いつだって迷わない、キヨスクは駅の中、そんなの有名
「ちびまる子ちゃん」の主題歌にもでてくるKIOSK(キヨスク)、皆さんは御存知でしょうか。昭和・平成を駆け抜けた皆さんは、JRの駅のホームにあるやつね!とピンとくる方も多いと思いますが、そうです、あの駅のホームにある売店KIOSK(キヨスク)です。
最近はKIOSKは減少の一途をたどり、NewDays(ニューデイズ)などのコンビニ業態にどんどん変わっているので、若い方にとっては「そんなの有名」じゃなくなってるかもしれませんが、本日ご紹介するのは駅の売店・KIOSK(キヨスク)を舞台にしたマンガ「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」です。我ながら目の付け所のシブさに感心します。
まずは基礎知識から。KIOSK(キヨスク)はJRがまだ国鉄と呼ばれている時代の売店「鉄道弘済会」を1973年にモダンでオサレな感じにネーミング変更したものです。「鉄道弘済会」というのは、Wikipedia先生によると、鉄道事故などで一家の働き手を失ってしまった遺族(職員の奥さんなど)の働き口を確保する目的があったそうで、そんな社会的経緯があったのですね。ちなみに、2007年にJR東日本がKIOSKの読みを「キヨスク」から「キオスク」に変更しており、「キヨスク」と「キオスク」の読み方が混在している上に、売店がコンビニ業態に転換し、地域によって「NewDays(ニューデイズ)」「Bellmart(ベルマート)」「Heart・in(ハートイン)」などの名称に分かれるという、とってもややこしい状況になっています。
更にいうと、JR以外の私鉄の売店名はKIOSKではなく東急電鉄は「toks(トークス)」、西武鉄道は「TOMONY(トモニー)」、京王電鉄は「A LOT(アロット)」みたいな呼び名になっております。これは試験に出ないのでもちろん覚えなくていいです。
そういった余分な知識を踏まえて、今回ご紹介する「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」なんですが、こちらはキヨスク全盛期の1988年‐1990年頃まで講談社の「モーニングパーティ増刊」に掲載されていた作品。作者の岩尾奈美恵先生はなんと、実際にキヨスクの売店で働いていたことがあったそうです。確かに…これは内部事情の分かる経験者でないとマンガにできない題材かもしれません。
爽やかキヨスクガール
「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」の主人公は山口キミコ。東京・新宿駅のキヨスクで笑顔を振りまきながら元気に働く店員さんです。
ところでKIOSKのような駅売店のイメージといえば、電車乗り継ぎの短い間に通勤ラッシュの乗客を次から次へさばいて商品とお釣りを渡していく神業的イメージがあります。こち亀80巻「両津ストアーは年中無休!?の巻」のこのシーンが有名ですね。
こういう職人技も見れないんだろうな
これはすごいスキル
こんな感じで凄まじい客さばきがクローズアップされがちなKIOSKです。「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」でもこんな感じで…
この歳でいったいどれだけの研鑽を積んだんだ
神業的客さばきをするシーンがでてくるのですが、作品のメインはあくまで人情派なハートフルコメディとなっています。とはいえ、でてくる常連客はクセの強い奴らばかりです。ほぼ営業妨害レベル。ハートフルさを維持するのが困難といえます。
キヨスク店員も大変だな
ホームレスのおっちゃんにブスって言われたり、まけろって言われたり…でもキミコはそんなホームレスの人にも嫌がらず、ちゃんと親切にしてるので…
めちゃ嫌がってるけどね
ホームレスたちの宴会にお呼ばれしたりします。こんな展開、他には美味しんぼぐらいでしか見たことありません。
なにげに名前間違えてるのも失礼
いきなり求婚してくる初対面の客が登場したり…
そこは断っていいのでは
客から客へラブレターを渡すのを頼まれたり
こういうこと言う爺さんいるよね
ばーさんの若い頃にそっくりじゃ!とか言われて爺さんに言い寄られたり
営業妨害過ぎる
怪しい英語教材の勧誘をうけたりもします。これこそまさにザ・営業妨害という感じ。
JR新宿駅の客層ヤバすぎですね。キヨスク売店のお姉さんを口説くとか、値段交渉したりとか、普通の人なら考えたこともありませんよね。キヨスク…なんというブラック職場。
販売員の鏡ですね
日々そんなとんでもない事件があったりなかったりするのですが、キミコ持ち前の笑顔とパワフルさでトラブルを解決していきます。まさにキヨスクガールの鏡、プロフェッショナルの流儀です。キミコがあまりにいい人なので、キミコを慕う客も増え、しまいにはキオスクの前で大規模な宴会が…!
迷惑だけど売上はすごそう
いや新宿駅ホームでこれは不可能だろ!(楽しそう)
恋するキヨスクガール
ちなみに客の恋愛相談に巻き込まれがちなキミコ自身もお年頃ということで、キミコの売店で偶然出会った幼馴染のイケメンといい感じに。恋する乙女モードになったりもします。
いかにもマンガ的な展開
あと、最後の方では、キヨスクの販売員日本一を目指す「キヨスク販売コンクール」にキミコが出場し、難攻不落の万引き犯をとっ捕まえて優勝するという熱い展開もあります。さすがマンガだ!
というわけで、キヨスクという舞台の特徴がなければ、これといったツッコミどころのないほっこりハートフルなマンガなのですが、キヨスクというだけで刺さる人には刺さるマンガ「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」をご紹介しました。あの神業的な客さばきが求められるキヨスクがどんどんなくなっている今、こんなマンガが出ることはもうないと思います。一時代を象徴するマンガだったといえるでしょう。
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出典・引用)
「キヨスクフラッパー(KIOSK FLAPPER) 」 岩尾奈美恵 / 講談社
「こちら葛飾区亀有公園前派出所 80」 秋本治/集英社