酒造石高
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 14:30 UTC 版)
酒株を持った酒造人が生産する酒の量を酒造石高といい、籾米1石(当時の徴税はこの状態であり、精米すると精米度合いにもよるがおよそ6割になる。つまり玄米だけの体積は0.6石程度となる)を使った際に生成できる酒の歩合である。籾米1石に対して造られる酒の石高を酒垂れ歩合(さけだれぶあい)という。一般的に並酒、片白、諸白、御膳酒と酒質が高級になっていくにつれ精米歩合が上がるため減量分は大きくなり、酒垂れ歩合は低い値をとるようになる。以下はその一例である。 高遠藩在方酒屋の酒垂れ歩合(明和~安永年間)並酒 0.90 片白 0.85 諸白 0.80 御膳酒 0.75 仙台藩御用酒屋の酒垂れ歩合(寛文~享保年間)並酒 0.80 片白 - 諸白 0.65 御膳酒 0.461 酒垂れ歩合の計算は、籾米1石から算出する精米+精米とほぼ同量の水の数値の75%(25%は酒粕)から籾米1石を割った数値である。以下は籾米1石から諸白を作ったと考えての計算である。 精米の度合は物によって異なるが、諸白など上質な酒では精米の度合いが高いため籾を取った玄米の状態からかさはさらに減りだいたい70kg程度(およそ体積は0.4石である。数値は現在の普通酒と同程度より少し低い程度の精米歩合と考え算出)となり、これに同体積の水を加え酒造すると0.8石となる。この0.8石分(約145リットル)には酒粕が一般的に重量の25%ほど含まれているため、(水の量や精米歩合にもよるためずれが大きいが)白米から110リットル程度の酒が出来ることになり(酒垂れ歩合は0.61程度)、上記の仙台藩における数値と近い値をとる。 上記の数値をみると、酒垂れ歩合は軒並み1.00を割り込んでいる。それでは、酒垂れ歩合はつねに1.00よりも低い値をとるか、いいかえれば消費した籾米の石高よりも生産される酒の石高がつねに低いか、といえばそれもそうとは限らない。たとえば酒造りには「汲水延ばし(くみみずのばし)」などと表現される技法があり、これは通常の酒造りにおいては精米1石に対して水1石を加えていたものを、寛文年間に改良された寒造りなどでは加える水を1.2~1.3石とするため、結果として1石の籾米から生酒1石以上が生産され、酒垂れ歩合は1.00以上になるからである。
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