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【スペック】全長×全幅×全高=4470×1800×1575mm/ホイールベース=2760mm/車重=1560kg/駆動方式=FR/2リッター直列4気筒DOHC16バルブ(150ps/6400rpm、20.4kgm/3600rpm)/価格=363万円(テスト車=438万1000円/バーミリオンレッドメタリック=7万5000円/メディアンクロスインテリア=2万1000円/iDriveナビゲーションパッケージ=31万5000円/X Lineエクステリア+ルーフレール=8万7000円/ファインカッティングアルミトリム=5万円/電動パノラマガラスサンルーフ=20万3000円)

BMW X1 sDrive18i(FR/6AT)【試乗速報】

未来の主役 2010.05.14 試乗記 サトータケシ BMW X1 sDrive18i(FR/6AT)
……438万1000円

セダン「3シリーズ」をベースにしたBMWの新型SUV「X1」に“駆け抜ける歓び”はあるのか? 2リッター直4を積むエントリーモデルでその実力を確かめた。
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「そば屋のカレー」にあらず

きゅーんとコーナーに飛び込む時のクルマとの一体感、まずまず広くて使い勝手のいい後席と荷室――
4月下旬から日本での注文受付が始まった「BMW X1」に試乗しながら、「これはノート型パソコンかもしれん」と思う。なんて、いきなりそんなことを書いても意味不明なので、少し説明させてください。
生まれて初めてパソコンを買った15年前はPCといえばデスクトップで、ノート型を使っていたのは一部の好事家だけだったと記憶している。ところが今、JEITA(電子情報技術産業協会)の統計によればパソコンの国内出荷の7割をノート型が占めるという。つまり、ノート型が“フツーの存在”になっている。

で、同じことがBMWの身にも起こるのではないかと思うわけです。ビーエムといえば枕ことばのように「スポーティセダン」という言葉がついて回った。個人的にもセダンがBMWの本筋で、車高の高いSUV系は、そば屋のカレーみたいな立ち位置だと思ってきた。「一応、こっちもあります」というか。
でも「X1」に乗っていると、それが間違った認識だったと思えてくる。ノート型パソコンがデスクトップを追い越したように、「X1」はセダンに代わって主軸になるかも。そう予感させるほど「X1」の完成度は高かった。

乗り込む前に「BMW X1」の概要にふれると、名前こそ「X1」だけれどベースとなるプラットフォーム(基本となる車台)は「1シリーズ」ではなく「3シリーズ」。2760mmのホイールベースと前後のサスペンション形式も、「3シリーズ」のセダン/ツーリングワゴンと同じだ。
サイズ的には兄貴にあたる「X3」よりひと回り小さく、長さと幅はライバルとなる「フォルクスワーゲン・ティグアン」とほとんど一緒。ただし、車高は「X1」のほうが「ティグアン」より145mmも低い。真横から見るプロポーションも、オフロード走行を視野に入れたSUVというより、少し背の高いツーリングワゴンだ。

2009年9月のフランクフルトショーでお披露目された「X1」が早くもニッポン上陸。フロントのエアインテーク下でシルバーに光るアンダー・ガードが「Xシリーズ」らしさだとBMWはうたうけれど、個人的にはにぎやかにすぎると思った。ボンネットフード上のエンブレムからV字に伸びるラインは、3シリーズのマイチェン時に施されたのと同じお化粧。
2009年9月のフランクフルトショーでお披露目された「X1」が早くもニッポン上陸。フロントのエアインテーク下でシルバーに光るアンダー・ガードが「Xシリーズ」らしさだとBMWはうたうけれど、個人的にはにぎやかにすぎると思った。ボンネットフード上のエンブレムからV字に伸びるラインは、3シリーズのマイチェン時に施されたのと同じお化粧。 拡大
リアビューでも、シルバーのアンダー・ガードが存在感を発揮。彫りの深いボディサイドのショルダーラインといい、兄貴分のX3よりアグレッシブな印象を与える。ルーフレールはオプション装備。全高は、タワーパーキングという日本的事情も考慮して決められたとか。
リアビューでも、シルバーのアンダー・ガードが存在感を発揮。彫りの深いボディサイドのショルダーラインといい、兄貴分のX3よりアグレッシブな印象を与える。ルーフレールはオプション装備。全高は、タワーパーキングという日本的事情も考慮して決められたとか。 拡大
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グッとくる価格、グッとこない内装

日本に導入されるのは、2リッター直列4気筒エンジンのFRモデル「X1 sDrive18i」(363万円)と、3リッター直列6気筒エンジン搭載の4WDモデル「X1 xDrive25i」(480万円)の2バリエーション。ちなみに、トランスミッションはどちらも6AT。
今回は、363万円というグッとくる値付けがされた前者に試乗する。なぜグッとくるかと言えば、同じエンジンを積む「BMW320i」の最廉価版より36万円安く、やはり同エンジンの「BMW120i」より3万円だけ高い価格設定に“おトク感”を感じたから。

だれが見てもBMWだとわかる“お面”と同様、インテリアもBMW流。乗り込んだ瞬間に懐かしいと思えるほど「1シリーズ」や「3シリーズ」から変わっていない。流行に左右されないBMWらしさがいいという意見もあれば、新味がないという否定的な見方もあるでしょう。自分としては後者。楽しい場所が似合うクルマなんだから、正直、もうちょっと遊び心とかワクワク感があれば……。ただし実際に走り始めると、オーディオやカーナビを直感で操作できる「iDrive」というインターフェイスのおかげで、古臭いという印象は受けない。代わり映えがしなかろうが、このインテリアが完成していることは間違いない。

運転席の位置が「1シリーズ」より90mm高いことから、ドライバーの視界は開けている。けれども実際に使う身になると、見晴らしがいいことより乗り降りがしやすいことのほうがうれしい。腰をかがめて乗り込む必要もなく、「よっこらしょ」をかけ声をかけてよじ登るほど高くもない。何度か乗り降りすると、このぐらいの高さこそクルマのあるべき姿ではないかと思えるほど。


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排気量1995ccの直列4気筒エンジンは、セダン「320i」やハッチバック「120i」に積まれるのと同じ「N46B20B」型。ただしややチューンが異なり、最高出力はセダン系に積まれるものより6ps低くなっている。もちろん、ダブルVANOSやバルブトロニックといったBMWご自慢のハイテク・デバイスを搭載する点は変わらない。
排気量1995ccの直列4気筒エンジンは、セダン「320i」やハッチバック「120i」に積まれるのと同じ「N46B20B」型。ただしややチューンが異なり、最高出力はセダン系に積まれるものより6ps低くなっている。もちろん、ダブルVANOSやバルブトロニックといったBMWご自慢のハイテク・デバイスを搭載する点は変わらない。 拡大
写真の赤いシート地は、オプションの「メディアンクロスインテリア」(2万1000円)。シート地が9種類、ボディカラーは12種類選べるなど、コーティネートの豊富さもウリだ。
写真の赤いシート地は、オプションの「メディアンクロスインテリア」(2万1000円)。シート地が9種類、ボディカラーは12種類選べるなど、コーティネートの豊富さもウリだ。 拡大

遅いけどビーエム

エンジンをスタート、駐車場から出ようとして「おっ」と思う。いや、「おっ」というのは遠回しな表現で、ホントは「ギョッ」とした。それぐらい、低速域ではハンドルが重かったのだ。がっしりとした手応え、というレベルを通り越している。
新型車の生産初期の個体差かもしれないけれど、腕力に(だけ)は自信がある自分がそう感じたのだから、きゃしゃな女性などはひくかもしれない。ただし、20km/hもスピードが出れば気にならなくなることは付記したい。

もうひとつ気になった点をあげておくと、遅い。実際には1560kgの車重に対して150psあるから、悲しくなるほどは遅くない。けれど、BMW(=バイエルンの原動機製造会社)という名前に期待して走りだすと、「あれれ?」と思う。高速道路の登りこう配だと、1名乗車にもかかわらず「ガンバレ!」と応援したくなる。

「おっせぇな〜」と思いつつも、小1時間も走ると上質な実用車だということが見えてくる。バカっ速さはないものの2リッター4気筒はクォーンと端正に回るから、アクセルペダルを踏み込むたびに「いいモノを操作している」という気分になる。ゲップが出るほどではない、腹八分目の満足感だ。体にいい感じがイマ風。

タイトコーナーでも、車高の高さに起因する不安感はまったくない。グラッと傾くことなく、外側のタイヤをほどよく沈めながらカーブを曲がっていく。

ちょっとペースを上げても屋根のてっぺんからタイヤまでがひとつのカタマリになったかのような一体感は失われず、強くブレーキをかけてもその一体感を保ったままきれいに止まる。つまり、上出来の機械とダイレクトにふれあうことができるBMWの長所は、まんま受け継がれている。しかも、それだけではない。

高速道路をゆく「X1」。ブレーキング時やアクセルペダルを戻した時に、減速エネルギーを電力に変換してバッテリーに蓄える「マイクロ・ハイブリッド・テクノロジー」というブレーキエネルギー回生システムを備えることも大きなトピックだ。
高速道路をゆく「X1」。ブレーキング時やアクセルペダルを戻した時に、減速エネルギーを電力に変換してバッテリーに蓄える「マイクロ・ハイブリッド・テクノロジー」というブレーキエネルギー回生システムを備えることも大きなトピックだ。 拡大
外観に比べると、インテリアはずっとおとなしい。ただし、練りに練られているからメータ類の視認性や空調スイッチの操作性はばっちり。iDriveも使いやすい。
外観に比べると、インテリアはずっとおとなしい。ただし、練りに練られているからメータ類の視認性や空調スイッチの操作性はばっちり。iDriveも使いやすい。 拡大
後席バックレストは、40:20:40の分割可倒式。開口部下端の位置が低いので、重量物の積み降ろしも容易。
写真をクリックすると、シートの倒れるさまが見られます
後席バックレストは、40:20:40の分割可倒式。開口部下端の位置が低いので、重量物の積み降ろしも容易。
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積んでよし、走ってよし

クルマを止めて後ろに回ると、背の高いSUV系ボディの恩恵に浴することができる。後席の頭上空間は広々としていて、おまけに見晴らしもいいから窮屈な感じがない。開口部の広い荷室は使いやすく、かさばる物もすぽんとのみ込む。

サーキットや峠をメインにする方はちょっと違うかもしれないけれど、「BMW X1 sDrive18i」はスポーティな乗用車でキモチよく走りたいという希望をかなえてくれる。そういう車種だと思えば、4WDだけでなくFRも設定されることも納得だ。そのうえ、セダンを上まわる使い勝手のよさもあるのだ。

パソコンの話に戻ると、ノート型躍進の理由は「デスクトップに迫る高性能化」と「デスクトップと比較した時の価格競争力」を実現した技術革新だそうだ。あたりまえといえばあたりまえの理由だけれど、「デスクトップ」のところを「セダン」に変えると、「X1」というモデルの意味がふに落ちる。テクノロジーの進歩によって、「背の高さ」と「走行性能の高さ」が両立するようになった。ノートパソコンもSUVも機動力の高さがウリ、というのはこじつけです。

やはりこの先、「X1」的なモデルがBMWの屋台骨を背負うような気がしてならない。きっと今までのビーエムとは違う、新しいお客さんがつくはず。そば屋のカレーが評判になって独立するというか。で、「追い越し車線を駆け抜ける歓び」の呪縛(じゅばく)にとらわれない新しい客層のためにも、微低速でのハンドルの重さだけはなんとかしたほうがいい。

(文=サトータケシ/写真=峰昌宏)

身長180cmの筆者が後席に乗り込むと、ごらんの様子。写真の「電動パノラマガラスサンルーフ」は、20万3000円のオプションだ。
身長180cmの筆者が後席に乗り込むと、ごらんの様子。写真の「電動パノラマガラスサンルーフ」は、20万3000円のオプションだ。 拡大
頭上空間、足元スペースともに余裕がある後席。スライドはしないが、荷物の容量に応じてバックレストの角度は変えることができる。
頭上空間、足元スペースともに余裕がある後席。スライドはしないが、荷物の容量に応じてバックレストの角度は変えることができる。 拡大
BMWは、このモデルでも50:50の前後重量配分にこだわった。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)、CBC(コーナリング・ブレーキ・コントロール)といったアクティブセーフティをつかさどる安全装備は、FRモデル、4WDモデルを問わず標準装備される。試乗車が履いていたタイヤは、ピレリのCinturato P7というランフラットタイヤ。サイズは前後225/50R17。
BMWは、このモデルでも50:50の前後重量配分にこだわった。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)、CBC(コーナリング・ブレーキ・コントロール)といったアクティブセーフティをつかさどる安全装備は、FRモデル、4WDモデルを問わず標準装備される。試乗車が履いていたタイヤは、ピレリのCinturato P7というランフラットタイヤ。サイズは前後225/50R17。 拡大
サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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