社会派サスペンス「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(2017年)をご紹介します。
この映画は実話を基に描かれています。
1966年に国防長官の指示で作成された国防総省のベトナム戦争戦況分析報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」。
時の政権はペンタゴン・ペーパーズを国家機密扱いにし、不都合な事実を隠ぺい。
国民には「戦況は良好」と嘘の内容を発表していました。
負け戦と分かっていても若者達を戦地に送ってきたことを政権は隠していたのです。
そして戦況が泥沼化し、反戦運動が高まっていたニクソン政権下の1971年。
当時一地方誌のワシントン・ポストの社主はキャサリン(メリル・ストリープ)。
夫が急逝したため、専業主婦のキャサリンが社主を継いだんです。
キャサリンは「祖父の意志を自分の代で潰させたくない」と願うものの、経営に不慣れな彼女は役員から軽んじられています。
ワシントン・ポスト編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は熱血漢のジャーナリスト。
スクープのためなら予算度外視のベンは別名「海賊」と呼ばれており、役員たちは彼に不安を抱いています。
ある日ベンのデスクにペンタゴン・ペーパーズの一部が何者かによって持ち込まれます。
ベン達が記事にしようとした矢先、ニューヨーク・タイムズがペンタゴン・ペーパーズを先に記事にします。
政府は機密情報を開示したと非難、ニューヨーク・タイムズに即差し止めを請求。
「もしワシントン・ポスト誌がペンタゴン・ペーパーズの暴露記事を出せば社が潰される」とキャサリンに言われるベンですが、内密に残りのペンタゴン・ペーパーズを入手し、記事を掲載しようとします。
しかし、役員達と顧問弁護士は「キャサリンとベンは牢獄行きになる」と猛反対。
記事を掲載するか否か、社主のキャサリンにその重大な決断が委ねられるのです。
新人経営者キャサリンの決断がいかに重いものだったかがより理解できる作りです。
孤独だし、負ければ失うものがあまりに大きすぎるのです。
キャサリンもベンも、ラクな判断をするか、それともリスク承知で真のジャーナリズムを貫くか、という選択に迫られるんですね。
信念、生き方が問われる瞬間なんです。
本作はジャーナリズムとメディアの役割、それを果たすためには鋼の信念が必要であることが描かれています。
ただ、ラストシーンをエンタメ的にしたのはスティーヴン・スピルバーグ監督の悪いところ(あるいはスピルバーグらしさ)かな。…
しかし、キャサリンやベンのようなジャーナリストが掲げる報道の自由という言葉には重みがありますね。
「大統領の陰謀」や「スポットライト 世紀のスクープ」もそうですが、文字通り命懸けでジャーナリズムを貫いたジャーナリストへのリスペクトがあります。
日本のマスゴミとは全く違いますね。