浜松市

浜松市で地域情報化政策の取材。浜松市はオートバイや楽器等を中心とした工業都市として知られる。浜松市の行政の特徴については、竹内宏が次のように述べている。「浜松市は国や県の政策を当てにしないから、政策能力を高めることができた。浜松市役所は他の自治体にくらべて人事のローテーションが長い。特に商工部にはその道10年以上の行政経験を持つベテランがいる」(『「浜松企業」強さの秘密』東洋経済新報社、2002年,p.25)。もとは天竜川沿いの綿や木材を集積する、木綿工業や木材加工の拠点であったが、そこから織機やピアノ、そしてオートバイなどの輸送機械産業へと進展した。明治末には国鉄の工場も誘致されている。航空自衛隊の町でもある。
 昭和59年、浜北市、天竜市、細江町、引佐町とともにテクノポリス指定。「音と光と色の未来都市づくり」をテーマとして、メカトロニクス、光、マイクロエレクトロニクス、航空機、新材料の五分野が重点領域である。浜松市内の都田地域、および、市外のテクノランド細江、浜北リサーチパーク、浜北姥ヶ岡工業団地などが拠点として開発されてきた。とはいえ、外部地域からの企業進出はほとんどなく、もともとこの地域にあった企業が入居している。浜松テクノポリスを研究した大塚昌利『地方工業都市の地域構造:浜松テクノポリスの形成と展望』[1986]ではその問題点を、1)地価が高く、用地買収が困難、2)産業の育成と配置・役割分担の問題、の2点にまとめている。但し、テクノポリス構想全体の中で相対的には上位にあり、平成14年に出た成果報告書では、「工業従業者数」で「信濃川地域」に次いで2位、工業出荷額と工業付加価値額では全国1位、との成果を誇っている(数字は平成11年度)。
 浜松市は情報化政策には早くから取り組み、現在でも機関系ソフトの多くはCOBOLで自ら組んでいる。平成3年度には「テレコムタウン」の指定を受け、さくら総合研究所が「浜松テレコムタウン構想」をまとめた。浜松地域トライアングルネットワーク、三遠南信トライアングルネットワークの設置を提案。平成4年9月に旧郵政省の「テレトピア」地域指定を受けた。浜松の特徴としては「音楽文化情報システム」があるが、これはインターネットで音楽文化情報を配信するものである。テレトピア関連では、平成6年5月にはコミュニティFM「浜松エフエム放送株式会社」が、平成7年4月にCATV「浜松ケーブルテレビ株式会社」が、それぞれ第三セクターで開局している。ケーブルテレビの加入世帯は、平成15年4月1日現在で、29.321世帯である。株主は、筆頭がスズキ、以下、静岡新聞社、中日新聞社、浜松市、遠州鉄道、などである。
 平成5年には全国に先駆けて、ワンストップサービス(総合窓口システム)を実現し、これによって平成7年度には「行政情報化部門」で自治大臣表彰を受けた。
 平成6年に、旧郵政省の「ハイビジョン・シティ」「自治体ネットワーク施設整備事業」の地域指定を受けた。前者によって、「アクトシティ浜松」(500インチ、200インチ)「市庁舎市民ロビー」(55インチ)「浜松まつり会館」(55インチ)「地域情報センター」(200インチ)の四ヶ所にハイビジョンシステムが導入された。ハイビジョン・ソフトも「とっておきの浜松まつり」「世界へのシンフォニー 未来都市 浜松」の2本が製作されている。ハイビジョン上映会を平成9年度から行っており、年間数百人を動員している(平成15年度は「源氏物語『あさきゆめみし』」と、オペラ『スペードの女王』を上映し、計337人)。後者によって、「浜松市地域情報センター」を整備。地域情報センターは平成9年5月14日に、設立された鉄筋五階建ての建物で、インターネット・サロン、ホール、研修室、会議室、スタジオ、コンピュータルーム、教育ネットワークセンターなどを備える。1階には無料インターネット体験パソコンを3台備えている。有料部分には、テレビ会議システムやハイビジョンを備えたホール、パソコン約20台を備えた研修室、70インチプロジェクターやテレビ会議システムを備えた会議室等が用意された。
 平成13年度から五ヵ年計画で「浜松市情報化計画」が策定されている。国の電子自治体、IT立国政策に対応し、「新時代に対応した電子行政システムの構築」を目標に、「市民サービスの向上を図る情報システムの推進」「地域の活性化に寄与する情報交流の推進」「迅速・的確な行政事務の推進」の三つを基本方針とする。
 浜松市は、浜北市、天竜市など12市町村での広域合併を進めており、実現すれば人口は約80万、面積は日本一の巨大都市が誕生し、政令指定都市を目指す。合併に伴うシステム統合のため、情報政策課では1年半、政策的なことは凍結されていた。山間部が増え、全域にCATVや光ファイバーを敷設しようとすれば数十億円の経費が見込まれる。