キレまくる妻が夫を警察に通報するマンガ「キレる私をやめたい」は、本当にキレる私をやめられるのか?
キレてないですよ!
っていう長州小力のフレーズ、懐かしいですね。でも大体そういう事を言う人に限って、めっちゃキレるのでタチが悪いんですよね・・・。本日はそんなキレまくる人をどうにかしたいと思っている人にはピッタリの作品をご紹介いたします。「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」。夫をグーで殴るって・・・いきなり不穏なサブタイトルじゃないですか。
ネットミームと化したシーン
まずご紹介しておきたいのが、Twitterのタイムラインで定期的に見かける一節、通称「エイコは110番していた」のシーンです。見たことある人も多いと思うのですが、「あ・・・ありのまま、今 起こった事を話すぜ!キレ散らかしている妻を止めようと思ったら逆に俺が通報されていた」的な、ポルナレフもびっくりな理不尽展開で、誰もが衝撃を受けたのではないでしょうか。
そんな悲報も悲報、ひとつなぎの大悲報といった趣のワンシーンですが、あまりにこのシーンだけが先行してネットに拡散されている感がありまして、これはちゃんと元作品を確認してから評価すべきだと感じたわけです。
「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」は田房永子先生によるコミックエッセイですが、田房先生の代表作には、自身の母親について描いた「母がしんどい」という作品がありまして、こちらはいわゆる「毒親」の存在を世間に知らしめた作品として有名です。
おっさんやないか
ニコニコ笑顔のお母さんが娘の一言により一瞬にしてチャッキーのように豹変するシーンとか・・・
玄関に角材があるのがまずおかしい
タクシーに乗って立ち去ろうとする娘を、角材をぶん回しながら追いかけるシーンなど、さすがガチモンの毒親はやべーなと思わざるを得ないシーン満載の作品です。この「母がしんどい」で紹介されている毒親体験がトラウマとなり、エイコさんのキレやすい性分にも多大なる影響を与えているようです。
普通に温厚ですな
話を「キレる私をやめたい」の方に戻しますと、エイコさんはいつもは腰が低くて温厚で、決して怒ったりしない、波風立てない生き方を信条としています。ただ、ダンナに言われるとなぜかイラっときちゃうみたいです。たしかにそういうのってありそうですよね。友人知人だと腹が立たないけど、身内に言われるとなんかムカつくみたいな。というわけで今日も一日・・・
せっかちすぎんか?
朝食の野菜ジュースを飲むのが遅いと、怒りのあまりキッチンにぶちまけたり
謎の疾走感
リビングを泣きながらスライディングした後、ヨーグルトを床に叩きつけ・・・さらにヨーグルトを踏み潰して家具にぶちまけるというコンボ技!いや、何連コンボなんだコレは?
ジャブの切れ味がプロ並み
片手に赤子を抱きかかえながら、夫が持っているコップを狙って正確なジャブ!ある意味神業!
ダンナの肩が崩壊寸前
ブロッケンマンの「ベルリンの赤い雨」を彷彿とさせるキレの良いチョップを繰り出したり
武丸級のキレ具合
キレすぎて特攻の拓みたいになったり・・・
燃え上がれ俺の小宇宙
超サイヤ人みたいなオーラが出ているパターンもあります
・・・とまあ、ヤバいシーンは冒頭の「エイコは110番していた」だけかと思いきや、瞬間湯沸かし器のごとくブチギレるシーンのオンパレードです。あれ、本当にさっき温厚だって言ってた人と同じ人?
それにしてもキレた時の疾走感がすごいですね。なんというか、そんじょそこらのDVとはわけが違う「魂のこもったDV」という感じです。とにかくダンナさんが異常なほどに大変ということは間違いないですが。
謝ったら負け!
ちなみに、エイコさんのDVに関するイメージがこんな感じなのもヤバさを増幅しています。どんなに叩いても謝らなければDVじゃないって、考え方が斜め上過ぎる。
そんなこんなで、キレすぎていつも収拾がつかなくなる妻の対策としてダンナが提案した落とし所は・・・
愛の肩パンストレート
ものを投げなければ、いくら殴ってもいいというルールでした。なにその譲歩しまくりのルール・・・ダンナさん、もしかして菩薩なの?
ただ、結局のところこれらのブチギレシーンの数々は本題までの前フリでして・・・この作品のタイトル「キレる私をやめたい」がまさに本当のテーマです。そう、エイコさんはちゃんと、キレる自分を良くない、毒親だった母のようになりたくないと思っているのです。でも自分自身では止めることができないのです。
このままでは夫に離婚されてしまう、子供にも暴力を振るってしまう、なんとか止めなければ・・・でもどうしたらいいのか、男性から女性へのDVに対処するための情報は無数にあっても、女性から男性へのDVに関する情報はほとんどないというのが現状だったのでした。
危機感まるで伝わらず
箱庭セラピーに行っても効果なし、精神科に相談しても病気じゃないと言われてしまいます。
これがゲシュタルトセラピー
そんな状況でいろいろな本を漁ってついに巡り合ったのがゲシュタルトセラピー。夫への怒りの原因、そして自分の怒りの根源である母への本音を吐き出したり、逆に母の立場になってセリフを考えたりということをやっています。
降霊中?
なんか絵面だけみてると、イタコが降霊術やってるみたいに思わないでもないですが、エイコさんにはこれが効果テキメンだったようで、ついにキレる自分をコントロールすることができるようになったのです。めでたしめでたし。
というわけで、巷で噂のあのシーンが載っている本、「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」をご紹介しました。実際には本作では、キレるメカニズムや対処法について、ページを割いてもっと詳しく書いてありますので、すぐにブチギレる家族に困っていたり、自分自身がキレやすくて困っている方には、もしかしたらめちゃくちゃ役に立つかもしれません。もし、部屋でヨーグルトを踏みつけたい衝動にかられたら即購入するべし!
最後に作品中に掲載されていた名言をご紹介して本レビューを締めさせていただきます。
不変の真理
「暴力って絶対に無意味だ」
いや・・・今さらな気もしますけど、ホントそうですよね。暴力はダメ、絶対。
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出典)
「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」 田房永子/竹書房
「母がしんどい」 田房永子/KADOKAWA