森林限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 03:53 UTC 版)
定義
森林限界は気温や降雪量、湿度、照度など植物育成の環境条件が変化することで生じ、主に高木となる木本に対しての分布を見ると、多くは線状に現れる。主な要因は低温や乾燥であり地球規模で現れるが、水分の過剰や塩分の過剰、硫黄や超塩基性土壌による影響や強風、降雪や洪水によっても局所的に現れることがある。また、乾燥は局所的な土壌条件の影響を強く受けるため、気温ほどには明瞭な森林限界を示さない。また分類対象としているのは高木であるので、ある特殊な生育条件を備えた植物は森林限界を越えて育つことができ、このような植物を総称して高山植物と呼んでいる。
高木となる生育を妨げる主な要因は低温と水不足である。水の不足は林床や根圏が十分に育たず、低温は光合成を失活させて水の蒸散を弱め、ガス交換や根からの窒化物吸収の効率を悪くし、凍結した雪氷からは水を得ることができない。しかし、いわゆる針葉樹(広義には球果植物)は、葉や幹の木質が厚いため乾燥に強く、遅い成長を油脂や揮発性のオレオレジン[2] を分泌して食害や菌などから守り、また動物媒を必要としないなどの特徴を備えており、森林限界近くでは高木の主要樹林に、林床では単子葉植物が多くなる。それでも土壌の乾燥、貧栄養化、流出でついに十分に育つことができなくなり、森林限界が現れる。
水平的には太陽放射が異なる緯度によって現れる。概ね南北60 - 70度付近で、これより高緯度では生育条件はより厳しくなり高木限界、低木限界、樹木限界を越えツンドラへと移る。これにはクルムホルツを分類に加えることもある。加えて高度により垂直的にも現れる。これらは季節風や海流によって影響をうけるため地域でばらつきがある。
低地に接する急峻な高山地形があると、低地から山頂に至る植生の変化として明瞭に観察できるため、高度による垂直的な森林限界、すなわち亜高山帯から高山帯に変わる線このことを指す場合が多い。なお、高山帯は、森林限界から雪線の下まで[3] と定義される。大規模に現れると気候として区分されることがある(→高山気候)。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)『高山気候』 - コトバンク
- ^ ある種のマツ科の植物は昆虫などの食害を受けると、ジャスモン酸メチルなどを周囲に発散させ、植物群体がさらなる食害を受けるのを防御していると考えられている。
- ^ 大辞林 第三版『高山帯』 - コトバンク
- ^ 「わが国山岳地域における森林限界高度の規定要因について」 岡秀一 東京都立大学 (1949-2011)地理学教室 、地学雑誌 Journal of Geograhy 100 (5) p.673-696、1991年
- ^ 川口武雄、難波宣士「こうはいち 荒廃地」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p231 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
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