文字 系統

文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 16:41 UTC 版)

系統

総説

淵源

文字は、当初ピクトグラム(絵文字)から発達した象形文字であった[要出典]」という仮説が有力である[要出典]。しかし、ピクトグラムから象形文字への移行を裏付ける証拠はほとんど発見されていない。

一方、デニス・シュマント=ベッセラ英語版は、中東一帯の遺跡から発見される粘土製証票(トークン)が文字の起源となったと主張する[17]。商取引の際、商品ごとに形の異なるトークンを用い、トークンの数で取り引き数を表す。取り引きごとのトークンをまとめて中空の粘土の玉(封球)に納めたり、紐で綴って両端を粘土の塊(ブッラ)で封印することで、取り引きの証明とした。後に封球やブッラの表面に、トークンの形と数を印すようになった。つまり、商品をトークンで表し、さらにトークンとその数を記号で象徴するようになった。これが文字の(少なくとも、この地域でその後使われるようになった楔形文字体系の)起源であるとする説である。

しかし、この説への批判も多く、現在の主流の見解では、トークンは文字の誕生の一要因であったが、トークンのみですべてを説明することはできないとされている[要出典]

また、文字が単一の起源から発生したのか、それとも地球上の複数の地域で独立に文字が誕生したのかについては、学者らの見解は一致していない[要出典]

借用と発展

現在までに発見されている文字体系は、あまり多くないいくつかの系統に分類できる。つまり、現在知られる文字体系のほとんどは、ほかの文字体系を借用し、発展させて成立したことがわかっている。借用はさまざまなレベルで行われるが、それぞれの系統には#分類の節で述べたさまざまな類型に属する文字体系が現れる。また、個々の文字体系の中でも、さまざまな造字手法を発展させてきた。

文字という着想
事実や意志の伝達を目的とし、耐久性のある媒体に記され、言語と関係した記号の体系、という着想。これには、一定の種類の記号だけを使うことも含まれる。この着想は単一の起源を持つと考える研究者もいるが、作業仮説の域を出ない。現在でも、この着想に基づいて計画的に文字体系をつくり出そうとする試みは多い。
書記媒体
書記媒体(粘土に楔形の記号を記す、で書く、など)を借用して、異なる文字体系を表記するのに用いた例は歴史上多い。
線条性
線条的に書くという方式の発展。初期の表語文字には記号の順序からは読む順序が判然としないものがあるが、後の文字体系では、区切り記号を導入して文を語に分析して順番に表記したり、文字や字母を単位として線条的に表記することが一般化した。
書字方向
かつては、ある行から次の行へ移ると書字方向を反転させて書き進めることがしばしば行われた。これをブストロフェドン(希: βουστροφηδόν牛耕式とも)と呼ぶ。文字の需要が増大してより速く大量に書くことが求められるようになるにつれ、各行を一定方向に書くことが増えるが、右から左へ、左から右へ、上から下へなどのどの書字方向を選ぶかは、文字体系によって異なる。借用の際に書字方向を変更したため、文字の図形を反転(左右の変更の場合)したり、90度回転(左右と上下の変更の場合)した例もある。
会意と形声
表語文字では、複数の記号を組み合わせてより複雑な意味を表す手法が発展した。たとえばエジプトヒエログリフで、「書く」を意味する文字と「人」を意味する文字を組み合わせて
この節の加筆が望まれています。

影響を受けた文字体系

契丹文字古壮字女真文字西夏文字チュノムは漢字の影響を受けて生まれたと考えられているが、現在は中国ジン族の人が使用している。

漢字を取り入れた表記体系

メソアメリカの文字体系

複数の文字体系から影響を受けた文字体系

新たな文字体系が成立するときに、複数の文字体系を取り入れることはしばしばある。また、別の系統に分かれた同時代の文字体系同士が、影響を与えあって発展していくこともある。本節では、複数の文字体系から影響を受けたことが特にはっきりしているものを取り上げて解説する。

近代以降に創出された文字体系

未解読または系統未詳の文字体系

彝文字
インダス文字
トンパ文字
中国少数民族であるナシ族の間に伝わる文字体系で、経典などの表記に用いられる。抽象化の進んだ表語文字に属する文字と、絵画的でピクトグラムから象形文字の段階に入ったばかりと思われる文字の両方を持つが、その起源についてはまだ十分な研究がない[18]
ファイストスの円盤の文字
ラパヌイ文字(ロンゴロンゴ文字
イースター島(ラパヌイ島)に伝わる石板に見られる、文字体系の可能性がある記号の体系である。[19]一部の研究者は、決まり文句を記すためだけに使用されたピクトグラムの一種で、文字体系ではないと主張している。基本的な字母の数が120個ほどであることから、音素文字である可能性は低い。現在残る文字資料から知られている書字方向は、下から上へ行が進む横書きのブストロフェドンという特異なものである[20]

注釈

  1. ^ たとえばUnicodeでの定義はThe Unicode Consortium (November 3, 2006). The Unicode Standard, Version 5.0 (5th edition ed.). Addison-Wesley Professional. pp. pp.1144, 1151. ISBN 0-321-48091-0  を参照。
  2. ^ 朝: 자질 문자
  3. ^ 作中では、中つ国第一紀エルフフェアノールが、サラティを改良して作ったとされる。
  4. ^ 表音文字を、音素文字、音節文字、素性文字の3類型に分類する研究者もいる。Sampson, Geoffrey (1985). Writing systems: a linguistic introduction. Stanford University Press. pp. pp.38-42. ISBN 0-8047-1756-7 などを参照。

出典

  1. ^ a b 『日本大百科全書』【文字】
  2. ^ 許慎説文解字』、叙頁。 
  3. ^ Champollion, Jean-François (1824). Précis du système hiéroglyphique 
  4. ^ 山田崇仁「「書同文」考」『史林』91巻4号、史学研究会、2008年7月、pp. 681ff。
  5. ^ 司馬遷『史記』秦始皇本紀第六、始皇帝二十六年条。
  6. ^ 山田崇仁「「文字」なる表記の誕生」『中国古代史論叢』第5集、立命館東洋史学会、2008年3月、73-109。
  7. ^ プラトン『パイドロス』、274A-278C頁。 
  8. ^ ルソー, ジャン-ジャック 著、小林善彦 訳『言語起源論 - 旋律及び音楽的模倣を論ず』現代思潮社、1970年、p.36頁。 (原著 Rousseau, Jean-Jacques (1781). Essai sur l'origine des langues ou il est parlé de la mélodie et de l'imitation musicale )もっともルソーはこの後で、古代の有力な文明が必ずしもアルファベットを使っていたわけではないことを断っている。
  9. ^ 平㔟隆郎『よみがえる文字と呪術の帝国 - 古代殷周王朝の素顔』中央公論新社、2001年6月。ISBN 4-12-101593-2 
  10. ^ フェルディナン・ド・ソシュール 著、小林英夫 訳『一般言語学講義』岩波書店、1972年、p.47頁。ISBN 4-00-000089-6 (原著 Saussure, Ferdinand de. Cours de linguistique générale 
  11. ^ 中尾俊夫『英語の歴史』講談社、1989年7月、pp.18-27頁。ISBN 4-06-148958-5 
  12. ^ たとえば Gelb, I. J. (1963). A Study of Writing. University of Chicago Press  参照。
  13. ^ マルティネ, アンドレ 著、三宅徳嘉 訳『一般言語学要理』岩波書店、1972年、pp.12-15頁。 (原著 Martinet, André (1970). Éléments de linguistique générale 
  14. ^ たとえば Sproat, Richard William (2000). A Computational Theory of Writing Systems - Studies in Natural Language Processing. Cambridge University Prress. ISBN 0-521-66340-7  参照。
  15. ^ Daniels and Bright (eds.), 参考文献. pp.4-5.
  16. ^ Daniels and Bright (eds.), 参考文献, p.4, 24. などを参照。
  17. ^ シュマント=ベッセラ、参考文献。およびSchmandt-Besserat, Denise. “Signs of Life” (PDF). Archaeology Odyssey 2002 (January/February): pp.6-7,63. オリジナルの2008年5月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080528050603/https://webspace.utexas.edu/dsbay/Docs/SignsofLife.pdf. 
  18. ^ 彭飛 (1992). “トンパ文字を訪ねて - 納西(ナシ)族居住地での現地調査から -”. 言語 (大修館) 1992年 (4月号-5月号). http://homepage2.nifty.com/ponfei/tonpa/tonpa.htm. 
  19. ^ イースター島で既知のどの文字体系にも属さない未解読の文字が刻まれた木板が発見される”. カラパイア. 2024年3月12日閲覧。
  20. ^ 柴田紀男 著「ラパヌイ文字」、河野六郎・千野栄一・西田龍雄 編著 編『言語学大辞典 別巻 世界文字辞典』三省堂、2001年7月、pp.1102-1104頁。ISBN 4-385-15177-6 






文字と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「文字」に関係したコラム

  • 株価の特別気配の更新値幅は

    特別気配とは、売り注文と買い注文の数量がアンバランスな状態で、売買の成立が困難な状況のことです。例えば、株価が400円の時に、402円、401円、400円、399円、・・・に大量の買い注文が入り、40...

  • ETFの取引をスマホで行える証券会社の一覧

    ETFの取引をiPhoneやAndroidなどのスマホ(スマートフォン)で行うには、スマホで取引できる専用のアプリケーションが必要です。スマホのWebブラウザを利用して取引できる場合もありますが、文字...

  • MT4でFXやCFDのテクニカル指標を同じエリアに複数表示するには

    MT4でFXやCFDのテクニカル指標を複数表示すると、次の図のようになります。上の図では、EUR/USDのチャート画面にMACD、RSI、ストキャスティクスを描画したものです。画面が4つに分割されて、...

  • 株式取引をスマホで行える証券会社の一覧

    株式取引をiPhoneやAndroidなどのスマホ(スマートフォン)で行うには、スマホで取引できる専用のアプリケーションが必要です。スマホのWebブラウザを利用して取引できる場合もありますが、文字が見...

  • FXのチャート分析ソフトMT4のStandard Deviationの見方

    FX(外国為替証拠金取引)のチャート分析ソフトMT4(Meta Trader 4)のStandard Deviationの見方について解説します。Standard Deviationは、過去の為替レー...

  • バイナリーオプションの取引をスマホで行うには

    バイナリーオプションの取引をiPhoneやAndroidなどのスマホ(スマートフォン)で行うには、スマホで取引できる専用のアプリケーションが必要です。スマホのWebブラウザを利用して取引できる場合もあ...

辞書ショートカット

', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', '', ''];function getDictCodeItems(index) {return dictCodeList[index];}

すべての辞書の索引

11~20位21~30位 
 Uber
 四宮ありす
 フジテレビのアナウンサー一覧
 油を絞る
 やらおん
 今井アンジェリカ
 久邇瑳代子
 中曽千鶴子
 詰んだ
 カオス
';function getSideRankTable() {return sideRankTable;}

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



文字のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの文字 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS