プロジェクトマネジメントの話とか

「プロジェクト管理」をはじめ、心理学・ライフハック・仕事の話などを書いています。


完璧主義の克服と、ガサツな人の思考回路。


photo by Jake Archibald

 結論から言おう。君の「完璧主義」は治らない。


 そもそも「完璧主義を治す」って何だろう。病気なのか?人間の「性格・個性」を諸悪の根源であるかのように捕らえるのもおかしな話だ。

 とはいえ、このバカ丁寧な性格のおかげで、君の「爆速エンジン」は勢いを失い、その結果肥大化したタスクが容赦なく君の心を折ろうとするのも、また事実だ。
凡人のあなたが爆速で仕事をこなすための6つのポイント。 - プロジェクトマネジメントの話とか

 完璧主義の治し方などありません。なので今回は「完璧主義者」と、その対極に位置する「大雑把な人たち」の思考回路を比較しながら、この性格をどのように受け入れ、付き合っていけばよいか考えてみよう。


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性格を自由自在にコントロールできる?

 そんなことができるのなら、内向的で口下手な君も忘年会で宴会部長として社内に名を馳せ、各部署の全キーマンと堅牢な人脈を構築し、既に華々しい出世コースに乗っかっていることでしょう。

 つーか、目を覚ませ!現実を直視するんだ。
 数十年かけて形成された人間の性格はそう簡単には矯正されない。

 でも「考え方と行動」は、今すぐにでも変えられるんだ。具体的な対策を考えよう。

 人間の「思考のスコープ」

 まず「思考のスコープ」(範囲)を整理しよう。広さと深さの2つの軸から考えると、以下のようになる。

  • 第1領域:浅くて狭い
  • 第2領域:浅くて広い
  • 第3領域:深くて狭い
  • 第4領域:深くて広い
思考範囲が…狭い広い
浅い 第1領域 第2領域
深い 第3領域 第4領域

 第4領域は、僕ら凡人には無関係な世界だ。IQモンスター達に勝手にやらせておけばいい。第1領域にしかフォーカスできなくなったら、とにかく休むこと。限界を超えてまで心身を酷使して良いことは何も無い。バーンアウトする前に休むことも仕事の一つだ。
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 完璧主義者の人々は、放っておくと意識が第3領域に固定されてしまう。
 放っておくと自然にフォーカスされる領域を、仮に「ホームポジション」と呼ぶことにしよう。

 刻々と変化する状況に柔軟かつ迅速に対応するためには「思考のホームポジション」をコントロールする必要があるわけだ。

 完璧主義者とガサツな人たち

 次に、人間の性格を2つのタイプに強引に分けると下記のようになる。

  • タイプ1:細かい人たち(職人系)
  • タイプ2:大雑把な人たち(体育会系)

 一長一短。性格・個性の問題なのでどちらが勝っているという話ではない。
※余談だが、チームを組む際には両方の人材をバランス良く揃えるのが理想だ。

 ポイントは、日頃、頭の中で自然に思い浮かぶ思考=自動思考(潜在意識)が、上記領域のうちのどこを向いているか、という点だ。
 これは意識のコントロール配下にあるものではなく、僕らの性格に依存するものなんだ。

 まとめると、上記2タイプのホームポジションは下記のようになるわけだ。

  • タイプ1のホームポジション:深くて狭い第3領域
  • タイプ2のホームポジション:浅くて広い第2領域

「XXするのを止めるッ!ぐぬぬぬ…」でなく「XXの代わりに□□する」

 完璧主義者が爆速で仕事を進めるためには、タスクを取捨選択して進め方を決める際に、「第3領域」から「第2領域」に思考のフォーカスを移動させる必要があるわけだ。

 ただ、放っておくとフォーカスはすぐに「ホームポジションの第3領域」に戻ってしまう。これは上記で述べた性格の問題なので、気にする必要はない。

 状況が変化するたび、思考のフォーカスを第2領域にスイッチさせればいいだけの話だ。

 ここで注意すべきことは「第3領域にフォーカスを当ててはならない」という意識ではなく「第3領域の代わりに第2領域に当てよう」という意識を持つことだ。また、仮に第3領域にフォーカスがあたり続けても自分を責める必要は一切ないことも覚えておこう。

 「〜してはならない」といった強迫観念は、百害あって一利なし。

 自分のホームポジションなんだから、そこにあるのは本来の形なんだ。当然だと割り切ろう。まあ、そもそもフォーカスなどどこに当たっていても仕事は着実に進んでいくんだしね。

切り替えのカギ「メタ認知能力」

 「メタ認知能力」とは、一歩引いて、自分の思考を客観視する能力のことだ。自分自身を客観的にモニタリングすることで、思考のフォーカスはコントロールできるようになる。

 自分のホームポジションは第3領域で「放っておくと意識はそこに移ってしまう」という事実と、多忙であればあるほど「今自分は第3領域にハマり易い状況にある」ということを、客観的に把握しておくんだ。そして、ポイントポイントで、今自分がどの領域にいるかをチェックしよう。

 あとは思考のフォーカスを移動させる「キッカケ」さえあればいい。

  • 新しい仕事が発生したとき
  • ある程度1つのタスクが進んだとき
  • 休憩から戻ったとき
  • …etc.

キッカケなんて、そこら中に無限に転がっている。あとは意識の問題だ。モニターの目立つ所に付箋でも貼ろうか。

※2015/01/12追記:具体的な手法について記事を公開しました
【瞑想】一流企業が続々導入!脳の究極メンテナンス術を分析・実践しよう。 - プロジェクトマネジメントの話とか

 

完璧主義者の無双タイム

 全体を俯瞰し、タスクに対する取り組み方を決め、没頭してもよい状態になれば、いよいよ無双モードへ突入だ。思考のフォーカスをホームポジションに戻そう。

 完璧主義者は元々仕事が丁寧で、アウトプットの質は高い。これは誇るべき才能であり、最強の武器なんだ。自信を持っていい。

 ただ、スピードが落ちたり問題が発生した際には、すぐにフォーカスを第2領域に戻し、全体を俯瞰する必要がある、という点には気をつけたい。
場合によっては中途半端な状態でタスクを切り上げる勇気・決断も必要となる。

 第2領域&第3領域の「ハイブリッド型:爆速エンジン」で、IQモンスターらが巣食う第4領域へ突入だ。

ケーススタディ1:仕事が発生したら、まず合格点を設定

 ミスったら人が死ぬとか億単位の損失が出るとか、僕らが携わっている仕事にそこまでのクオリティを求められることはそうそうないはずだ。

 上記「凡人のあなたが爆速で…」の記事にて、「先に答えを見て、ゴールから最短経路を逆算しよう」と述べた。

 重要なプレゼンなら95点、チーム内部での設計レビュー(数回予定されたうちの1回目)なら60%、などなど、状況・タスクに応じて求められる完成度は異なるはずだ。タスクに着手する前に、ゴールとなる「完成度」を先に決めてしまおう。そうすれば本来不要だった作業が根こそぎカットできるはずだ。

第2領域に意識をフォーカスし場の空気を読み、
徹底的に手を抜け!空いたリソースを他に回すために!

ケーススタディ2:見切り発車を連発し、爆速を目指せ

 全ての条件を完璧に確認している時間などない。君の仕事は公共工事か?状況を読み、見切り発射を行い、並行して検討を進めよう。

 厳密な確認は後からでいい。判断ミスにより大事に至るような問題であれば、完璧主義者の君はそもそも見切り発射しようかなどと迷わないだろう?

 本当に問題になりそうであれば、後からフォローを入れればよい。しかし、結局ほとんどが取り越し苦労だった、というオチになるんだろうケド。今までずっと第3領域のみに意識がフォーカスされていた、過去の経験を振り返ってみればわかるだろう?

今読んだことは全部忘れろ!!

 意識なんてどの領域にあっても、仕事はちゃんと進む。正直どうでもいい話でした。

 記事の断片が少しでも君の胸に引っかかってくれれば、君の「爆速エンジン」のチューニングは完了だ。


 適当たれ。Take it easy!!



※後日追記:より実践的な記事を公開しました
仕事が丁寧で遅い人に共通する、たった1つの問題点とその対策。 - プロジェクトマネジメントの話とか

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