ラノベ作家のメモと戯言

ラノベ作家の相崎壁際です。第13回GA文庫大賞で「ガンガンGA特別賞」を受賞。デビュー作『どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる』は2巻まで発売中&コミカライズも連載中です。

2巻発売から3年ぶりに『どうか俺を放っておいてくれ(ぼちかの)』3巻の制作が決定したよ~って話!

ぼちかの3巻、制作決定しました!

なんと、GA文庫で刊行されているライトノベル『どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる(ぼちかの)』の3巻制作が決まりました!!うお~~~うれしい!

2巻が出たのが2021年11月なので、なんと3年ぶりです。

3年ぶり3巻目の刊行、最近強くなってきた高校の甲子園出場回数みたいだ。

 

「重版しておらず『このライトノベルがすごい!』などでランクインしたわけでもない作品の続刊が、前巻の刊行から約3年ぶりに決まる」というのはライトノベル業界全体でも珍しい事例だと思います。

せっかくなので、このブログでは『ぼちかの』の歴史を振り返ってみようかと思います。(『ぼちかの』のことは知らずにブログだけ読んでる人もいるかもしれないですしね)

 

・目次

 

GA文庫大賞受賞~1巻刊行(2020年9月~2021年7月)

『ぼちかの』は2020年9月、第13回GA文庫大賞の前期で入賞した作品です。ちなみに、受賞時のタイトルは『ぼっちの俺は終わった高校生活を変えられない』でした。出版時のタイトルにもちょっと面影がありますね。

応募原稿を書いたのはちょうどコロナでゴタゴタしてた時期で、世間はヤバそうだけど呑気にラノベ書いてていいのかな~とか、ウチの会社どうなるんかなとか、リーガルリリーの『1997』ってめっちゃ良い曲だな~とか色々考えてた気がします。

 

応募原稿もキャラクターや話の大筋は出版時と変わってないんですが、全体的に若干暗かったかも。

今でこそタイムリープラブコメはライトノベル内の一ジャンルとして確立された感がありますが、応募時点ではそんなに目立ってなかったと記憶してます。そもそも2018~2019年くらいまで「ラブコメ冬の時代」って感じにだったし。

近い時期だとGA文庫から『高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果』が出てたのと、応募した直後に『厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由』の情報が発表されて「ちょっと被ってるな……」と不安になったくらいでしょうか。

 

そこから当時の編集さんと二人三脚で改稿を重ねているうちに第13回GA文庫大賞の通期結果発表があり、めでたく『ガンガンGA特別賞』という賞をいただきました。

ガンガンGA特別賞は賞金がちょっと低い代わりに(?)最初からコミカライズ確約という賞でして、ちょうど第13回から創設されたのですが第15回くらいには消えてました。結果的に歴代受賞者は自分だけという謎の賞になっています。なんだったんだアレ。

 

なんやかんやで原稿も出来上がり、2021年7月に『ぼちかの』1巻が発売されました!

イラストは間明田先生!どのキャラクターも可愛く描いていただけて、最初にキャラクターデザインが届いた時からテンション爆上がりだったのを覚えています。

受賞作ということで、店舗特典のタペストリーも出ました。作者にも見本として送ってもらえたので、今も家に飾ってあります。

 

PVも作ってもらいました。いま見たら「3巻おめでとう」ってコメントがいくつか付いててあったけえよ……ありがとうね……。

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さらに、発売と同時にKindle UnlimitedとかBookwalkerの読み放題に追加されるという施策もありました。

これが上手くいったのかどうかは編集さんサイドのみぞ知るという感じですが、その後同様の施策が続いたという話は寡聞にして知りません。とはいえ、1巻のAmazonレビューがかなり多い理由のひとつなのは間違いないと思います。

 

2巻刊行、実質的な打ち切り(2021年11月)

1巻が刊行される裏で2巻の制作が進められ、2021年11月に『ぼちかの』2巻が発売されました。これまで新人賞への応募作しか書いてこなかったので、「話の続きを書く」というのが人生初でした。大変なところは多々ありましたが、楽しかったですね。

新しいイラストもたくさん描いていただけて、最高に嬉しかったな~!

 

そんなこんなで2巻が出たわけですが、ついぞ編集さんから「3巻を書きましょう」という話は出ませんでした。

明確に打ち切り宣言を受けたわけではないものの、こちらも2巻の初版部数がわかった時点で「こりゃ3巻は難しいな」と察していたので、3巻の話が出ない時点でそういうことなんだろうな……とわかりました。

 

当然ながら落胆しましたが、読者として3巻を出せるシリーズの少なさは理解していましたし、相応に厳しい世界だというのも重々承知していましたから、「仕方ないよな……」と切り替えることはできました。

読者さんから感想がもらえるのが嬉しすぎて、すでに十分プラスだなと感じたのもあります。作品を読んで「面白かった」と言ってもらえるの、本当に嬉しいんですよ……!

 

とはいえ、読み放題に追加されていたのと読者さんの評判がよかったおかげで、電子書籍のランキングは常にGA文庫内の上位にいる感じでした。

他の作品の売上とかは知る由もないですが、たぶん同時期に発売された作品の中でも、電子書籍の売上は高い方だったのではないかなと推測します。

 

コミカライズ連載の開始(2022年6月)

2巻の発売から半年以上が過ぎ、読者さんから「3巻はいつ出ますか?」と聞かれるたびに内心で「申し訳ない……」と泣いて謝りつつ、新しい編集さん(前編集さんは転職)と新企画に取り組んでいた2022年6月。

なんと『ぼちかの』のコミカライズが始まりました。そう、「ガンガンGA特別賞」で確約されていたアレです。コミカライズは四季ムツコ先生に担当していただきました!

 

ものすごく漫画が上手いし絵が可愛い!!!最高!!!

原作がキャラクターの掛け合いメインの作品なので、「これを漫画にしても動きがなさ過ぎるのでは……?」と不安だったのですが杞憂でした。原作を丁寧に読みこんでくださった上で漫画的な表現を組み合わせて、原作以上の面白さに仕上がっています!

マンガUP!さんで連載中ですので、是非どうぞ~!!

www.manga-up.com

素晴らしいコミカライズにしてくださった四季先生には感謝してもしきれません!自分も原作者として毎話ネームや原稿をチェックするのですが、いつも読者みたいにワクワクして読んでますしね。最初に読めるのは原作者の特権!

四季先生のおかげで読者さんからの評判も高く、コミカライズは原作2巻の範囲に突入しています。コメントも毎回たくさん付いていて嬉しいです!

最新4巻も発売中です。コミカライズには貴重なヒロイン視点のSSも収録されておりますので、原作読者の皆さんもよろしくお願いします!

 

たまに読者さんから「どうして3巻出ないのにコミカライズしたんだ?」という疑問をいただきますが、このコミカライズは先述の通り「ガンガンGA特別賞」のおかげで始まったものです。よって、コミカライズが始まったことと原作の売上とは関係ないんですね。

仮に原作の売上によってコミカライズの有無が左右されていたら、『ぼちかの』がコミカライズされることはなかったかもしれません。(それくらい売れていたら3巻もスムーズに出ていたでしょうし)

 

作品への反響

もともと『ぼちかの』は原作読者さんからの評判が良かったのですが、コミカライズをきっかけに原作へ手を伸ばしてくれる読者さんも大勢いました。

これは感覚ですが、他のラノベ原作のコミカライズよりも原作に手を伸ばしてくれる率がかなり高かったんじゃないかと思います。これもすべて素晴らしいコミカライズにしてくださった四季先生と、魅力的な原作イラストを担当してくださった間明田先生のおかげです!ありがとうございます……!

 

コミカライズの更新や単行本の発売、セールのタイミングで電子書籍の売上ランキングで上位になるなど、発売から時間が空いてもじわじわ電子書籍の売上が伸びてるのは感じていました。

 

とはいえ、原作に重版がかかったというわけでもないため、そう簡単に3巻制作が決定するはずもなく。(2巻の在庫は途中でなくなったのですが)

2巻が発売されてからかなり時間が経っても読者さんから「3巻まだですか?」というメッセージがたくさん届いており、「嬉しい~!」と「ごめんね……」の間を反復横跳びしておりました。(2巻発売から3年近くの間、以下のようなメッセージがたくさん届いてました!皆さんありがとう……!)

 

こういう温かいメッセージに「嬉しいよ!でも3巻は厳しいです……ごめんね……」って返信するのが本当に申し訳なかったです。もちろん嬉しいし続刊につながる可能性もあるので、読者さんは気にせずどんどん送ってください!いつもありがとうございます!

とはいえ3巻が出ないことに関しては、原作者として忸怩たる思いでした。原作イラストもコミカライズも素晴らしいので……。

 

3巻の制作決定(2024年10月)

なんやかんやで月日は過ぎ、2024年10月のある日。編集さんから「『ぼちかの』の3巻が出せるかもしれません」と連絡が。

 

……え?今!?もう2巻の刊行から3年くらい経ってるけど!?

 

もちろん驚きました。重版していない作品の続刊が最後の刊行から3年経っていきなり出るなんて話、少なくともライトノベルでは聞いたことなかったですし。

編集さんによると、重版こそしていないものの刊行からずっと電子書籍の売上が高く、読者さんからの応援の声も大きいので企画会議が通りそうだというお話でした。(Amazonレビューが多い&好評なのも後押しになったそうです)

 

こちらとしては拒否する理由もありませんので、喜び勇んで、でも企画会議で落ちても凹まないように心の中で保険かけつつお受けしました。

そのままあれよあれよという間に企画会議は通過。展開が早すぎて着いていけてなかったし、ギリギリまで「もしかしたら自分の早とちりかも……?」と疑心暗鬼になっていました。

ですが無事に10月25日、『ぼちかの』3巻の制作が発表されました。

皆さんに喜んでいただけて本当によかった~!

 

そして自分はまったく知らなかったのですが、間明田先生にもサプライズでめちゃくちゃカワイイ花見辻さんのお祝いイラストを描いていただきました!!嬉しすぎる……!!

 

2巻の刊行後も間明田先生は定期的に『ぼちかの』を気にかけてくださっておりまして、感謝してもしきれません……!

間明田先生、重ね重ねありがとうございます!今後もよろしくお願いします……!

 

自分のツイートにもたくさんの読者さんからコメントをいただきまして、本当に大勢の方に支えられているなあと実感しました。

3巻ではその期待に応えられるよう、頑張ります!!

 

イレギュラーな事例

先述した通り、今回の件はかなりイレギュラーな事例だと思います。

『ぼちかの』は原作に重版がかかっておらず、コミカライズも好評なものの重版には至ってないので……。(ちょっと前にガガ〇の某作の2巻が数年振り出るという話がありましたが、あれは1巻が何回か重版してたはず)

 

もちろん電子書籍の売上が継続的に良かったことが大きな要因ですが、それに繋がったのは以下の点かなと思います。

 

・原作読者さんが2巻の刊行後も根強く応援してくれたこと。

・素晴らしいコミカライズが続いており、新規読者さんが継続的に増えてくれたこと。

・作者がSNSをやっていて、読者さんが応援メッセージを送りやすかったこと。

・読者さんのメッセージに作者が返信しており、反応が外から見えやすかったこと。

・原作が面白かったこと!(自分で言うのもなんだけど流石に言わせてください)

 

色々と恵まれていたなーと思います。

そして何よりも読者の皆さん、本当にありがとうございました!皆さんの応援には、3巻の内容で恩返しさせていただければと!

 

あくまで『ぼちかの』が珍しい事例なので、「他の作品もこうなるかも!?」という期待が広がるのもなんだか心苦しいのですが……でも実際あるかもしれないしな……。

とはいえ、実は『ぼちかの』の3巻制作が発表された後の12月に、同じGA文庫から『泥酔彼女』の3巻が出るという発表もありました。重版状況については把握してないのですが、これも数年振りの続刊というイレギュラーですね。

今後こういう流れが増えていく可能性も無きにしも非ずかも。

 

長々と書きすぎたけど、とりあえずこんな感じですかね……。

まだ刊行日とか詳しい諸々が未定なんですが、今日はひとまず報告までということで。3巻もよろしくお願いします!

 

また、2024年6月には新作の『美少女生徒会長の十神さんは今日もポンコツで放っておけない』も刊行しました!こちらも森神先生の素晴らしいイラストで彩っていただいておりますので、是非よろしくお願いします!面白いよ!

aizakikabegiwa.hatenablog.com

それではまた。

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