嬉野流
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/20 06:21 UTC 版)
対策
最も有力な嬉野流対策として、△4四角から飛車交換を強要するという指し方がある。将棋ウォーズに常駐するソフトが始めた対策で、これをやられると嬉野流側としては非常に指しにくい。
一例として、▲6八銀 △3四歩 ▲7九角 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲4八銀 △3二金 ▲2六歩 △4四角 ▲5六歩 △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲8八歩 △5六飛 ▲6九玉 △2六飛のような展開が考えられる。
これとは別にプロ棋士の本間博が『これで万全! 奇襲破り事典』という本の中で、飛車を8六に置いたままにする対策を紹介している。
新嬉野流
上記の対策が出てきたことで嬉野流側も対応を迫られ、その結果、天野の棋書とは異なる新しい指し方が誕生し、2021年に嬉野本人の筆により「新嬉野流」の名を冠した棋書が刊行された。
▲6八銀△3四歩▲5六歩△8四歩▲5七銀が新型の嬉野流の駒組み。
先に▲5六歩~▲5七銀を決めてしまうことで、相手の飛車に横歩を取られるのを防いでおり、これだと上記の対策は通用しない。
新嬉野流の特徴はそれだけはなく、引き角を保留しているため、以前よりも取り得る作戦の幅が広がっている。相手の駒組み次第では米長流急戦矢倉や屋敷流二枚銀等の戦法に合流したり、右玉に組むようなことも可能である。
また、新嬉野流では「土下座の歩」ではなく普通に▲8七歩とすることが多く、本間博考案の対策も不可能である。加えて持久戦模様になったときには玉を8八まで移動させ、それなりに固く囲うこともできるようになっている。
相振り飛車
振り飛車相手に斜め棒銀に行くと、古くから存在する鳥刺しという戦法に合流することになるが、そうではなく相振り飛車に持って行く指し方もある。創始者である嬉野宏明は振り飛車相手に中飛車や向かい飛車にする指し方を積極的に採用している。
6八銀と7九角の形は非常に柔らかく、▲5六歩~▲5七銀~▲8八飛の相振り飛車は、先手中飛車で相振りの時、向かい飛車に振り直すことを考えると途中下車がないので、ものすごく得をしていることになる。
プロの実戦例
アマ間では人気のあった嬉野流だが、プロが採用することは長らくなかった。しかし、2017年3月24日、第30期竜王戦1組ランキング戦の阿部健治郎七段対丸山忠久九段戦において、先手の阿部七段が中歩を突いてから銀を上がる変則的な駒組みで嬉野流を採用した。結果は阿部の負けだった。
2022年3月から井上慶太が初手6八銀を1年間で9回採用して4勝5敗の成績を残した[4]。村田顕弘の「村田システム」も嬉野流の派生形とも言われている[4]。
- ^ a b c d e “【ノーカット版】天野貴元さんが嬉野流編を語る #将棋情報局”. マイナビ出版. 2023年4月24日閲覧。
- ^ “【ご本人登場】嬉野流創始者が嬉野流を語る #将棋情報局”. マイナビ出版. 2023年4月24日閲覧。
- ^ a b “第50回将棋大賞受賞者のお知らせ”. 日本将棋連盟. 2023年4月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “藤井聡太竜王が「一本筋が通った戦法」と評した嬉野流、ハッピーな戦法が広げた将棋の可能性[指す将が行く]”. 読売新聞オンライン (2023年4月22日). 2023年4月24日閲覧。
- ^ 対談:瀬川晶司六段×今泉健司四段「B級戦法は こんなに楽し」(『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』(将棋世界編集部編、マイナビ出版)所収)
- ^ a b “【ノーカット】将棋大賞表彰式&昇段者免状授与式”. 中日新聞. 2023年4月17日閲覧。
- ^ @tamagonn68. "升田幸三賞…だと?何も聞いてませんぞ!エイプリルフールはもう終わったはずだが?" (短文投稿). Xの短文投稿(旧Twitter)より2023年4月17日閲覧。
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