1日の読書時間が「ゼロ」の大学生は、5割超に上る。最高学府の名に値するのだろうか。
知識と教養を高めるべき学生時代に多くの本を読まず、いつ読むのか。国語力低下に拍車をかける、危機的状況だと認識すべきだろう。
学生の生活実態を調べた全国大学生協連の調査で、1日の読書時間は平均23・6分だった。「0分」と回答した学生は53%と初めて半数を超えた。これは、電子書籍も「読書」に含めての数字である。
アルバイトをしている学生に「0分」が多い。本を読む暇もないほど忙しいというのか。今の学生ばかり叱っても仕方がない。読書習慣は幼少期から培われるからだ。国民全体の懸念である。
過去の調査との比較でも、若者の読書離れは進んでいる。
文化庁の国語に関する世論調査(平成25年度)では、16歳以上で1カ月に本を一冊も「読まない」との回答が47・5%に上った。その約10年前の14年度調査と比べ、「読まない」割合は各年代で増えた。平均で10ポイント上昇した。
読書は知識を得るだけでなく、豊かな言葉や表現を学べる。感性が育まれ、想像力や空想力が養われる。国語世論調査でも、多くの人が指摘したことである。
最も読書すべき時期は「10代」との答えが多かった。多感なときに貴重な読書体験を得られないのは、人生の損失だろう。
近年、国語力が中学生レベルにとどまっている学生が増えているとの調査もある。「憂える」の意味を「喜ぶ」と思い込むなど、語彙不足は深刻だという。
東大などトップクラスの大学でも、時代を超えて読み継がれる古典をあまり読んだことがない学生が多くなっている。教科書以外で読むものは漫画、という学生も少なくない。
携帯電話やスマートフォンは手放さない。短文発信や絵文字の扱いには慣れていても、若者たちの読解力不足は確かだ。
目を引くキーワードだけ拾い読みし、都合よく理解する。細かなニュアンスが理解できず、コミュニケーションにも支障が出る。そうした傾向は、読書離れと無縁ではなかろう。
読書を通して培われる豊かな言葉や知識は、論理的思考力の源である。それなしにはAI(人工知能)も使いこなせまい。