探査機「はやぶさ」と、それから

巷に吹き荒れた突風に触発されて「はやぶさ連鎖(凱旋版)」を作ってみる。

「隼」の文字が燃えながら蒸発していくが、保護された固ぷよは無傷のまま地上に到達みたいなコンセプトで

さて、本題

ここ一ヶ月ぐらい、はやぶさが作り出した巨大な風に驚いている。地球を出発前するのネット界隈を思い出すに、購読していた惑星協会のメルマガですこし宣伝されていたなあ、くらいの印象しか残ってないが、帰ってくるときにはニューヨークの戦勝凱旋パレードよろしく熱狂的な歓声につつまれている。*1

もう満点の成功とはなにかについて説明する必要はないし、工学試験衛星とならんで「探査機」という言葉を前面に押し出すことになんの不安もない。広報の面でも実証の面でも非常に成功したプロジェクトだ。今後サンプルの有無にともなう多少の非難があったとしても、それを吹きとばせるだけの流れがある。

旋風の行方

ただ、これほどの旋風が今後どういう方向に向かうのかはすこし不安にさせられてきた。「はやぶさ2」の予算に対して読売が妙にブチキレていたかと思えば、twitter界隈ではライブ中継しなかったことに対してNHK_PRあたりにすさまじい風圧が加わった。あるいは一部でDS1やスターダストの成果を剽窃する不正確な賞讃が海外に垂れ流されている。政党派間の銃撃戦にもちいられたり怪文書が出回ったりと、風向きが四方八方に拡散しつつある。

そして何より、もはや時間の問題だったJAXA内部への吹き返しがやはり来たかとそわそわする。

日本の国際的なプレゼンスを最大限に発揮できる分野への選択と集中が必要と説く人たちにとっては唾棄すべき存在なのだろうけど、私にはISASはあくまでも大学の共同利用機関であってほしいという身勝手な願望がある。特定の研究テーマが限られた宇宙リソースを長期的に占有することには消極的になってしまいがちだ。年間500億でも600億でも科学衛星に使えるのならともかく、例えば矢継ぎ早のシリーズ計画などで・・・、というわけで、ここから先は地雷を踏みそうなので不用意に書くべきじゃないのかもしれない。

誰が突き上げたかしらないが、政治の方でははやぶさ2の予算が前向きに検討されているそうだ。そのことだけで考えるなら素直に喜べる。ただ、過去の経緯からして全体の予算は増えずに他の宇宙計画を圧迫してねじ込んで一件落着の構図が脳裏にちらつく。はやぶさ2コールの効果については、結局のところ外圧を利用したパイの奪い合いで、現状でISASの予算が増える流れはあまり期待していない。

また「敵は相模原にあり」みたいな動きはISAS内の不和と不満を増やす方向になるのではないかとすこし怖く思う。別に障害になっているとされる人たちだって日本の宇宙計画を潰したいと思ってそこにいるわけではないだろう。彼らは「はやぶさ2」の道程を塞ぐ石ころではない。多様な未来を思い描き、多様な夢がある。

他の計画、たとえばASTRO-HもASTRO-Gもはやぶさ2と同じくらい応援してるし、大事だと思っている身としては、何を語りどう振る舞うべきかすこし悩む。

*1:母集団を半径数クリックから日本全体に拡大すればそこまで注目されていないにしても、JAXAとその統合前組織に関する話題でここまでプラスの反響は近年で例のないことだ。まさか、ほにゃらら青雲までもが言及するほどの反響なんて1年前には想像すらしてなかった。