と言いつつ今日はニュートラルなファクトをちょっと考えてみます。でもけっこう楽しいかも♪
低分子医薬品というのは、何かの酵素阻害剤とかレセプターの拮抗剤である場合が多く、その作用(阻害)の強さは酵素反応やレセプターの基質(リガンド)の結合を50%阻害する濃度で比べることが一般的です。これをIC50(50は下付き)といい、アイスィーフィフティと読みます。この値は実験系によってやや変動するのですが、医薬品になるようなものはだいたいナノモルオーダーのものが多いです。ということで、1ナノモル(1 nM = 1 nmol/L)というのは具体的にはどれくらいの感じのものなのか、ちょっと計算してみましょう。
簡単にするために、ここで扱うのは分子量500Da(ダルトン)の化合物であるとします。ちなみに低分子医薬品の多くは分子量300から500の間です。1 nMという濃度は、液体(例えば水)1リットル中に1 nmol(ナノモル)の化合物(物質)が溶けている状態です。モルという単位は絶対量(mol)を表す場合と濃度(mol/L)を表す場合があって紛らわしいのですが、これは私のせいではないのであしからず。
分子量500の場合、1 nmol という量は500 ng(ナノグラム)、または0.5マイクログラムです。1円玉1枚がだいたい1グラムなので、1円玉の1000分の1が1 mg(ミリグラム)、そのまた1000分の1が1マイクログラム、そのまた半分が500 ngです。ひとことで言えば1グラム(1円玉)の200万分の1です。どうやっても目に見えない量ですね。たったこれだけの量が1リットル中に溶けているのが1 nMという濃度です。
どれくらい薄いかというと、1リットルの水に砂糖(分子量180)をティースプーン1杯(約5グラム)溶かすと28 mM(ミリモル)という濃度になります。これでは甘さもまったく感じられないと思いますが、これは1 nMの2800万倍の濃さです。1 km先で針が落ちた音も聞こえるウルトラマンなら感知できるかも知れませんが(笑)、1 nMというのがどれだけ薄いか何となく想像できますね。非常に感度の高い質量分析を使っても、通常このあたりがほぼ検出限界になります。
今度はこの500 ngの中に、この化合物の分子はいったい何個あるのかちょっと計算してみましょう。そう、あれです。使うのはあのアボガドロ数!1モルの物質中には6.02×10の23乗個の分子があります。分子量500の物質が500 ng(つまり1 nmol)ある場合、実際の分子の数としては、6.02×10の14乗個、つまり602兆個ということになります。さっきはすごい薄い溶液だと思いましたが、実は1 nMという濃度は、1リットル中に602兆個もの分子がある状態なのです。ナノと言いつつ、かなり天文学的な数字になりますよね。
ちなみに1リットルの水というのは約56モルで、3.4×10の25乗個の水分子となり、上記で溶けている物質の500億倍の数の分子です。602兆の500億倍? もうどうなってるのかまったくイメージ不可能ですね(笑)。
実際の生物の実験では、例えば96穴のプレートを使うと、反応液のボリュームはだいたい100マイクロリットル(= 0.1ミリリットル)くらいなので、1 nMの濃度の場合その中にある分子の数は602兆個ではなくて602億個くらいになります。それでも世界の人口の10倍の数がわずか0.1ミリリットルの中にいるんだから、そんだけありゃ何かの阻害くらいするだろ!という気にもなりますが、実際はそれくらいでは何も起こらないことがほとんどなのです。
いわゆるナノテクというのは濃度ではなくてサイズの方のナノメートルで語られるものが一般的ですが、溶液のナノテクワールドは、小さいのか大きいのかよくわからない世界といえそうですね。
低分子医薬品というのは、何かの酵素阻害剤とかレセプターの拮抗剤である場合が多く、その作用(阻害)の強さは酵素反応やレセプターの基質(リガンド)の結合を50%阻害する濃度で比べることが一般的です。これをIC50(50は下付き)といい、アイスィーフィフティと読みます。この値は実験系によってやや変動するのですが、医薬品になるようなものはだいたいナノモルオーダーのものが多いです。ということで、1ナノモル(1 nM = 1 nmol/L)というのは具体的にはどれくらいの感じのものなのか、ちょっと計算してみましょう。
簡単にするために、ここで扱うのは分子量500Da(ダルトン)の化合物であるとします。ちなみに低分子医薬品の多くは分子量300から500の間です。1 nMという濃度は、液体(例えば水)1リットル中に1 nmol(ナノモル)の化合物(物質)が溶けている状態です。モルという単位は絶対量(mol)を表す場合と濃度(mol/L)を表す場合があって紛らわしいのですが、これは私のせいではないのであしからず。
分子量500の場合、1 nmol という量は500 ng(ナノグラム)、または0.5マイクログラムです。1円玉1枚がだいたい1グラムなので、1円玉の1000分の1が1 mg(ミリグラム)、そのまた1000分の1が1マイクログラム、そのまた半分が500 ngです。ひとことで言えば1グラム(1円玉)の200万分の1です。どうやっても目に見えない量ですね。たったこれだけの量が1リットル中に溶けているのが1 nMという濃度です。
どれくらい薄いかというと、1リットルの水に砂糖(分子量180)をティースプーン1杯(約5グラム)溶かすと28 mM(ミリモル)という濃度になります。これでは甘さもまったく感じられないと思いますが、これは1 nMの2800万倍の濃さです。1 km先で針が落ちた音も聞こえるウルトラマンなら感知できるかも知れませんが(笑)、1 nMというのがどれだけ薄いか何となく想像できますね。非常に感度の高い質量分析を使っても、通常このあたりがほぼ検出限界になります。
今度はこの500 ngの中に、この化合物の分子はいったい何個あるのかちょっと計算してみましょう。そう、あれです。使うのはあのアボガドロ数!1モルの物質中には6.02×10の23乗個の分子があります。分子量500の物質が500 ng(つまり1 nmol)ある場合、実際の分子の数としては、6.02×10の14乗個、つまり602兆個ということになります。さっきはすごい薄い溶液だと思いましたが、実は1 nMという濃度は、1リットル中に602兆個もの分子がある状態なのです。ナノと言いつつ、かなり天文学的な数字になりますよね。
ちなみに1リットルの水というのは約56モルで、3.4×10の25乗個の水分子となり、上記で溶けている物質の500億倍の数の分子です。602兆の500億倍? もうどうなってるのかまったくイメージ不可能ですね(笑)。
実際の生物の実験では、例えば96穴のプレートを使うと、反応液のボリュームはだいたい100マイクロリットル(= 0.1ミリリットル)くらいなので、1 nMの濃度の場合その中にある分子の数は602兆個ではなくて602億個くらいになります。それでも世界の人口の10倍の数がわずか0.1ミリリットルの中にいるんだから、そんだけありゃ何かの阻害くらいするだろ!という気にもなりますが、実際はそれくらいでは何も起こらないことがほとんどなのです。
いわゆるナノテクというのは濃度ではなくてサイズの方のナノメートルで語られるものが一般的ですが、溶液のナノテクワールドは、小さいのか大きいのかよくわからない世界といえそうですね。
by a-pot
| 2010-05-22 14:46
| 医薬、バイオ関連