じんじいん‐かんこく〔ジンジヰンクワンコク〕【人事院勧告】
人事院勧告
人事院勧告
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人事院勧告(じんじいんかんこく)とは、人事院が、国会、内閣、関係大臣その他機関の長に行う、国家公務員の一般職職員の「給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告」(国家公務員法第3条第2項)の総称である。人勧とも略称される。一般には、単に人事院勧告と言う場合、給与制度に関する勧告である給与勧告を指すことが多い。
注釈
- ^ 国会に対してこれに類似した権限をもつ行政機関は、内閣から独立した地位を有する会計検査院のみである(会計検査院法第36条および第37条)。
- ^ 昭和三十九年八月十四日総理府令第三十三号「寒冷地手当支給規則」のことを指す。
- ^ 人事院は第3条第2項により、2008年度に大規模災害時において、寒冷地手当を俸給と同様に月2回払いを可能とするよう当時の所管大臣であった総務大臣に勧告した。この勧告は、『公務員白書-平成21年版』の第3部第3章第2節の「給与法等の実施」に記載されており、同部同章第1節の「給与に関する報告と勧告」からは除外されている(p.117)
- ^ 大臣、副大臣、大臣政務官、人事官、検査官、内閣法制局長官等は特別職給与法、裁判官は裁判官の報酬等に関する法律、裁判所職員は裁判所職員臨時措置法、国会職員は国会職員法、防衛省職員は防衛省の職員の給与等に関する法律に拠る。
- ^ 人事院は給与勧告制度に対する評価の一つとして「人件費が民間との均衡のとれた適正な水準に落ち着いているとともに、他の関係機関の給与の相場づくりに寄与している」という見解を紹介している[15]。
- ^ 全国大学高専教職員組合(全大教)は国立大学が法人化されて5年以上経過した2009年10月、賃金改定について、人事院勧告を前提とせずに労使交渉で決めるよう、国立大学協会に要望している[16]。
- ^ 政府関係機関職員も加えると、1964年末には「少なくとも410万人が、人事院勧告と公労委仲裁裁定の強い影響下におかれていたことになる[17]」。
- ^ 労働運動総合研究所(全労連系)は給与勧告の影響が及ぶ公共部門の労働者の数を625.8万人と推定している[18]。
- ^ 期末・勤勉手当は旧ベース算定
- ^ a b c d e f 勧告を実施するための法律の公布日の属する月の翌月の初日(公布日が月の初日であるときは、その日)。4月から実施日の前日までの期間に係る較差相当分を解消するため、12月期の期末手当で減額調整。
- ^ 東日本大震災により民間給与実態調査の実施が遅れたため
- ^ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を考慮し、例年より時期を遅らせた上で、2回に分けて実施。先行して調査を実施したボーナスについては10月7日に勧告・報告、月例給については10月28日に報告。
- ^ a b 勧告を実施するための法律の公布日。
出典
- ^ 「ことに国家公務員に労働基本権を与えない代償措置として人事院に与えられた給与その他の労働条件に関する勧告権は人事院の存立の基盤であり、またそのアイデンティティをなすような基本的役割である」(村松岐夫 『日本の行政-活動型官僚制の変貌』 中央公論社、1994年4月、p.42)
- ^ a b c 栗田久喜・柳克樹〔編〕 『注解法律学全集.5-国家公務員法・地方公務員法』 青林書院、1997年5月
- ^ 竹之内一幸・橋本基弘 『三訂版;国家公務員法の解説』 一橋出版、2006年8月1日
- ^ a b 「このように人事院の給与改定の勧告が重大視され、人事院もまたこれを行うについて重大な決意を必要とするのは、給与水準の引き上げ、すなわち「ベース・アップ」の勧告の場合である。人事院がひとたびこの「ベース・アップ」の勧告をすると、政府としては、この勧告を実施するには、人事院所管の一般職の職員のみならず、特別職の職員、現業職員、公社、公団その他政府機関の職員から、地方公務員に到るまで、同じ基準の給与改定をしなければおさまらないから、たちまち数百億、時には一千億を越す経費が必要となる」(浅井1970、p.259)
- ^ 「法文の上では“俸給表”を定めるについての基準とされているが、その精神は給与全般にわたると考えてよいであろう」(佐藤2009、p.44)
- ^ 『公務員白書-平成22年版』、p.57
- ^ 人事院 「民間給与の実態-平成21年職種別民間給与実態調査の結果」
- ^ 人事院 「給与勧告の仕組みと本年の勧告のポイント」 2009年8月、p.5
- ^ 「これまで人事院の改組案(または廃止論)は、二つの全く相容れない立場から主張されてきた。その一つは政府・与党の方面から起こったもので、二つの点に要約される。……第二には……、人事院がほとんど毎年行う給与改訂の勧告が、労働攻勢の大義名分となり、それが民間賃金にまで影響し、政府、財界を苦しめるということである。次にこれと全く反対に、野党や職員団体の方面からも同じような主張がなされている。これも二つの点に要約される。……第二には、上述の給与改訂の勧告は、公務員の要求を満足させないばかりか、かえって政府の低賃金政策を推進する目標となるということである」(浅井1970、p.16)
- ^ 1955年~1965年の「春闘相場の設定者(トップ・バッター)は私鉄総連、公労協、鉄鋼労連を中心としながら、第4-1表のように推移してきた。……公労協がトップ・バッターになった2回の場合(1957年、1961年)も、本当はその前年の人事院勧告が大きくひびいている……」(神代1973、pp.90-91)
- ^ 「六〇年の人事院の大幅賃金引き上げ勧告が六一年の公労委・中労委の調停・仲裁に影響を与え、民間の賃上げに大きな影響を与えたことが注目される。日経連(当時)は、六一年四月の総会において(当年度の春闘相場を)「経営者の屈服賃金」であるとし、その遠因を公務員給与の十二・四%の人事院勧告にあるとして批判した」(行方2004、p.249)
- ^ 『公務員白書-平成22年版』p.236
- ^ 行政執行法人労働関係法第3条第2項。独立行政法人通則法第57条第3項
- ^ 『公務員白書-平成21年版』p.118
- ^ 『公務員白書-平成21年版』p.52
- ^ 全大教「人事院勧告に基づく賃金引き下げ問題に関する要望」2009年10月16日
- ^ 神代1973、p.109
- ^ 「公務員人件費を「2割削減」した場合の経済へのマイナス影響と、その特徴について」『労働総研クォータリー』No.83 労働運動総合研究所、2011年7月1日)(共同通信が2011年5月19日付けで報道・配信
- ^ 全国労働組合総連合 『国民春闘白書〈2010年〉』 学習の友社、2009年11月
- ^ 「調査方法、調査内容についても年々検討を加え、現在では、特色ある給与調査の一つとして、民間企業等における給与決定の基礎資料としても広く活用されている」(人事院「I 調査の説明」『民間給与の実態 - 平成19年職種別民間給与実態調査の結果』2007年
- ^ 人事院 平成25年人事院勧告(別紙1「職員の給与等に関する報告」)2013年8月8日。
- ^ 神代1973、早川1979、人事院 「長期統計等資料」『平成22年度 - 年次報告書』(『公務員白書-平成23年度版』、p.211)による。
- ^ 給与勧告の実施状況等人事院。2021年11月11日閲覧
- 1 人事院勧告とは
- 2 人事院勧告の概要
- 3 労働基本権制約の代償措置性
- 4 主要参考文献
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