共有結合の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/26 23:44 UTC 版)
ベント則はs軌道がp軌道より低いエネルギーを持つことによって証明される。電気陰性度が異なる元素間での結合は極性を持ち、この結合における電子密度は電気陰性度の高い元素に偏る。炭素-水素結合の電子密度は炭素側に偏るため、フルオロメタンにこの原則を適用するとベント則が正しいことがわかる。この結合における電子のエネルギーは炭素側の電子密度が増加するために炭素原子がつくる混成軌道に大きく依存する。混成軌道のs性が増すと、s軌道はp軌道よりエネルギーが低いために電子のエネルギーは減少する。 一方、フッ素は炭素よりも電気陰性度が高いため、フッ素-炭素結合では電子密度はフッ素側に偏る。このためフッ素-炭素結合における炭素原子の混成の影響は炭素-水素結合と比較すると比較的少なく、フッ素-炭素結合のエネルギーも混成の影響を比較的受けない。また、混成軌道のp性がよりフッ素に偏ることにより、結合エネルギーはあまり増加しない。 等価なsp3軌道を4つの置換基に向ける代わりに、炭素付近の電子密度の増加のために炭素-水素結合にs性が向けられると結合は安定化する。その一方で炭素-フッ素結合では、電子密度がフッ素側に偏るためにs性は低くなり、比較的少量ではあるがエネルギーが増加する。このようにベント則は炭素原子のs性が炭素-水素結合では大きく、フッ素-炭素結合では小さくなるということを表している。 フルオロメタン以外でも中心原子に2つ以上の置換基が結合している分子では同様のことが成り立つ。 ベント則は軌道中の原子のs性が電気陽性基との結合に集中するために分子全体のエネルギーが減少するということを表している。
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