誤謬の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 07:03 UTC 版)
埋没費用は、事業や行為を中止しても戻ってくるものではない。しかし、埋没費用を考慮した結果として、合理的でない誤った判断を下す場合がしばしばある。二つの例を挙げる。 詳細は「コンコルド効果」を参照 例1:つまらない映画を観賞し続けるべきか 2時間の映画のチケットを1800円で購入したとする。映画館に入場し映画を観始めた。10分後に映画がつまらないと感じられた場合にその映画を観続けるべきか、それとも途中で映画館を退出して残りの時間を有効に使うべきかが問題となる。 映画を観続けた場合: チケット代1800円と上映時間の2時間の両方を失う。 映画を観るのを途中でやめた場合: チケット代1800円と退出までの上映時間の10分間は失うが、残った時間の1時間50分をより有効に使うことができる。 この場合、チケット代1800円とつまらないと感じるまでの10分が埋没費用である。この埋没費用は、この段階において上記のどちらの選択肢を選んだとしても回収できない費用である。したがって、この場合は既に回収不能な1800円(と鑑賞に費やした10分の時間)は判断基準から除外し、「今後この映画が面白くなる可能性」と「鑑賞を中断した場合に得られる1時間50分」とを比較するのが経済的に合理的である。 しかし、多くの人は1800円を判断基準に含めてしまいがちである。 例2:チケットを紛失した場合 ある映画のチケットを1800円で購入しこのチケットを紛失してしまった場合に、再度チケットを購入してでも映画を観るべきか否か。 チケットを購入したということは、その映画を見ることに少なくとも代金1800円と同等以上の価値があると感じていたはずである。一方で、紛失してしまったチケットの代金は埋没費用にあたるから、2度目の選択においては判断材料に入れないことが合理的である。 したがって、再度1800円のチケットを購入してでも、1800円以上の価値がある映画を観るのが経済学的には合理的な選択となる。しかし人は、「その映画に3600円分の価値があるか」という基準で考えてしまいがちである。
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