空ゴト日和の庭

主に本とゲーム

2024年10月読了本まとめ

◆特に面白かった本

魔女の檻 (文春文庫)能面検事の奮迅 (光文社文庫)病葉草紙 (文春e-book)

 

「魔女の檻」J・ルブリ

これはすごく面白かった。

とある街で起こった大量殺人の真相を教えてあげると、新人記者に事件ファイルが渡されるところから始まる。それは、魔女の呪いという因習が漂っている街に新しく赴任してきた警察署長ジュリアンが体験した自殺にしか見えない謎の怪死事件を解決しようと奔走する物語だった。一見不可能に見える犯罪のオチとしては、本格的なものから夢オチ、幻想系、未知の毒物・科学的のもの、叙述トリック的なものなど色々思い浮かべるものがあり、そのどれにあたるかと考えながら読み進めたのだけど、そういうものが大好きな私としてはかなり楽しめた。誰もいない場所から聞こえる声、自分にしか見えない人、監視されているかのような何かの気配、それらを感じて奇矯な行動に走る人々。そこに至る真相が目に見えた瞬間は気持ち良い。面白かったです。

「能面検事の奮迅」中山七里

能面検事シリーズ2冊目。ことによると、1巻目以上に面白かったかもしれない。どんな時も冷静沈着で表情が変わらないことから能面検事と呼ばれる不破俊太郎の事件簿。前回は、この不破検事がどんな男なのかと知るために語り手たる美晴とぶつかるシーンも多かったが、今回はその辺のイロハがわかった状態で進行するのでストレスはない。東京地検から派遣されたチームと対立しながら事件の捜査がされていくのだが、その中に中山ワールドの共通人物らしき岬検事がいるのが面白い。対立しているはずなのに、ちょいちょい情報をわけあったり、二人で頭良い人同士のわかりあったような会話をしてバディ感が出ていたりと、何となく、敵役なことが多いイメージの岬検事が、今回は味方に近いかっこいい役割だった。事件の内容も普通にミステリーとして面白くて、中山七里さんはもはや安心して読める作家の一人になっている。まだまだ読んでいない作品もたくさんあるので、これからもどんどん読んでいきたい。

「病葉草紙」京極夏彦

江戸中期の話。京極堂シリーズの"これは妖怪のせいです"を、“これは虫のせいです”といって事件をまるく収めてしまうバージョンのような話。戦国時代の医学書『針聞書(はりききがき)』から着想を得た話らしい。かつて病は虫のせいと思われいたらしく、それこそ妖怪のような謎の落書きめいた絵が説明文とともに描かれている。貧乏長屋の大家である藤介が不可解な事件を店子である棠庵相談しにいくのだが、真実を言うと差し障りがあるということで虫の所為だといって有耶無耶にさせてしまう。全体的に軽い雰囲気で、気軽に読めるタイプの話です。ただし、本自体が物理的に重くて、めちゃくちゃ読みづらかったです。ふりじゃなくて、分冊版も出して欲しかった。巷説シリーズに関しては文庫待ちです。

â—†

10月の読んだ冊数は7冊。なんとなく、ミステリーを読む傾向になってきている。数的にはあまり読めてないものの、大体何でも面白かったので、わりと楽しい読書ライフではありました。単純に時間の問題。この時間が解決する時は来るのでしょうか。

 

以下、読書メーター。その他作品の話が少しあります。

 

10月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2528

魔女の檻 (文春文庫 ル 8-2)魔女の檻 (文春文庫 ル 8-2)
読了日:10月31日 著者:ジェローム・ルブリ
能面検事の奮迅 (光文社文庫 な 39-4)能面検事の奮迅 (光文社文庫 な 39-4)
読了日:10月25日 著者:中山七里
日本扇の謎 (講談社ノベルス アL 20)日本扇の謎 (講談社ノベルス アL 20)
読了日:10月23日 著者:有栖川 有栖
十三歳の誕生日、皇后になりました。10 (ビーズログ文庫)十三歳の誕生日、皇后になりました。10 (ビーズログ文庫)
読了日:10月15日 著者:石田 リンネ
第一王女ルシアの帰還と華麗なる快進撃 海の守護騎士との出逢い (ビーズログ文庫)第一王女ルシアの帰還と華麗なる快進撃 海の守護騎士との出逢い (ビーズログ文庫)
読了日:10月14日 著者:石田 リンネ
病葉草紙病葉草紙
読了日:10月12日 著者:京極 夏彦
家に棲むもの (角川ホラー文庫)家に棲むもの (角川ホラー文庫)
読了日:10月06日 著者:小林 泰三

読書メーター

 

◆その他の話

石田リンネさんの新作「第一王女ルシアの帰還~」

おそらく、『十三歳の誕生日~』の莉杏の物語が終わりを迎えたことで、新作をということなんだろうけど、話の内容的に層は被らないので大丈夫だろうかという気はしました。どちらかと言えば、一作目の『おこぼれ姫~』に近い。主人公の女の子が強い王女であり、おそらくこれから周りを圧倒させていくであろう予感をさせる物語。私としては、普通に面白そうとは思ったものの、『十三歳の誕生日~』は作者にしては珍しく、主人公の女の子が好き好き大好きと恋愛色を前面に出してくるタイプで、これ系に代わる新しいシリーズがあっても良かったなぁとは少し思いました。

後、時系列的に、『茉莉花官吏伝』のネタバレがあったらどうしようと密かにドキドキしていたのですが、それはなかったのでほっとした。キレイに白楼国の話はなかった。『茉莉花官吏伝』は永遠に続いて下さい。そんでもって、莉杏たちもちょいちょい登場してくれたら嬉しい。

Â